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国際海洋情報(2023年2月24日号)

1.米政府:メキシコ湾でも初めて洋上風力発電の入札を実施

米国の洋上風力発電に関する入札は、遠浅の海岸が多い米国東岸を中心に行われてきたが、昨年12月を皮切りに浮体式洋上風力発電を前提とした入札が、米国西岸でも開始され、2月23日、ホワイトハウスは、メキシコ湾でも浮体式を前提に初めて入札を実施すると発表したが主たる概要は以下のとおり。①内務省は、Texas/Louisiana両州の沖合のメキシコ湾の3か所で、130万戸の家庭に供給が可能な発電が可能な、浮体式洋上風力発電の入札を実施する。同省の海洋エネルギー管理局と米国海洋大気庁が協力して、メキシコ湾全体を調査し、他の海洋利用との調整が少なくて済み、海洋生態系への影響が最も低い海域を選定した。②昨年、バイデン大統領は、大西洋岸の洋上風力発電が地域の雇用とコミュニティに最大の利益をもたらすことを目的として、米国東岸の11州の州知事と「連邦・州洋上風力発電実施パートナーシップ」を結成したが、洋上風力発電の海域を太平洋岸とメキシコ湾にも拡大したため、California/Louisiana両州もこのパートナーシップに参加することとなった。③本日から、エネルギー省・内務省・商務省・運輸省共催で、2日間の浮体式洋上風力Shotサミットを開催し、多くの関係者が参加して、2035年までに浮体式の発電コストを75%削減するというバイデン政権の目標の実現を目指す。

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The White House(2/24)


2.欧州委員会:持続可能な水産業に関するパッケージを提案

2月21日、欧州委員会は、「EUの漁業と養殖業のエネルギー転換に関するコミュニケーション」や「持続可能で災害に強い漁業のために海洋生態系を保護し回復するための行動計画」など4文書を発表したところその概要は以下のとおり。①漁業と養殖業が化石燃料に依存している現状は、環境面で持続可能でないだけでなく、エネルギー価格の高騰に対しても脆弱であり、両産業は運営コストも負担できず、2021年と2022年はEUからの補助に依存せざるを得ない状況だった。②そこで、化石燃料への依存度を削減し、EU Green Dealの中にも掲げられている炭素中立な漁業と養殖業という目標を達成するために、エネルギー効率の向上と、化石燃料から再生可能な低炭素のエネルギーに転換することを提案する。③EUの共通漁業政策に従い、EUの環境上の目的の達成に寄与し、海底を攪乱し、稀少な海洋生物を混獲するなど漁業活動が環境生態系に与える 悪影響を削減するため、海事行動計画を提案し、2030年に向けたEU生物多様性戦略に貢献し、EUの領海・EEZの30%を海洋保護区(MPAs)に指定する。④このため欧州委員会は、各国政府に対し、MPAsの保護・管理のために、魚類の産卵・生息地の保護など、必要となる水産資源の保全措置を明確な期限を定めて実施することを要請する。

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欧州委員会(2/24)


3.英国:EUとの競争条件均衡化の観点から電力多消費型産業の電力料金引き下げへ

2月23日、英国政府ビジネス貿易大臣は、電力多消費型の鉄鋼・金属・化学・製紙などの300社に対して、欧州のライバル企業との競争条件の均衡化を図る観点から、電力料金を引き下げるというBritish Industry Supercharger (BIS)政策を発表したところその概要は以下のとおり。①今回の支援の対象となる電力多消費型の産業は、英国内で約40万人の熟練労働者を雇用し、これらの産業に依存するサプライチェーンの産業・労働者も間接的に支え、2019年の実績で英国の全輸出額の28%を担っている。②2024年春からの実施を目指して、BIS政策の詳細はこの春からパブコメにかかる予定だが、固定価格の買取制度・差額決済契約・再生可能エネルギー導入義務・電力容量市場などの再生可能エネルギー促進に伴う賦課金を免除し、network chargeの減額が検討される。③BISは電力多消費型の既存産業に対する支援ばかりでなく、電気自動車やバッテリーの生産といった電力を大量に必要とする新たなグリーン産業において、英国が先導的な立場を確保するのにも有効である。

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英国政府 (2/24)


4.G20:世界銀行改革のための専門家グループ結成へ

今週(2月20日の週)インドのバンガロールで開催中のG20財務大臣会合に、議長国のインドから、中・低所得国家における気候変動対策に必要な世銀の融資能力を拡大するために、世銀改革を検討する専門家グループを結成することが提案される見込み。世界銀行の民主化はインドや他の途上国にとって、長年にわたる課題であったが、2月21日、インドの首席経済顧問は、「国際金融機関改革の問題は、財務大臣会合の主要議題になる。」と発言している。インドの財務大臣は2月22日、「インドがG20の議長国である間は、途上国の気候変動対策に対する金融支援が重点課題となり、国際開発金融機関は、民間投資機関にとってはリスクが高い分野を引き受けることによって、民間投資を容易にし、無償融資の提供などで多くの役割を果たすことができる。」と語った。米国の財務長官も、気候変動や国際紛争など国際社会が直面している課題に対する融資を大幅に拡大する方向で、国際開発金融機関改革を実施することを支援する見込み。

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Reuters (2/24)