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国際海洋情報(2023年3月13日号)

1.英国気候変動委員会:2035年までに電力を脱炭素化する方策

英国気候変動委員会が、標記報告書を3月9日に発表したところその概要は以下のとおり。①2050年炭素中立を実現し、信頼でき自然災害にも強い電力を供給し、輸入される化石燃料への依存を削減するためには、2035年までに英国の電力を脱炭素化する必要がある。②英国政府は以上の目的を達成するために、既存の再生可能エネルギーに係る目標だけでなく、原子力に係る目標についても同時に達成する必要がある。③電力の脱炭素化とエネルギーシェアを拡大することによって、輸入される石油・ガスへの依存を減らし、国際的な化石燃料価格の乱高下の悪影響を減らすことが可能。④エネルギーの電化によって、経済成長と雇用が促進される。例えば、英国内の洋上風力発電事業の就業人口は、現在でも31000人を超えているが、2030年までに洋上風力産業に、1550億ポンド(約25兆円)が投資され、就業人口も97000人に拡大する見込み。太陽光と陸上風力でも同様に投資と雇用の拡大が見込まれる。

原文

気候変動委員会 (3/13)


2.米大統領予算案:石油・ガス産業への補助金の大幅削減を提案

3月9日、バイデン大統領は予算案を発表し、石油ガス業界に対する補助金や優遇税制制度の大幅な削減を提案した。現在の議会情勢では、この予算案が承認される可能性は低いが、ロシアのウクライナ侵攻以来、国民が高いエネルギーコストを負担する中で、化石燃料産業が記録的なぼろもうけをしたと非難する大統領の政治的な立場を再度明確にした。米国政府による、化石燃料産業への助成は多岐にわたることから、補助金の総額を計算するのは困難だが、年間100億ドルから500億ドル(約6.8兆円)と推計され、大統領の2024年予算案では、補助金の削減によって、10年間に310億ドル(約4.2兆円)の予算を節約できるとしている。
消費者のエネルギーコスト負担を軽減するための、化石燃料の消費に対する助成額は、国際エネルギー機関によれば、2022年には世界全体で倍増し、1兆ドルに達した。

原文

Reuters (3/13)


3.欧州理事会と欧州議会が2030年における最終エネルギー消費量を11.7%削減で合意

3月10日、欧州理事会と欧州議会は、エネルギー効率指令に暫定合意したところ、その概要は以下のとおり。①EU加盟国は全体として、2020年に策定された2030年におけるエネルギー消費量の見通しより、最終消費エネルギーを11.7%以上削減する。その結果、最大消費可能最終エネルギーは石油換算で7.63億トンとなる。②各加盟国は、それぞれの国家エネルギー・気候計画において、法的拘束力のない国家削減目標と削減計画を定める。国家削減目標の算出式も法的拘束力はなく上下2.5%の幅を持たせることが可能。③2024年から2030年までの年間平均削減率が1.49%となるよう、加盟国は期間中に削減率を徐々に引き上げ、2030年末には1.9%まで引き上げる。④公共交通と軍隊を除く、公共部門については、年間エネルギー削減率を1.9%とし、さらに公共部門が所有する建物について、年間最低3%以上改修してエネルギー効率の改善を図る。

原文

欧州理事会 (3/13)


4.英国:2つの老朽原子力発電所の運転期間を2年延長

仏国営電力会社のEDFの英国の子会社であるEDF Energyは、英国内のすべての原子力発電所の運転を担当し、英国の発電量の約13%を供給しているが、運転開始から40年たった2基の原子炉の運転期間を2026年3月まで延長すると3月9日発表した。当該2基の原子炉の発電量は合計で2.3GWで英国全体の発電量の5%を供給しているが、2024年に閉鎖される予定だったが、同社は2022年から技術的に・商業的に運転期間の延長が可能か検討していた。英国は先週(3月6日の週)も、寒波による電力需要増に備えて、2基の石炭火力発電所を臨時再稼働させている。同社は、2基の原子炉の運転を延長することにより、60億㎥の天然ガスを節約し、1000万トンのCO₂の排出を削減することとなるとしている。原子炉の運転延長には、政府の原子力規制庁(ONR)の正式な承認は必要ないが、同社は運転延長に伴う安全性報告書を改訂・提出し、ONRによって検討されることとなる。

原文

Reuters (3/13)