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国際海洋情報(2023年3月3日号)

1.EU:仏を中心として11か国が原子力発電アライアンスを結成

2月28日、スウェーデンで開催されたEUエネルギー担当大臣会合に合わせて、仏のエネルギー転換担当大臣が11か国を取りまとめて、原子力のサプライチェーン全体における欧州諸国の連携を強化し、2050年炭素中立を達成するためのアライアンスを立ち上げた。署名された宣言では、「原子力エネルギーは、炭素中立を実現し、ベースとなる電力を供給し、エネルギー安全保障を担保するための一手段として」位置付けられている。宣言に署名したのは、ブルガリア・クリアチア・チェコ・フィンランド・フランス・ハンガリー・オランダ・ポーランド・ルーマニア・スロバキア・スロベニア11か国。このアライアンスの目的は、研究・技術開発の促進と、国際的なベストプラクティスに基づく、共通の安全基準策定の支援とされている。同会合に参加した欧州委員会の担当コミッショナーは署名国に対し、原子力燃料のロシアへの依存から脱却し、連携して小型モジュール炉の開発に参加して欲しいと要請した。

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Euractiv (3/3)


2.建物の暖房としてのグリーン水素利用コストはヒートポンプ利用コストの最大3倍

欧州の住宅の暖房のエネルギーの大半は、化石燃料が使用されているが、こうした住宅暖房から排出されるCO₂の量は、EUと英国が排出する総GHGの13%を占めており、暖房の脱炭素化は、炭素中立目標を達成するための重要な課題で、英国をはじめEUの数か国すでに、化石燃料を使用するボイラーの新設を禁止する段取りを発表しているし、欧州委員会も化石燃料しか使用しない暖房システムの導入を2029年までに禁止することを提案している。建物暖房の脱炭素化のために、ヒートポンプの導入は主たる手段として広く受け入れられているが、EUと英国においては、天然ガス産業のロビイストや保守党の政治家は、水素の利用にこだわっている。Energy Conversion and Management誌に発表された新たな研究は、欧州の暖房システムについて、脱炭素化の方法について広く検討したが、環境に大きな損害を与えずに低コストで、低炭素化を実現する手段としては、ヒートポンプを利用した電化しかないことが判明した。エネルギー危機前までは、CCSを利用した化石燃料から生産されるブルー水素の利用が、一部の建物については、コスト効率の良い手段であったが、エネルギー危機後の天然ガス価格の高騰によって、価格競争力を失った。

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Carbon Brief (3/3)


3.IEA:所得別トップ1%の富裕層がボトム1%の貧困層の1000倍以上のCO₂を排出

2021年の実績で、平均して1人当たり4.7トンのCO₂を排出しているが、所得別にみると、上位1%のグループは一人当たり、50トン以上のCO₂を排出しており、下位1%のグループと比較すると、1000倍以上のCO₂を排出している。上位10%のグループで見ると、1人当たり平均22トンを排出し、グループ全体の7.8億人で世界のエネルギーに関連するCO₂の排出量の約半分、下位10%グループの200倍以上のCO₂を排出している。航空機の利用で見ると、世界人口の約9割の人が年間0回または1回しか航空機を利用しないが、6%の人が年間2回、1%の人が年間5回以上航空機を利用している。米国では所得上位10%の人口の平均CO₂排出量は55トン以上で、その約1/4が自動車運転によって排出されている。欧州の上位所得10%の人口の平均CO₂排出量は24トンとなっている。米国・カナダ・日本・韓国などでは、下位10%のグループが排出するCO₂の量でも、世界の一人当たり排出量の中央値より高くなっている。

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IEA (3/3)


4.中国:2022年の新規石炭火力発電所建設認可数が対前年比4倍に

The Centre for Research on Energy and Clean Airによれば、2022年中に中国において新たに建設が認可された新規石炭火力発電所の合計発電量は106GWで、対前年比4倍で、2015年以来最高の水準となった。建設が開始された石炭火力発電所の総発電量も50GWとなり、対前年比50%以上の伸びとなった。また2022年においては、事業が計画され、認可を受け、必要な資金を確保し、工事を開始するまでの期間が数か月と大幅に短縮された。2017年から2020年にかけては、石炭火力発電所の新規認可変数は減少していたが、2021年9月に石炭の供給不足により、波状的に停電が発生し、多くの住宅や工場が影響を受けた。また、2022年に長期間にわたって発生した干ばつによって、水力発電量の大幅な減少が生じ、電力の割当制が導入された。こうした電力不足の懸念から、今後数年間は認可数が増える見込み。

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Reuters (3/3)