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国際海洋情報(2023年2月20日号)

1.データから見る「ロシア闇の艦隊」の規模

BloombergがKpler社のデータを分析したところによると、貨物を積載しない或いは行き先を明示しない中型の船舶の数は、昨年までは、世界で平均して14隻程度だったが、2023年に入ってから311隻と史上最大規模に膨れ上がっている。EU諸国は2月に入ってから、ロシア産石油製品の価格上限制度を導入したが、311隻の大半が、EUによる制裁回避のために、「闇の船隊」を形成している可能性がある。EUの制裁以前には、ロシアから欧州に1日40万バレル以上のディーゼル油が輸出されており、当該石油製品を取り扱っていた商社や海運会社は制裁を回避して、ロシア産石油の大部分を引き続き世界市場に流すことを画策している。空荷のタンカー数の増加は、船主側が、制裁後の新しい状況をにらんで、最も需要が多く、高い運賃が稼げる地域を見極めようとしているとも解釈できる。多くの燃料タンカーが「闇の船隊」入りして、通常の輸送に使えなくなったため、ガソリンを欧州からNYに運送するといった通常の輸送ルートにおけるタンカーの用船料が急騰している。

原文

gCaptain (2/20)


2.ECSA:燃料供給事業者に代替燃料供給義務を負わせることを要求

欧州船主協会(ECSA)は、現在、欧州議会・欧州理事会・欧州理事会の3者で最終協議中のFuelEU Maritime Regulationについて、2月15日、意見を表明したところその概要は以下のとおり。①欧州議会の修正案129で示されているように、船舶燃料の供給事業者に対して、代替燃料供給の目標を課し、供給の強制力を持って義務付けることにより、代替燃料が供給されない場合に、船主が不当に責任を負わされないこと。②上記要件が満たされれば、ECSAとして、欧州議会の修正案82に従い、バイオ燃料以外の代替燃料について個別の目標を設定することに同意する。③持続可能で十分な供給が可能な代替燃料に対して、規則上、相対的に高い乗数を認めること。

原文

ECSA (2/20)


3.EU:全ての化石燃料の段階的使用停止をCOP28で推進することを合意へ

気候変動に関する国際パネルの科学者たちは、気候変動の破壊的な影響を回避するためには、2030年までに化石燃料の使用を大幅に削減する必要があると勧告しているが、昨年のCOP27で、インドが提案した化石燃料全体の段階的使用停止は、80か国以上の賛同を得たものの、サウジアラビアをはじめとする産油国の反対で合意に至らなかった。11月30日から開催されるCOP28におけるEUとしての対処方針として、世界の約200か国が既に合意している石炭の段階的な使用停止に加えて、石油・ガスを含むCO₂回収貯留装置を伴わないすべての化石燃料の段階的な使用停止をEUとして求めていくことが、2月20日の外相会議で合意される予定だが、いくつかの加盟国が、合意予定文書に含まれる再生可能エネルギーの促進やロシア産天然ガスに使用停止などの他の論点について不満を持っているので、合意が持ち越される可能性もある。

原文

Reuters (2/20)


4.仏・フィンランド・ポーランドなどでヒートポンプの導入が順調に拡大

ヒートポンプは既存のガスボイラーと比べると4倍熱効率が高く、ロシア産天然ガスからの脱却を早急に目指す昨年作成されたEUのREPowerEU計画においては、ヒートポンプの普及のペースを2倍に早めて、2026年までに域内で2000万台、2030年までに6000万台のヒートポンプの導入を図ることを目的としている。この戦略を受けて、2022年にはヒートポンプの販売台数が対前年比38%と記録的な増加し、EU全体のヒートポンプの総計が2000万台に達し、居住用・商業用建物の暖房の16%を供給できるようになり、EU全域で、ギリシャの年間CO₂排出量に相当する5400万トンのCO₂の排出量を削減した。国別にみると、仏が数量ベースでEU最大の実績を挙げ、約200万台のヒートポンプが設置されているが、単位人口当たりの増加率でみると、フィンランドが最大の伸びを記録し、2022年には、100家庭中7家庭がヒートポンプを導入した。ポーランドはクリーンエネルギーの国というイメージはないものの、2022年には対前年比102%増加で、20万台のヒートポンプが販売され、人口当たりで見ると北欧諸国に次ぐ高い水準にある。

原文

Euractiv (2/20)