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国際海洋情報(2023年2月14日号)

1.欧州委員会:加盟国にエネルギー憲章条約からの一括脱退を勧告

1998年のエネルギー憲章条約は、国家の政策の変更によって、エネルギー企業の投資利益が損なわれた場合は、当該企業が国家を相手に提訴することを認めることによって、エネルギー企業の利益を守ることを目的とした条約で、EU諸国や日本など約50か国が批准しているが、気候変動対策として化石燃料を使用するプラントの閉鎖を政府が企業に要請するにあたって、当該企業がこの条約を根拠に、気候変動対策に反対する訴訟を政府に対して提起するようになった。このためイタリアは既に2016年にこの条約から脱退し、仏・独・蘭・ポーランド・スペインもすでに脱退する意向を示していることを受けて、欧州委員会は全加盟国が一括して同条約から脱退することを加盟国に2月7日に提案した。EU諸国が同条約から一括して脱退するためには、15か国以上の加盟国の賛成と欧州議会の支持が必要となるが、欧州議会は既に脱退支持の決議を行っている。

原文

Reuters (2/14)


2.自動車・燃料業界がバス・トラックに対する内燃機関の禁止に反対

2月6日、バス・トラック車両の製造事業者や燃料事業者は、連名の公開文書で公開書簡を発表し、内燃機関車であっても、化石燃料をバイオ燃料や再生可能電力によって生産されるe燃料に置換すれば、EUのCO₂削減目標が可能であることを強調した。一方で、環境団体は、普通車だけでなく、トラックやバスを含む自動車全体について、内燃機関車の販売を段階的に禁止し、EV或いは水素燃料車に可及的速やかに切り替えることを求めている。トラックなどの重量運搬車は、EU全体の自動車交通量の2%しか占めていないが、CO₂排出量で見れば、自動車全体の約28%を占めている。欧州委員会は、自動車から排出されるCO₂の量が、EUの目標通りに削減できるのであれば、採用する技術は問わないとしているが、100%削減を目指すことは、事実上内燃機関を禁止することに等しい。普通車については、2035年からガソリン・ディーゼル車の新車販売を禁止することが決定されているが、バス・トラックについては2040年から禁止することが提案される見込み。

原文

Euractiv (2/14)


3.欧州委員会:再生可能水素の定義等を定める2つの委任規則案を提案

2月13日、欧州委員会は、再生可能エネルギー指令の下、エネルギーインフラ整備・国家助成・産業/交通分野における再生可能水素拡大達成目標上、「再生可能水素」と認められる水素の範囲等を詳細に定める2つの委任規則案を発表した。上記EUの政策目的上、バイオ素材を原料としない再生可能燃料(RFNBOs)と認められるためには、再生可能電力から製造されることが条件であることを明確にしている。REPowerEU Planでは、2030年までにEU域内で再生可能水素を1000万トン製造し、一方で同量の再生可能水素を域外から調達することを目的としている。1番目の委任規則は、どのような条件を満たせば、水素・水素を原料とする燃料・水素キャリアがRFNBOsと認められるかを規定している。規則では、再生可能水素の生産によって、既存の再生可能発電の利用が制約されないように、再生可能水素は追加的で新たな再生可能発電源によって生産されるべきことが規定されている。2番目の委任規則は、RFNBOsのライフサイクルにおいて排出されるCO₂の計算方法について規定している。

原文

欧州委員会 (2/14)


4.欧州委員会:原子力発電によって製造された水素を再生可能水素と認める案を提示

現在使用しているエネルギーを全て電化することが不可能な鉄鋼・セメントなどの重工業を炭素中立化するための重要な手段が水素の利用だが、現在、化石燃料から生産されている水素を、再生可能電力によって生産される水素のシフトしていく必要がある。この「再生可能電力」に原子力発電を含めるべきとする仏とこれに反対する独などとの国の間で長い論争が交わされてきたが、今回発表された欧州委員会の案では、①再生可能水素の生産のために新たに専用に発電される再生可能電力②再生可能エネルギー発電比率が90%以上である地域の電力網から供給される電力③電力の供給を受ける地域の電力が、原子力発電などの活用によって、低いCO₂排出基準を満し、かつ水素製造事業者が地域の再生可能エネルギー発電事業者と長期電力購入契約を結んでいる地域から供給される電力といった3種類の電力によって、水を電気分解して製造される水素を再生可能な水素と定義し,仏の立場が取り入れられた。今後2か月以内に、欧州議会と加盟国から反対意見が出ない限り、この規則は発行する見込み。

原文

Reuters (2/14)


国内ニュース

1.JERA;フィリピン共和国Aboitiz Powerの脱炭素化に向けた石炭火力発電所におけるアンモニア混焼に関する共同検討の開始について
原文

2月10日、JERA