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国際海洋情報(2023年1月25日号)

1.英国政府:2大製鉄所の脱炭素化のために6億ポンドを支援

英国財務大臣は今週中にも同国の2大製鉄企業であるBritish SteelとTata Steel UKに対し、石炭を燃料とする溶鉱炉から転換しエネルギーコストを引き下げるため、それぞれ約3億ポンド(約480億円)の支援を実施することを発表する見込み。既存の溶鉱炉は大量の原料炭を使用するため、大量のCO₂を排出するので、ビジネス・エネルギー・産業戦略省(BEIS)は、2020年に中国のJingyeグループに買収されたBritish Steelの要請に応じ、既存の製鉄所の廃止を回避し、持続可能で価格競争力のある製鉄業を維持し、地域の雇用を守るため今回の支援を実施する。英国で最大の製鉄所を経営するインド資本のTata Steelは、英国政府の脱炭素化への支援なしでは、英国の事業から撤退せざるを得ないと昨年既に表明しているが、製鉄所のグリーン化を図るためには、3億ポンドの支援では足りず、最大で30億ポンドの設備投資が必要であり、エネルギーコストについても、欧州のライバル企業と同じコストを英国政府が保証する必要があるとしている。

原文

BBC (1/25)


2.航空会社:SAFの利用拡大について合意するも資金分担については未定

1月16日の週にダブリンで開催されたAirline Economics会議で、航空関係者は、既存の航空燃料と比較して最大で80%のCO₂排出削減が見込まれる持続可能な航空燃料(SAF)の使用拡大が、航空業界が世界的なCO₂排出目標を達成するための唯一の方法であることに合意したが、既存の航空燃料と比較して、3倍から5倍のコストがかかるSAFの利用に伴う経済的な負担を、政府・航空会社・燃料供給事業者のだれが負うかについては合意できなかった。現在航空業界が使用している航空燃料に占めるSAFの割合は1%にも満たないが、2035年までに20%に引き上げる目標を現在立てており、航空燃料のSAFへの意向には、今後30年間で、1.5兆ドル(約195兆円)の投資が必要と見込まれている。会議に参加した多くの航空会社は、多くのCO₂を排出する中国やインドの航空会社が参加しない合意は意味がないと指摘している。

原文

Reuters (1/25)


3.英国:電力需要ピーク時間帯に電力使用自粛した家庭等に電力料金の一部を払い戻し

英国の送電・ガス供給事業者の事業者のNational Grid傘下で、送電を担当するElectricity System Operator(ESO)は、Demand Flexibility Serviceという電力需要が高まるピーク時間帯に、電力の利用削減に協力する消費者・企業に対して、電力料金を割り戻す新たな制度を導入した。具体的にはESOと契約したBritish Gas(日本でも導入されているが、英国ではガス事業者でも電力を小売りできる。)など26の電力小売り事業者のsmart meter(電力の使用量をオンタイムにインターネット経由で把握できる検針の必要のない電力のメーター)を使用している一般家庭と事業者が参加できるが、既に100万件を超える参加申し込みがあったので、大部分の小売事業者は新規の参加受付を中止している。smart meterを使用することによって、ESOが指定したピーク時間帯について、通常使用している電力量と、プログラムに参加して、電力需要を節約した時の使用電力量を比較して、節約した電力1 kilowatt hour毎に、協力金として、3ポンドから6ポンド払い戻される。

原文

The Guardian (1/25)


4.海外からの輸入水素の価格が2030年までにEU域内生産の水素より安価に

豪のエネルギー研究機関であるAurora Energy社は、輸入水素の価格競争力に関する報告書を1月24日に発表したところその概要は以下のとおり。①RePowerEU政策によれば、2030年までにEU域内における水素の需要量は2000万トンに達するが、その半分は海外から輸入される再生可能エネルギーを原料とするグリーン水素(GH)となる見込み。②現時点における北部欧州諸国におけるGH1kgあたりの生産コストは6ユーロから8ユーロだが、独では、2030年までに同3.9ユーロから5ユーロまでコスト削減ができる見込み。③一方、豪・チリ・スペインでは、同3.1ユーロ、モロッコで3.2ユーロ、UAEで3.6ユーロのGHが生産できる見込み。④輸送コストも考慮すると、パイプラインによる輸送が最も割安で、昨年12月に発表されたように、スペイン・モロッコから仏・独へのパイプラインの建設が有力である。⑤パイプラインではなく、GHを海上輸送すると、パイプラインに比べてコストは2割増しとなるが、アンモニアを水素キャリアとして用いた場合、チリや豪から欧州に海上輸送しても2030年までには価格競争力があるコストとなる。

原文

Reuters (1/25)


セミナー情報

1.Economist Impact:海洋酸性化:忍び寄る危機 2/2 13:30
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