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国際海洋情報(2023年2月1日号)

1.欧州委員会:米中に対抗してグリーン産業を欧州で活性化させる方策を提案へ

米国・中国は大規模な国家支援を背景に、グリーン産業の育成・囲い込みを図っているが、欧州委員会は、対抗措置として、バッテリー・CCS・再生可能エネルギー・グリーン水素・電力蓄電設備・低炭素建設技術などのグリーン産業に対する許認可手続きの簡素化・迅速化を図るとともに、欧州の拡大する需要に対応できるようにそれぞれのグリーン産業の2030年までの成長目標も定める。欧州委員会は、炭素中立製品と認定されるための要件定めるなど、EU全体としてのクリーン技術の基準を定め、加盟国政府には、政府調達に当たっては、こうした炭素中立製品の優先調達などを求めることも検討している。

原文

Reuters (2/1)


2.CBI:グリーン経済への移行は経済・雇用に貢献するが、国際競争が激化

英国産業連盟(CBI)がMapping The Net Zero Economyという報告書を発表したところその概要は以下のとおり。①英国がグリーン経済に移行することによって、710億ポンド(約11兆円)の経済効果と、2万社以上の企業が関連して、再生可能エネルギーから廃棄物管理まで、約84万人の新規雇用を創出する。②TynesideやTeesideのようなグリーン経済に注力しているスコットランドやイングランドの地域の方が、ロンドンやイングランド南東地域と比べても強い経済成長を成し遂げている。③さらに、英国の平均年収が33400ポンド(約538万円)であるのに比べて、生産性の高いグリーン産業では平均年収が42600ポンド(約686万円)と賃金水準も向上している。④英国は洋上風力発電をはじめとして、グリーン技術を先導してきたが、グリーン産業発展のための資金供給競争が国際的に激化しており、特に米国のインフレ削減法は3690億ドル(約48兆円)の公的資金をグリーン産業の振興のために用意しており、多くのグリーン産業が米国を最も有利な投資先としてみるようになっており、英国の地位が脅かされている。

原文

BBC (2/1)


3.欧州委員会:米中に対抗するため新たな共同資金の借り入れ提案はせず

米国がインフレ削減法によって、北米に拠点を置くグリーン産業に3690億ドルの支援を行うことを発表して以来、欧州の風力発電のタービン・太陽光パネル・バッテリー・電気自動車・水素などの製造事業者が北米に製造拠点を移転するのではないかという懸念が欧州で高まっているが、こうした国際競争に勝ち残るため、欧州委員会が2月4日に加盟国に提示するGreen Deal Industrial Planでは、新たな共同借り入れは提案せず、コロナ復興基金として既に合意された資金の中から流用し、国家補助に関する規制を緩和して、加盟国がグリーン産業を支援しやすくすることで対応する見込みであることが判明した。しかし、グリーン産業の支援を各加盟国に任せることによって、加盟国の財政力の違いにより、域内での競争条件の不均衡化が生じることから、仏・伊などの諸国は新たにEUとして共通の財源を借り入れて支援を行うべしと主張しているが、これに対して、北部欧州諸国を中心として10か国以上が、復興基金として既に8000億ユーロの借り入れに合意している以上、これ以上新たな借り入れを増やすべきでないと反対している。

原文

Reuters (2/1)


4.洋上風力発電施設のライフサイクルCO₂発生量を計測する業界標準を作成

2021年末までに、世界中で55GWの洋上風力発電が稼働中だが、国際エネルギー機関(IEA)によれば、2050年までに炭素中立を達成するためには、2030年から毎年、70から80GWの洋上風力発電施設を建設する必要があるが、大規模な建設を持続可能な方法で実施するため、Orsted/RWE/Vattenfall等の世界の11の主要洋上風力発電の設計・建設・運用を行う事業者がCarbon Trustと連携して、洋上風力発電施設に使用される部品の製造や洋上風力発電施設の設置作業など洋上風力発電のライフサイクル全体から発生するCO₂を計測評価するための業界統一の手法を定めるための「洋上風力持続可能性共同産業プログラム」を立ち上げることに合意した。この標準化されたCO₂計測の手法を用いることによって、洋上風力発電施設の整備自体から排出されるCO₂を削減し、開発事業者や事業そのものの比較可能性を高めることを目的とする。

原文

Carbon Trust (2/1)


国内ニュース

1.ENEOS:CO2フリー水素サプライチェーン構築に向けた豪州実証プラントの運転開始について
原文

1月30日、ENEOS


セミナー情報

1.Economist Impact:海洋酸性化:忍び寄る危機
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