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国際海洋情報(2023年1月31日号)

1.米国内の99%の石炭火力発電所は新たな再生可能エネ発電より割高

1月30日に発表された調査研究によれば、米国本土にある210の石炭火力発電所の2021年における発電コストと、当該発電所の周辺に新たに再生可能エネルギー発電施設を建設した場合の発電コストと比較したところ、インフレ削減法(IRA)によるエネルギー個人住民税の税額控除制度を勘案すると、太陽光発電に比べると199の石炭火力発電所が、風力発電と比べると104の発電所が、合計で209の石炭火力発電所の発電コストが再生可能エネ発電に比べて割高となることがわかった。既存の石炭火力発電所の発電コストの中央値が36ドル/Mwahであるのに対し、新たな太陽光発電の場合、24ドル/Mwahとなった。さらに、既存の石炭火力発電所を廃止して、近隣に太陽光発電施設を建設した場合、コストの節約分で、既存の石炭火力発電所の発電能力の約8割分の137GWの蓄電施設も建設でき、再生可能発電の安定性も向上できることがわかった。

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The Hill (1/31)


2.ICS:「海運産業旗国年間成績表」を発表

国際海運会議所(ICS)は、1月30日、annual Shipping Industry Flag State Performance Tableを発表したところその概要は以下のとおり。①国際労働機関(ILO)による監査との関係で、下船国から船員の出身国への帰還支援・住居の提供・健康管理と必要な医療の提供など船員の労働環境について加盟国はILOに毎年報告しなくてはいけないが、2022年における加盟国からの報告率は67.6%と、対前年比25%上昇した。②PSCの実績・国際条約の批准状況・IMOの会議への出席状況などの基準に従って、旗国のperformanceが評価され、船主や運航会社が旗国を選択する際の情報を提供することを目的とする。③米国沿岸警備隊は、国際規則や米国の法令を遵守して、船舶の運航の安全性の向上を図っている海運会社・運航会社等を認証するQualship21 programを実施しているが、2022年はこれまで最高の49の旗国が認定された。④DWTベースで、世界でトップ10に入る旗国の中で、すべての指標について前向きな評価が得られなかったのは2か国だけだった。

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ICS (1/31)


3.欧州委員会:露産石油製品の上限価格を提案

G7とEU諸国は、全世界の原油量の供給を混乱させない範囲で、露の収入を減らすために、12月5日から露産原油に対して、1バレル60ドルの上限価格制度を導入しているが、2月5日から導入予定の石油製品に対する上限価格について、欧州委員会は、ディーゼル油のような高価格の製品に対しては1バレル100ドル、燃料油のような低価格の製品に対しては同45ドルの上限価格を設定することを、1月26日加盟国に対して提案した。原油に対する上限価格については、市場価格が上限価格を下回っているため、現在見直しが進められている。

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Reuters (1/31)


4.Ember:2023年の欧州域内における天然ガス発電量は大幅に減少へ

1月31日、EmberがEuropean Electricity Review 2023を発表したところその概要は以下のとおり。①2022年に、欧州における発電量のシェアでは、風力と太陽光の合計が22%となり、初めて天然ガス(20%)・石炭(16%)を上回った。②2022年には、500年に1回の旱魃の影響で水力発電量が減少し、また、仏の原子力発電所の運転停止や、独の原発の廃止の影響で、電力の供給が185TWH不足したものの、不足分の5/6は、再生可能電力の増加と節電で賄えたが、残りの1/6は化石燃料による発電で補ったため、化石燃料からの脱却は足踏みした。この結果、石炭火力発電量が対前年比で7%増加したため、EU域内の発電に伴って排出されたCO₂の量は対前年比で3.9%増加した。③石炭火力発電の増加も発電量全体のシェアで見れば、前年からわずか1.5%増加しただけで、2018年の水準より低く、世界全体の石炭火力発電量を0.3%押し上げただけだった。④2023年の予測としては、水力発電と仏の原発が復活する一方で、ここ数か月は電力需要も引き続き減少することが見込まれるので、化石燃料発電、特に天然ガスによる発電量が大幅に減少すると見込まれる。

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Ember (1/31)


国内ニュース

1.日本郵船:戦略的パートナーシップのもと、海運業における先進的・実用的なAIサービスの創出と活用を推進
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1月30日、日本郵船


セミナー情報

1.Economist Impact:海洋酸性化:忍び寄る危機 2/2 13:30
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