国際海洋情報の内容については、有料メールニュースなど営利目的での転載はご遠慮頂くとともに、二次使用の際は国際海洋情報からの転載である旨を明示していただきますよう、お願いいたします。

国際海洋情報(2023年2月7日号)

1.米国:インフレ削減法施行後、既に環境関連で10万人以上の雇用を創出

米国の環境団体であるClimate Powerが2月6日に発表した調査によれば、インフレ削減法(IRA)が施行されて以降、風力発電・太陽光発電・バッテリー・電気自動車などの環境関連産業で、電気技師・機械工・建設作業員・技術者など、公表された情報ベースで、10万人以上の新規雇用と、90以上の新たなエネルギー関連事業が創出されたことがわかった。

原文

The Hill (2/7)


2.英国:すべての海運活動をETSの対象にすれば18億ポンドの収入に

環境NGOの「交通と環境」は、2月6日、海運活動全体を英国の排出権取引(ETS)の対象とした場合、英国政府は18億ポンド(約2800億円)の収入を得ることができるとする報告書を発表したところその概要は以下のとおり。①2021年において、英国における海運活動からは、英国内の全自動車が排出するCO₂の量の約1/3に相当する2200万トンのCO₂が排出されており、これをすべてETSの対象とすると、英国政府は18億ポンドの追加収入を得ることができる。②しかし、5000GT以上の船舶による内航しかETSの対象としないとする英国政府の案に従えば、総排出量の10%以下しか対象とならず、1.7億ポンド(約270億円)の収入しか得られない。③英国全体のCO₂削減目標を達成するためには、海運からのCO₂排気量を半減する必要があるが、外航海運については、2033年からしかETSの対象とならない予定なので、それまでは、他の排出量削減対策を実施する必要がある。④政府から独立した「気候変動委員会(CCC)」も外航海運をETSの対象とすることを勧告している。

原文

Transport & Environment (2/7)


3.ASEAN:中国との南シナ海における行動規範の合意を急ぐ

2016年に国際仲裁裁判所で、南シナ海における中国の領有権主張が否定されたにもかかわらず、中国は九断線の北側の南シナ海ほぼ全域における主権を主張しており、ASEAN諸国のうち、フィリピン・ベトナム・マレーシア・ブルネイは中国と領有権を争っており、インドネシアは北ナツナ海における同国の海底石油ガス田の開発行動に対して、中国から妨害されている。南シナ海における行動規範(COC)をめぐるASEANと中国の交渉は、ASEAN加盟国の一部が中国との二国間関係を優先したため、ここ数年停滞しているが、2月4日、ASEANの今年の議長国であるインドメシアは、ASAN外相会議の取りまとめで、南シナ海における中国との緊張の高まりを受けて、COCの合意を急ぐ考えを明らかにした。インドネシアは3月の交渉を皮切りに、本年中に中国と複数の交渉を予定している。

原文

Reuters (2/7)


4.英国:航空の脱炭素化に官民で1.13億ポンドを投資

2月7日、英国政府のビジネスと交通担当の大臣は、電動の空飛ぶタクシーや、水素を航空燃料とする航空機など、航空の脱炭素技術開発に、航空技術研究(ATI)プログラムを通じて、 1.13億ポンド(約180億円)を官民で共同投資すると発表した。投資の対象となる事業としては、ブリストルの電気航空機メーカーのVertical Aerospaceによる軽量バッテリーの開発や、ロールスロイスによる液体水素を燃料とする脱炭素ジェットエンジンの開発などが予定されている。ATIプログラムによる研究支援によって、1月には、ZeroAvia社が開発した19人乗りの水素燃料電池を動力とする航空機の試験飛行が既に成功している。英国政府は、昨年7月に、ジェットゼロ戦略を立てているが、この戦略に従い、交通省はイングランドにおける空港運営の脱炭素化を2040年までに達成する方法について提案を募集している。

原文

英国政府 (2/7)