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国際海洋情報(2023年2月19日号)

1.エネルギー価格の高騰により全世界で7800万から1億4100万人が追加で極貧に

オランダの研究者がNature Energyに標記報告を2月16日に発表したところその概要は以下のとおり。①ウクライナ紛争によって生じたエネルギー危機は、家庭の暖房費・ガソリン代だけでなく、間接的に世界のサプライチェーン全体のモノやサービスの価格を高騰させた。②研究者は、116か国の201の消費グループに対するエネルギー価格上昇の直接・間接的な影響を詳細な家庭の消費データーをもとに算出した。③その結果、家庭のエネルギーコストは62.6%から112%上昇して、家計全体の支出を2.7%から4.8%押し上げた。④このような生活経費の上昇によって、全世界で7800万人から1億4100万人の人々が極貧の状態に押しやられる見込みで、エネルギー危機が続いている期間中は、対象を絞ったエネルギー価格の補填や、食料品などの生活必需品に対する支援も必要となる。

原文

Nature Energy (2/19)


2.ISSB:気候変動関連情報開示に関する規則を採択

2月16日、G20が支援する国際持続可能性基準審議会(ISSB)は、気候変動によって民間企業の事業がどのような影響を受けているかを開示する基準について合意した。採択された基準は、来年1月から発効し、各企業の2024年以降の年次報告書においては新基準に従って、情報開示が行われる。現在、EUと米国の当局も、環境・社会・統治(ESG)に関する情報公開に関する規則作りを進めており、国際的な企業は、複数の開示基準に対処しなくてはいけないことを危惧しており、約5万社の企業はEUの情報公開基準であるESRSを適用する一方で、ISSBの基準に従った情報公開も同時にしなくてはならない。G20の金融安定化審議会(FSB)は、ISSBとEUに対して、双方の基準が互換性を持つことによって、企業が情報開示にために重複したコストを支払わずに済むよう要請しているため、ISSBの決定機関は、ISSBの規則の付属書としてEUの規則を援用し、企業がEUの規則に合致していることをもって、ISSBの規則に合致することを認めた。

原文

Reuters (2/19)


3.英国:集合住宅の屋上設置共用太陽光パネルで家庭の電力コストが半減

集合住宅の屋上に設置された同一の共用の太陽光パネルで発電された電力を、同一建物内の家庭で平等に利用するシステムを豪の企業が開発し、英国ウェールズの集合住宅に設置されたが、当該建物内の全家庭が消費する電力の約75%を供給可能で、各家庭の電気代を約半分にできることが実証された。本事業は、英国全土で実施中の既存の建物のエネルギー効率を改善する計画の一環として、ウェールズ地方政府の支援の下に実施された。開発した企業によれば、全欧州で、約3億人の住民が同様のシステムを屋上に設置可能な中・低層の集合住宅に住んでいる。英国では、住民の太陽光パネルの利用が進んでおり、既に約120万戸の家庭で太陽光パネルが導入されている。今回実証試験に使用された集合住宅には、24戸が入居しているが、従来の方式では、24の別々の太陽光パネル・インバーター。バッテリーのシステムの設置が必要だったが、新システムでは、唯一のパネルから発電された電力を電力会社の送電網を経由せずに、直接各家庭が平等に使用し、既存の電力の供給システムやメーターに変更を加える必要がない。

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Euronews (2/19)


4.世界における電気自動車市場の急拡大に追い込まれる日本メーカー

BloombergNEFが発表したエネルギー転換に関する報告書によると、2022年における電気自動車の売り上げは、対前年比53%と急増し、3880億ドル(約5.2兆円)となり、この結果、これまでの自家用EV車の総売上額は1兆ドル(約134兆円)を超えたが、世界における年間の自動車売上高は約2.5兆ドルで、EVが出現した10年間の合計売上高が25兆ドルであると考えれば、そう大きな比率ではないかもしれない。しかし、成長率で見れば、過去のEVの売り上げの総計の約60%が過去18か月に集中し、2023年の売上額も軽く5000億ドルを超えることが予測されている。日本の自動車メーカーは、全社併せても、世界のEV売り上げの5%以下で、10大EVブランドにも入っておらず、2023年には、EVの販売比率が世界全体で18%に急増する中で、厳しい状況に置かれている。特に中国市場におけるEV車の販売比率は、2019年に5%だったのが、今年は30%を超える見込みで、この結果、中国市場における日本メーカーのシェアは2020年の25%から、昨年は21%に低下している。こうした危機感により、本田はEV戦略を刷新し、トヨタの新社長は、EV-first戦略を掲げたが、トヨタはEV専用のプラットフォームの投入は2027年にずれ込むことを認めている。

原文

Bloomberg (2/19)