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国際海洋情報(2023年2月23日号)

1.IEA:石油ガス業界に対してメタン排出防止に必要な投資を要請

国際エネルギー機関(IEA)は、2月21日、Global Methane Tracker 2023を発表したところその概要は以下のとおり。①2022年中に、世界のエネルギー産業によって大気中に排出されたメタンは1.35億トンとなり、2019年に記録した最高値をわずかに下回った。人類の活動によって排出された全メタン量に占めるエネルギー産業のシェアは約40%と、農業分野に次いで第2位となった。②メタンは産業革命以降の地球の気温上昇の30%の原因となっている。③石油ガス産業から排出されるメタン総量の75%は既存の技術で安価に削減することが可能で、このために必要な1000億ドルの投資額は、世界の石油産業の2022年の収入額のわずか3%に過ぎない。④石油ガス産業の事業活動によって、約2600億㎥のメタンが毎年空気中に放出されており、このうち3/4のメタンは放出せずに回収し利用できれば、ウクライナ侵攻以前にEUがロシアから輸入していた年間の天然ガス輸入量より多いエネルギーを得ることができる。

原文

IEA (2/23)


2.米国:テキサス沖の4つの石油積み出し港が完成すれば地球温暖化に深刻な影響

米国連邦政府は、ヒューストンの56km南方沖合にSea Port石油積み出し港を建設することを粛々と認可し、テキサス沖の他の3か所の同様な事業を認可するか否か決定する予定である。仮にすべての4事業が完成すると、現在米国が輸出している総石油輸出量の半分に相当する日量約700万バレルの石油輸出能力が追加されることとなる。Global Energy Monitorの試算によれば、4つの施設が30年間稼働する間に輸出される石油が全て燃焼した場合、240億トンのGHGが排出されることとなり、バイデン大統領の地球環境問題への積極的な姿勢が致命的に損なわれることとなる。国際エネルギー機関は、2021年に発表した「2050年までの炭素中立」という報告書の中で、世界が危険な地球温暖化を回避するためには、新規の化石燃料に係る大規模インフラの建設を停止すべきであると勧告している。これらの4つの沖合積み出し港から輸出される石油は、テキサス州とNew Mexico州にまたがるパーミヤン盆地で生産され、パイプラインのネットワークを経て、沖合に停泊する大型タンカーに供給される予定で、これらの石油が燃焼して発生するCO₂は、米国の排出分には含まれないが、世界規模で壊滅的な気候危機を悪化させる。

原文

The Guardian (2/23)


3.EU:8月から1月の天然ガス使用量を約20%削減することに成功

EUの統計業務を担当するEurostatは、EU27か国において、昨年8月から本年1月までの期間中、過去5年間の同時期の平均と比べて、天然ガスの消費量を19.3%削減することに成功したと、2月21日発表した。この結果、現時点でもEUにおけるエネルギー貯蔵量はほぼ100%で、昨年12月以来、天然ガス価格は低下に転じたが、依然として過去の平均価格と比べると高い水準にある。欧州委員会は、8月から3月までのEUにおけるエネルギー需要量を15%削減するという自主的な目標を立てていたが、この目標を超えて削減が達成できる見込み。エネルギー需要が減った原因としては、この冬がEUでは暖冬だったことと、天然ガスの高騰によって、産業の製造活動が減少したことが要因と考えられる。欧州で最大の天然ガス消費国である独においては、2019年から2021年の平均と比べて、本年1月の天然ガス使用量は、工業部門で27%、家庭部門で25%、発電部門で12%それぞれ減少した。

原文

Reuters (2/23)


4.2022年の米国の洋上風力発電の需要が2倍、投資が3倍に拡大

米国のNPOであるBusiness Network for Offshore Windが発表した「2023年版:米国洋上風力発電市場報告」の概要は以下のとおり。①2022年における洋上風力関連の契約数は対前年比36%増加し、過半数は米国の企業が契約を獲得した。②各州政府が設定した長期的な洋上風力発電の目標発電量の合計は、対前年比79%増加した。中でもカリフォルニア州は25GWの目標を発表したほか、Louisiana/New Jersey/Rhode Island各州も新たな目標を発表した。③12月に太平洋側で初めて実施された入札では、2日間の落札額の合計が7.8億ドル(約1022億円)に達した。この落札額は、2022年に米国で実施された洋上風力発電の競争入札の中で3番目となったが、5つの落札企業によって、150万戸の家庭に電力を供給できる4.6GWの洋上風力発電施設が建設される見込み。④2022年中に洋上風力発電に投資された額は、対前年比3倍以上の98億ドル(約1.3兆円)となり、過半数は入札に使用されたが、44億ドル(約5900億円)は、洋上風力発電施設の建設等の支援に必要な港湾インフラの整備・サプライチェーンの開発・送電施設の整備に投資された。

原文

The Hill (2/23)