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国際海洋情報(2023年2月6日号)

1.IMO SDC9:海中騒音の防止ガイドラインを改正するも強制力無し

IMOは第9回船舶設計・建造委員会を開催し、2014年に作成された船舶から発生する水中騒音削減のためのガイドラインの改正案が作成された。WWFやClean Arctic Allianceなどの環境団体は、改正案がまとまったことを評価しつつも、拘束力のないガイドラインではなく、北極海などを対象とした法的強制力を持った規制の創設を求めている。海洋性哺乳類は、海中の音を頼りに、移動し、獲物を捕獲し、繁殖の相手も見つけるので、船舶から発せられる水中騒音は、こうした哺乳類の活動を妨げることとなり、イッカクやシロイルカなど大型の哺乳類が特に海中騒音の影響を受けやすい。北極海の海氷は、今までは、北極海の船舶の交通量を制限するだけでなく、船舶からの騒音を遮る防音効果もあったが、地球温暖化に伴う海氷の融解と船舶交通量の増加は、海中騒音の影響を増大している。

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High North News (2/6)


2.米FMC:海運会社による荷主との交渉拒否に関する規則案について再意見募集

米国連邦海事委員会(FMC)は、2022年の外航海運改革法(OSRA 2022)の実施状況等について、1月25日委員会を開催したところ、その主要審議事項の概要は以下のとおり。①FMCは昨年9月に、貨物の輸送引き受けに関する荷主との交渉を正当な理由なくして海運会社が拒否する(unreasonable refusal to deal or negotiate with respect to vessel space accommodation)ことに対する規制案を発表し、同案に対するコメントを受け付けたが、この結果、多くの重要な問題が提起されたため、規制案に対するさらなる意見公告(Supplemental Notice of Proposed Rulemakings:SNPRM)を実施することとした。②コンテナの超過保管料金と返却延滞料金に関する規制案について、FMCは180件以上のコメントを受理した。また、FMCは昨年のOSRA施行以来、「海運会社による課金に対する不服申し立て (Charge Complaints)」についても、200件以上の申し立てを受け付けたが、そのうち、70件以上が、FMCの調査を開始する要件に合致した。この結果、船社と荷主の間の和解が進み、6月以降、70万ドルを超える料金が荷主に返金されている。

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FMC (2/6)


3.米国西岸:洋上風力発電入札進むも港湾の支援体制整備を急ぐ必要

カリフォルニア州は2035年までに総電力の90%を脱炭素化する予定で、浮体式風力発電の整備が今後進められるが、洋上風力発電施設の建設を陸上側から支援することを専門のとした港湾がいまだ整備されていない。洋上風力発電施設を支援するための港湾の機能としては、①地盤調査の基地②下部構造の建造③タービンを下部構造に結合させるための岸壁④浮体式タービンを沖合に設置する前に保管するための海域⑤浮体式発電施設を係留するケーブルの基地⑥洋上風力発電施設の運用・保守施設が必要とされる。このような支援港湾の候補としては、Long Beach/San Francisco/ Los Angelesなどの港湾が検討されている。

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Seatrade Maritime News (2/6)


4.仏等が原子力から生産される水素をグリーン水素と同列に扱うことを要求

エネルギー源を完全に電化できない肥料・鉄鋼などの産業にとって、炭素を発生しない水素の利用は、CO₂排出削減の切り札となるが、先週(1月30日の週)、仏・ポーランド・チェコなど9か国の担当大臣は連名で欧州委員会に書面を送り、EUの再生可能エネルギー拡大目標の達成方法の一部に原子力発電によって製造された低炭素水素も含めることを要求した。今週(2月6日の週)、EU各国と欧州議会は、2030年までの再生可能エネルギー拡大目標を定める法令について交渉を行う予定だが、欧州議会の交渉責任者は、欧州委員会が昨年に定義するはずであった「再生可能水素」の定義をいまだ明確に示していないことを理由として、交渉の延期を求めている。一方で、独・デンマーク・オーストリア・ルクセンブルグなど9か国以上は、化石燃料依存から脱却する方法として、風力や太陽光などの再生可能エネルギーの拡大に絞って取り組むべきであるとして、原子力によって生産された水素をグリーン水素と同列に扱うべきでないと反対している。

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Reuters (2/6)