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国際海洋情報(2023年3月11日号)

1.中国:エネルギー供給における石炭の基礎的・補完的な役割の継続を確認

中国国家統計局によれば、同国は2022年の総発電量の56.2%を石炭に依存したが、CO₂排出量削減のため、天然ガスの使用と再生可能エネルギーの導入も積極的に進めている。昨年は、同国の南西地域が厳しい干ばつに襲われ、水力発電の発電量が大きな影響を受けたため、信頼性が高く、簡単に追加発電できる石炭火力発電が基礎的な電力源として依然として重要な役割を期待されている。国家発展改革委員会(NDRC)は、3月5日、全人代で「基礎的・補助的なエネルギーとして石炭の役割を今後とも強化し、安全性を担保しながら、先端的な石炭の生産を増加させる。」と表明した。中国政府は、2022年に、対前年比4倍で、2015年以来最大の106GW分の石炭火力発電所の建設計画を承認し、約50GW分は既に建設が開始されている。中国は、天然ガス需要の約40%を輸入に依存しているが、NDRCは、国内における石油・ガス田の開発を強力に進めるとともに、天然ガスの価格制度の改革も実施すると表明した。

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Reuters (3/11)


2.衛星から世界に約1000か所の大量メタン排出個所を観測

メタンの大気中への排出量は、2007年以降急増を続け、地球の気温上昇に25%寄与しており、地球の温度上昇を産業革命以前と比較して1.5℃以内に抑制するというパリ協定の目標達成を脅かす最大の原因となっている。人工衛星からの観察によって、2022年中に、米・露・トルクメニスタンの石油ガス生産施設などを中心に、世界の約1000か所で、大量のメタンが大気中に放出されたことが確認された。最大の排出場所はカスピ海沿岸のトルクメニスタンのパイプラインから8月に排出されたもので、フランス全土で1時間に排出される排気量と同量で、自動車6700万台分の排気ガスに匹敵する天然ガスの放出が観測された。また、世界の55か所の天然ガス生産現場から、30年間に米国全土から排出されるGHGと同程度の温暖化効果のあるメタンが、将来的に放出される可能性があることも判明した。一方で、国連によれば、2030年までにメタンの排出量を全体で45%削減できれば、即効性があるので、0.3℃分の地球の気温上昇を抑制することが可能とされている。

原文

The Guardian (3/11)


3.海底油田跡地を利用した国際的なCO₂の海底貯蔵がデンマークで開始

炭素回収貯留(CCS)技術が経済的に可能な選択肢か否か、長い間エネルギー産業は検討を重ねてきたが、CO₂排出削減を進めなくてはいけない緊急性に加えて、2月にEU排出権取引市場におけるCO₂排出権の価格が史上初めて1トン当たり100ユーロ(約14400円)を超えたことが、CCS実現の追い風になっている。ベルギーとデンマークは、国際間のCO₂の輸送とデンマーク領の北海の海底油田跡への永久的なCO₂の貯蔵について、昨年世界で初めて二国間協定を締結したが、3月8日、初めてベルギーから輸送されたCO₂が、デンマーク領海の海底油田跡地に注入したと発表された。Greensand事業と呼ばれるこの事業は、実証段階においては注入量が少ないが、2030年には最大で800万トンのCO₂を注入する予定。デンマークと同様に領海内に海底油田跡を保有するノルウェーもいくつかのCO₂貯蔵計画を有しており、複数の諸国と国際的なCO₂受け入れ協定を締結する予定。独企業のWintershall Dea社は、2040年までに年間2000-3000万トンのCO₂を回収し、ノルウェーに輸出・貯蔵することを計画しており、独政府にCO₂を輸出するための法制の整備を求めている。

原文

Reuters (3/11)


4.EU:COP28で全世界における化石燃料の段階的廃止を主張へ

COP28に向けたEUの外交的な対処方針案では、独・デンマーク・オランダの強い働きかけにより、石炭ばかりでなく、天然ガスと石油を含めた化石燃料全体の段階的な使用停止を全世界で進めることをEUとして推進することが盛り込まれている。昨年のCOP27においては、インドが同様の提案をし、一部の諸国が支持したが、サウジアラビアをはじめとする産油国の反対で合意形成されなかった。但し、この対処方針において、原子力発電によって製造された「低炭素水素」をEUとして促進すべしとする仏を中心とする諸国と、あくまで再生可能エネルギーから製造されるグリーン水素だけ認めるべきとする独・スペインなどの諸国の間で意見が対立してきたため、合意形成が遅れてきたが、最新の対処方針案では、どういうタイプの水素を推奨すべきか明確化されていない。

原文

Reuters (3/11)