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国際海洋情報(2023年1月29日号)

1.EU:電力市場改革についてパブコメを開始

2022年には、ロシアが天然ガスに供給を止めたために、欧州の電力価格が記録的な水準に高騰し、家庭の電力料金を直撃し、いくつかの産業は廃業に追い込まれたが、欧州委員会はこうした状況が又繰り返されないために、欧州委員会は3月にも電力市場改革案を提案する予定だが、その準備作業として、改革の様々な選択肢について、1月23日、パブコメを開始した。EUの提案は、差額補填契約(CfD)や電力購入契約(PPA)を活用した長期契約を発電事業者と締結することによって、電力料金の安定化を図り、電力の供給を受ける家庭や企業が、短期的なエネルギー市場の乱高下による影響を受けにくくするもの。CfDについては、EUの特別規則を作る方法や、各国政府の判断にゆだねる方法、国家支援を受ける発電事業者に対して、CfD契約を義務付けることなどが考えられる。

原文

Euractiv (1/27)


2.マースクとMSCが2025年1月に2Mアライアンスを終了することに合意

マースクとMSCは、2015年に船腹の供給過剰を解消し、コンテナの主要航路における競争力があり、コスト効率の良い運航を実現するために2Mアライアンスを結成したが、パンデミックによる運航の混乱に対し、MSCは船腹量を増やす一方で、マースクは船体の規模を維持するなど経営戦略の違いが明確となり、2月25日、両社は、2025年1月をもってアライアンスを終了すると発表した。マースクは、アライアンス解消後も、コストの上昇なしに、現在のサービス水準を維持できるとしている。MSCはReutersスイスに本社を置くが、イタリアのAponte一族が所有し、2021年には船腹量でマースクを抜いて、世界第1位のコンテナ会社となった。両社はともに、コンテナ海運の約17%のシェアを持っている。

原文

Reuters (1/27)


3.英国:Demand Flexibility Serviceの実施で100万ポンド以上が支払われる。

電力需要が増えた時に、電力供給が追い付かず、停電になる事態を避けるために、指定されたピーク時間帯に、電力使用を抑制することに協力する電力利用者に対して、一定の料金を払い戻すDemand Flexibility Serviceは、英国の送電事業者であるNational GridがOctopusなどの電力小売事業者の協力を得て、スマートメーターを利用する40万を超える顧客が参加して、1月23日と24日の16:30から18:00にかけて実施された。両日は、気温が低下したうえに、風が弱かったので、ピーク時間帯の電力需要が供給を超える可能性があり、普段休止している石炭火力発電所もスタンバイの状況に入った。このキャンペーンに参加した利用者は、該当時間帯に平均で6割通常より電力使用量を削減し、2.5ポンド(約400円)から最高で15ポンド(約2400円)の協力金を得て、節約電力量が大きかった24日には協力金支払い総額が100万ポンド(約1.6億円)を超えた。

原文

The Guardian (1/27)


4.海外からの輸入水素の価格が2030年までにEU域内生産の水素より安価に

豪のエネルギー研究機関であるAurora Energy社は、輸入水素の価格競争力に関する報告書を1月24日に発表したところその概要は以下のとおり。①RePowerEU政策によれば、2030年までにEU域内における水素の需要量は2000万トンに達するが、その半分は海外から輸入される再生可能エネルギーを原料とするグリーン水素(GH)となる見込み。②現時点における北部欧州諸国におけるGH1kgあたりの生産コストは6ユーロから8ユーロだが、独では、2030年までに同3.9ユーロから5ユーロまでコスト削減ができる見込み。③一方、豪・チリ・スペインでは、同3.1ユーロ、モロッコで3.2ユーロ、UAEで3.6ユーロのGHが生産できる見込み。④輸送コストも考慮すると、パイプラインによる輸送が最も割安で、昨年12月に発表されたように、スペイン・モロッコから仏・独へのパイプラインの建設が有力である。⑤パイプラインではなく、GHを海上輸送すると、パイプラインに比べてコストは2割増しとなるが、アンモニアを水素キャリアとして用いた場合、チリや豪から欧州に海上輸送しても2030年までには価格競争力があるコストとなる。

原文

Reuters (1/25)


国内ニュース

1.IHI:ガス火力発電所の燃料アンモニア導入に向けた既存液化天然ガス受入・貯蔵設備の転用化検討に着手
原文

1月25日、IHI


セミナー情報

1.Economist Impact:海洋酸性化:忍び寄る危機
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