国際海洋情報の内容については、有料メールニュースなど営利目的での転載はご遠慮頂くとともに、二次使用の際は国際海洋情報からの転載である旨を明示していただきますよう、お願いいたします。

国際海洋情報(2023年2月9日号)

1.米国の40%の動物と34%の植物が絶滅の危機に

米国とカナダの1000人を超える科学者たちから構成される生態系保全に関する研究ネットワークであるNatureServeが、50年間にわたる観察データをもとに、2月6日、標記調査報告を公表したところその概要は以下のとおり。①ザリガニ・サボテン・淡水のムール貝・南北カロライナ州の一部にしか生息しないハエジゴクまで多くの動植物が絶滅の危機にある。②本報告書によって、昨年の議会で廃案となったRecovering America’s Wildlife Actのような絶滅危惧種の保護に関する法律を緊急に成立させる必要について、議員が理解して欲しい。③現状の生物多様性を保持するためには、生物多様性が最も危機に瀕している地域に焦点を当てて対策を講じる必要があり、この報告書では当該地域を具体的に特定している。④生態系としてみると、温帯から北方に広がる草原が最も危険にさらされており、78の草原の種類の半分以上が広範に壊滅する恐れがある。⑤生息環境の悪化・土地利用目的の変更・侵略性外来種・ダムの建設・河川の汚染・気候変動などが主たる原因となっている。

原文

Reuters (2/9)


2.UNEP:薬物耐性(AMR)菌の拡大によって2050年までに年間1000万人が死亡

2月7日、国連環境計画(UNEP)が、バルバドスで開催中の第6次薬物耐性(AMR)に関するGlobal Leaders Groupに「Superbugsへの準備」と題する報告書を提出したところその概要は以下のとおり。①気温の上昇・異常気象・土地利用の変更によって、微生物多様性を変化させ、生物学的・化学的汚染を拡大することによって、AMRが発生・拡散している。②WHOによれば、2019年において、全世界で127万人がAMRの病気が直接の原因で死亡し、495万人がAMRに関連して死亡している。③2050年までにAMRによって、2020年のがんによる全世界の死者数に匹敵する、年間最大1000万人が全世界で死亡する恐れがある。④製薬・農業・健康産業などの特定の産業がAMRの生産・拡大に寄与している。⑤AMRが経済に与える影響は、2030年までに世界全体のGDPを年間3.4兆ドル(約445兆円)押し下げる効果があり、世界で2400万人以上の人々を極貧の状態に追いやっている。

原文

UNEP (2/9)


3.IEA:今後3年間の急速な電力需要量の増加を再エネと原子力で対応

2月8日、国際エネルギー機関(IEA)が「電力市場報告書2023」を発表したところその概要は以下のとおり。①再生可能発電は原子力発電とともに、2025年までの電力需要量の増加に対応する発電量の増加のほとんどを占めるため、この期間に発電部門から排出されるCO₂排出量が増える可能性は低い。②昨年は、世界的なエネルギー危機と、欧州の暖冬などのために、年間電力消費量は対前年比2%減少したが、中国・インド・東南アジアの新興国・途上国における電力需要の増加を原動力として、2025年までの今後3年間、世界の電力総需要量は年間平均3%で増加する見込み。③世界の総電力消費量に占める中国の電力消費量の割合は、2015年には1/4だったが、2025年までにこれまで最高水準の1/3となる見込み。④今後3年間の世界の電力需要の伸びは、現在日本における年間電力消費量の2倍の規模となるが、再生可能エネルギーと原子力発電の増加によって、この急激な電力需要増を賄える見込み。

原文

IEA (2/9)


4.英国政府:7700万ポンドのゼロエミ船舶インフラ整備補助金の入札を実施

2月6日、英国政府はZero Emission Vessels and Infrastructure (ZEVI)に関する補助金の入札を開始したところその概要は以下のとおり。①英国政府は2025年までに、7700万ポンド(約122億円)の補助金を、海運脱炭素化のための技術開発に投資して、炭素を排出しないフェリー・クルーズ船・貨物船の運航開始を目指すとともに、多くの雇用の創出を生み出す。②バッテリー動力の船舶、陸上電源、水素・アンモニアを燃料とする船舶、風力を補助推進力とするフェリーなどが、具体的な補助の対象となりうる。③英国政府は、同時に、産学官で740万ポンド(約12億円)を支出して、Clean Maritime Research Hub (CMRH)を創設し、海運脱炭素化技術開発の基礎研究を支援する。④ZEVIとCMRHは、2022年3月に2.06億ポンド(約328億円)をかけて創設された海運からのCO₂排出削減と持続可能な海運の実現を目指すUK SHORE事業の一部となる。

原文

英国政府 (2/9)