国際海洋情報の内容については、有料メールニュースなど営利目的での転載はご遠慮頂くとともに、二次使用の際は国際海洋情報からの転載である旨を明示していただきますよう、お願いいたします。

国際海洋情報(2023年3月7日号)

1.EU:「包装材・包装廃棄物規則」によってプラスチックごみが増加する恐れ

2022年11月に制定されたEUの「包装材と包装廃棄物に関する規則」によって、店内で飲食するレストランでは、2030年1月1日以降、使い捨てプラスチックを用いた包装材の使用が禁止される。さらに、持ち帰りの食品を販売する飲食店については、食物の包装材の10%を2030年までに、40%を2040年までに再利用可能なものを使用することが義務付けられている。しかし、コンサルタントのKearney社による調査報告では、現在使用されている紙袋・紙の包装紙・ピザの箱を、再利用可能な包装材に転換することによって、店内で飲食する飲食店では最大で300%、持ち帰りの食品を販売する飲食店においては、1500%以上、プラスチックごみが増加する可能性があることが判明した。店内で飲食する飲食店で、再利用可能な食器を使用する場合、衛生上の問題や食品の安全性の問題に加えて、再利用可能な食器を洗浄するために10億から40億リットルの水が追加で必要になる。さらに、再利用可能なプラスチック容器を製造し、これを洗浄するためのエネルギーを発電するため、店内で飲食する飲食店においては、最大50%、持ち帰り食品を販売する飲食店においては、最大260%多くのGHGを排出することになる。

原文

Euractiv (3/7)


2.Ofgem:電気自動車などを利用した双方向のFlexible Energy Systemを提案

太陽光や風力といった自然現象に伴う再生可能エネルギーの不安定性を補うためには、約20から30GWの柔軟に供給できるバックアップ電力を2035年までに確保する必要がある。このため、英国ガス電力市場局(Ofgem)は地域的な送電網計画を所管する新たな組織を設立し、企業により多くの情報を開示させ、新たな装置を利用して、家庭で余った電力を送電網に戻すシステムを開発する。特に電気自動車については、気候変動委員会によれば、2035年までに英国では2760万台が普及する予定で、これらのすべての電気自動車が、電力の供給がタイトな時に、送電網に電力を送り返すことができれば、原子力発電所3基分の電力を供給することができるので、その分の新たな設備投資を節約することが可能となる。将来的には家庭の電気自動車やヒートポンプなどを電力網に接続し、電力需要が旺盛で電力の供給余力がタイトになった場合に、自動的に、家庭への電気供給を停止、さらに電力網へ電力を戻す柔軟なシステムが開発されることが予想される。

原文

Evening Standard (3/7)


3.欧州委員会:脱炭素関連装置の40%以上を欧州で生産することを目標に

3月14日に欧州委員会が発表する予定の法案では、標記全体目標だけではなく、個別品目ごとの目標として、2030年までにEU域内で、太陽光パネルは40%以上、電解槽は50%以上、ヒートポンプは60%以上、バッテリーと洋上風力発電設備については85%以上、EU域内で生産することを目標としている。しかし、例えば風力発電を例にとると、市場規模が小さく、事業許可手続きが緩慢かつ煩瑣であることに伴うコスト上昇圧力、競争入札の計画が周到でなく、調整がされていないEUの貿易政策によって、厳しい状況に実際は置かれており、また洋上風力発電の基礎部分の欧州における年間生産能力は500基分しかないのに、1500基分の需要がある。今回の法案は、米国がグリーン産業への補助を強化していることと、脱炭素関連装置に関する過度な中国への依存に対する懸念が背景としてある。

原文

Euractiv (3/7)


4.BBNJ:公海における海洋生物多様性保全条約が合意

約20年間にわたる交渉を経て、3月4日、公海における海洋生物多様性の保全に関する(BBNJ)条約が国連で合意に達した。2022年12月に開催された国連の生物多様性条約締約国会議で、2030年までに、陸上と海洋の30%ずつを保護区に指定することが合意されたが、これまで海洋全体のほぼ2/3を占める公海上に海洋保護区を設置する仕組みがなかったので、BBNJ条約の合意によって、公海上にも海洋保護区を設置することが可能となり、30%目標の達成も見通せることとなった。本条約に基づき締約国会議(Cop)が定期的に開催され、定期的に海洋統治や生物多様性の問題について協議されることとなる。海洋生態系は、人類が呼吸する酸素の半分を生産し、地球上の生物圏の95%をしめ、世界で最大のCO₂吸収源にもなっている。これまでは、公海を規律する規則がばらばらで、かつ緩い規制しかなかったので、沿岸域に比べて、公海は無秩序な開発の影響を受けやすかった。EU・英・米・中などの諸国がThe High Ambition Coalitionを結成して、最終版での妥協を促し、途上国の連合体であるThe Global Southの主張によって、条約は公正で公平な結果をもたらすこととなった。

原文

The Guardian (3/7)