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国際海洋情報(2023年1月17日号)

1.DNV:Ship Managerソフトがサイバー攻撃を受け約1000隻の船舶に影響

1月7日、DNVのShipManagerシステムがランサムウェアの攻撃を受け、同システムのITサーバーを閉鎖したと発表した。同ソフトウェアを使用している船舶は同システムのオフラインの部分は引き続き利用ができる。DNVの他のソフトウェアやデータは今回の攻撃の影響を受けていない。同社は世界のITセキュリティ専門家とともに、攻撃を分析し、システムの復旧を急いでいる。同社は同ソフトウェアを採用している顧客70社と連絡を取り、最新の情報を提供しているが、同ソフトウェアを採用している約1000隻の船舶に影響が出ている。

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DNV (1/16)


2.トンガの海底火山の爆発によって地球温暖化が一時的に1.5℃を超える見込み

1月15日、トンガの海底火山が大規模爆発し、大量の火山灰・水蒸気・硫黄酸化物を大気中に噴出した。大規模な火山が噴火すると、噴出した硫黄酸化物によって太陽光が遮られ、地球の気温を低下させるのが通常だが、Nature Climate Changeに発表された研究によれば、今回の爆発で、GHGである水蒸気が前例のない規模で大量に大気中に放出されたため、今後数年間にわたって、地球の気温を一時的に上昇させる可能性があることがわかった。この噴火が起こる前は、2026年までに地球の気温が産業革命以前と比較して1.5℃以上上昇する可能性は半々だったが、今回の噴火によって、1.5℃以上に上昇する確率が上昇しない確率より高くなったが、仮に1.5℃を超えたとしても一時的な現象で、長期的にパリ協定の目標である1.5℃以内の気温上昇抑制が不可能になるわけではない。

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Carbon Brief (1/16)


3.英国:新たに2港をGreen Freeportに指定

1月13日、英国政府とスコットランド政府は、公開入札の結果、Firth of Forth港とInverness and Cromarty Firth港を新たにGreen Freeport (GF)に指定すると共同で発表した。両港は英国政府から、インフラの整備などについて、今後5年間に合計で最高5200万ポンド(約82億円)の支援を受け、官民合わせて108億ポンド(約1.7兆円)の投資により、新たに高い技能を必要とする7.5万人分の雇用を創出する。①Firth of Forth港は2045年までに炭素中立を実現するために、60億ポンド(約9400億円)の投資を呼び込んで、5万人の新規雇用を創出し、初めの5年間で42億ポンド(約6600億円)の粗付加価値(GVA)を生む予定。②Inverness and Cromarty Firth港も2045年までの炭素中立を目指し、浮体式洋上風力発電施設・原子力・水素関連の施設に48億ポンド(約7500億円)投資し、2.5万人の新規雇用を生む予定。

原文

英国政府(1/16)


4.キプロス:露産原油上限価格制支持の見返りにトン数標準税制の自動更新を要求

ウクライナ戦争遂行のための露の資金調達力を抑制する一方で、世界の原油取引市場の安定性を維持するため、G7・豪・EU加盟国は、12月5日に、海上輸送される露産原油に対して、60ドル(約7700円)の上限価格制度を導入したが、この際に欧州委員会は、ギリシャ・マルタ・キプロスなどのEUの海運国に対して、これらの国の海運産業が制裁措置に参加することによって被る損害に対する何らかの見返りを2月5日までに決定することを約束している。この約束を受けて、キプロスはEUの中で3番目の海運国だが、商船隊に占めるタンは約10%と多くないものの、上限価格制度の導入について協議が行われた昨年の10月から12月の間において、管理するタンカー船隊の20%を既に喪失しており、同国は今週(1月9日の週)欧州委員会による見返りの案としていくつかの案を同委員会に提出した。トン数標準税制は、EU域内の加盟国の競争条件の均衡化の観点から、10年ごとに欧州委員会から延長の承認を受ける必要があり、キプロスについては、2019年に10年間の延長を認められているが、2029年の次回延長審査の際に、欧州委員会が自動的に10年間の延長を認めることが提案の一つとして盛り込まれた。

原文

Reuters (1/15)