国際海洋情報の内容については、有料メールニュースなど営利目的での転載はご遠慮頂くとともに、二次使用の際は国際海洋情報からの転載である旨を明示していただきますよう、お願いいたします。

国際海洋情報(2023年2月17日号)

1.海面上昇を止めるには1.5℃以内に気温上昇を抑制することが不可欠

2月14日、釜山大学の研究者たちがNature Communicationsに発表した地球温暖化と海面上昇の関係に関する論文の概要は以下のとおり。①海面上昇によって、台風などの異常気象時だけでなく、潮の潮汐による高潮時に発生する浸水でも、沿岸部は既に被害を受けている。②今後、CO₂削減がmoderateに進み、2100年ころに気温上昇が抑制されたとしても、気温上昇とグリーンランドや南極の氷床の融解の間には、時間差が生じるので、海面上昇は2150年まで継続し、海面が20cmから1.4m上昇する。③各国がCOPで表明しているNDCsを達成しても、今世紀末までに、気温が産業革命以前と比べて2.4℃上昇すると見込まれているが、仮に2℃以内に抑制しても不十分で、1.5℃以内に抑制することによってのみ、氷河の融解速度と海面上昇を緩やかなものとすることができる。④ひとたび、グリーンランドや南極の氷河が大規模に融解し始めると、止めるのは困難。

原文

Axios (2/17)


2.ICS:新たなIMO持続可能性基金案をIMOに提出

国際海運会議所(ICS)は、船舶が排出するCO₂の量に応じて強制的に課金してIMO持続可能性基金を創設し、メタノール・アンモニア・水素・持続可能なバイオ燃料・再生可能電力から製造される合成燃料・CCSを用いた化石燃料などの代替燃料を使用する先進的な船舶に対して、削減されるCO₂の量に応じて支援金を支給する新たな提案をIMOに提出した。新たな提案の中では、どのようにIMOが強制的に船舶から課金を徴収するか説明したうえで、加盟国間の合意が得られやすいよう、課金の水準については、燃料1トンあたり50ドル程度の比較的低い水準に課金率を設定したとしても、代替燃料と既存燃料の間の価格差を縮小するには十分であり、多くの途上国が懸念しているように、課金制度によって、貿易に過大な悪影響を与えることも防止できるとしている。さらに、基金の資金によって、途上国における代替燃料の生産を支援し、また、代替燃料供給インフラの整備も支援する。

原文

Offshore Energy (2/17)


3.米政府:国内のEV充電ネットワークの迅速な拡大に75億ドルを支援

米国政府は2030年までに新車販売の50%をEVにすることを目指しているが、充電施設が十分に整備されていないため、EV販売の足かせとなっているため、2月15日、米国政府は、8か月の議論の末、国内のEV用充電ネットワークの整備に関する最終規則を発表し、2024年までに、米国産の部品を55%以上使用して建設される充電施設に対して、総額で75億ドルの支援を行うと発表した。米国政府は、テスラ社の同社製のEV専用で米国最大のネットワークであるSuperchargersを他社製EVへの開放させることを含め、EV利用者が米国内全域で充電施設を利用できることを目指す。連邦政府から、充電施設の整備に対する補助を受ける条件として、整備事業者は、米国内で支配的なCombined Charging Systemの基準に従って施設の整備を行うとともに、支払方法や利用者のID確認方法について標準方法を採用し、ほぼ常時(97%)充電施設を使用できるようにしなくてはならない。

原文

Reuters (2/17)


4.EU・英国の首都で自動車の排気ガスによるNO₂汚染がWHO健康基準値の4倍

Centre for Research on Energy and Clean Air (CREA)が標記について発表したところその概要は以下のとおり。①2020年のEUにおけるNOxの排出源は、自動車の排気ガスが37%と最大で、農業が19%、製造業などが15%となっている。②英国においても自動車から排出されるNOxが全体の28%を占め、航空・鉄道・海運から排出されるNOxは合計でも13%に過ぎない。③2021年に世界保健機関(WHO)は、化石燃料を使用する自動車から排出されるNO₂に関する最新の研究成果をもとに、Global Air Quality Guidelinesを改訂し、EUと英国はこのガイドラインに従って、新たな政策を導入したため、自動車交通からの排気ガス量は減ったものの、すべてのEU諸国と英国の首都における2022年のNO₂排出量は依然としてWHOによる健康を維持するための基準と比べると4倍も高い水準にある。④この結果、WHOの基準値が仮に遵守された場合と比べて、NO₂関連の死亡者数が25万人、喘息の患者数が7万人増加したと考えられる。

原文

CREA (2/17)