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国際海洋情報(2023年1月30日号)

1.EU:2027年までにリチウムイオンバッテリーの中国への依存から脱却

環境NGOの「交通と環境」は標記報告書を発表したところ、その概要は以下のとおり。①欧州は現在、電気自動車と蓄電施設に必要なリチウムイオンバッテリーの供給を中国に多く依存しているが、2027年までには、中国への依存を脱し、EU域内で必要なバッテリーを供給できる見込み。②中国は希少金属を含む電池の電極についても独占的な地位を占めているが、これについても。ポーランド・スウェーデン・独で生産体制が整うため、2027年までに、欧州域内の需要の2/3を域内で自給できるようになる見込み。③リチウムの精製についても中国依存から、EU希少金属法に基づき、2030年までに欧州の需要量の50%以上を域内で生産できる見込み。④EUにおいては、2035年に内燃機関車が禁止されることを踏まえて、EU域内で必要とされるリチウムイオンバッテリーは、現在すでに域内で半数以上が供給されているが、米国がインフレ削減法によって、エネルギー転換関連産業への手厚い保護と囲い込みを行っているので、EUも米国並みに手厚い支援をしないと、現在欧州で投資計画を持っている企業が、米国に流出する危険性がある。

原文

Transport & Environment (1/30)


2.気温上昇1.5℃目標を達成するのに必要なグリーン水素の生産拡大は困難

地球の気温上昇を産業革命以前と比べて1.5℃以内に抑制するために必要なグリーン水素を生産するためには、再生可能電力を使用して水を分解する電解槽の容量を現在の600MWから2050年までに6000倍の3670GWに拡大しなくてはいけない。国際エネルギー機関(IEA)によれば、現在世界中で進行中の1300件以上の電解槽にかかる事業が風力発電や太陽光発電と同様に順調に進行したとしても、2030年までに300GWに達するのが精いっぱいだが、これらの計画中の事業の8割以上は最終投資決定さえされていない状況である。最新のEUのREPowerEU戦略では、2030年までに1000万トンのグリーン水素を生産することを目標としているが、このためには、約100GW分の電解槽の整備が必要となるが、このためには毎年電解槽の整備を対前年比2倍のペースで拡大するのは、過去の太陽光や風力発での拡大ペースから見ても困難である。

原文

Carbon Brief (1/30)


3.EU:生物多様性の保全のために海洋保護区における底引き網漁を禁止へ

欧州委員会は3月末までに、「持続可能で災害に強い漁業のために海洋生態系を保護・回復するためのEU行動計画」を提案する予定だが、主たる政策の一つとして、海洋生態系に破壊的な影響を及ぼす底引き網漁を2030年までに海洋保護区において禁止する見込み。(水深800mを超える海域における底引き網漁は、既に2016年に原則として禁止されている。)底引き網漁の禁止は、「2030年までの生物多様性戦略」の中で記述され、2021年に合意される予定であったが、漁業者からの強い反対で、合意が何回も延期されてきた。EUは2030年までの生物多様性戦略の中で、2030年までに全海域の30%を海洋保護区に指定することを目指しているが、現在、わずか12%しか海洋保護区に指定されておらず、厳格に管理されているのは1%未満に過ぎない。

原文

Euractiv (1/30)


4.英国財務大臣:米国のインフレ削減法に対し懸念を表明

米国のインフレ削減法(IRA)は、3690億ドルの投資を気候変動対策に関するグリーン産業に投資する内容で、今年に入って発効したが、EUは米国政府の手厚い助成によって、欧州のグリーン産業が米国に移転する可能性に対して深刻な懸念を表明し、欧州委員会委員長は、ダボス会議で、欧州を環境関係の技術と発明の中心とするため、国家助成規制を緩和し、各国政府の基金を活用して、グリーン産業が米国に移転するのを防止する独自の計画を発表すると表明していた。1月24日、欧州委員会を訪問した米国のUSTR代表は、EUの懸念解消に最優先事項として取り組むと約束した。1月27日、英国の財務大臣は、英国政府も一定の懸念を持っていると表明し、英国政府もグリーン産業振興策を発表するとしたが、グリーン産業に対する補助競争が最善とは思えず、規制の在り方も含め、エネルギー産業への投資を促進するとした。

原文

Reuters (1/30)


セミナー情報

1.Economist Impact:海洋酸性化:忍び寄る危機 2/2 13:30
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