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国際海洋情報(2023年1月15日号)

1.WMO:2022年の世界の平均気温は産業革命以前より1.15℃上昇

1月12日、世界気象機関(WMO)が、2022年の世界の気候に関する暫定報告書を発表したところその概要は以下のとおり。①2022年における世界の平均気温は、産業革命以前の期間(1850-1900)の平均気温より、1.15℃上昇し、8年連続で産業革命以前より平均気温が1℃以上高い年となった。②気温冷却効果のあるラニーニャ現象が3年目に入ったため、2022年は史上、5番目か6番目に暑い年にとどまった。③2013年から2022年の10年間の平均気温で見ると、産業革命以前と比較して1.14℃気温が上昇した。④2022年には、パキスタンの広範な地域で洪水が発生し、多くの住民が亡くなり、大きな経済損失が発生した。⑤史上最高の熱波が、中国・欧州・南北アメリカ大陸を襲った。

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WMO (1/15)


2.スウェーデンの鉱山会社が欧州最大のレアアースの鉱脈を発見

1月12日、スウェーデンの国営鉄鉱石採掘会社のLKABが、電気自動車や風力発電のタービンの生産に不可欠なレアアース元素の鉱脈を発見したと発表した。この発見によって、EUのエネルギー転換のために中国に依存する比率を減らすことができる可能性がある。鉱脈は同国北極圏の北端のKirunaで発見され、100万トン以上のレアアースの酸化物が含まれている。米地質調査所によれば、この新たな鉱山は欧州最大ではあるが、全世界で発見されているレアアースの量は1.2億トンなので、全体の1%にも満たない量ではある。発見されたレアアースはプラセオジムとネオジウムの酸化物で、電気自動車生産に使用される特殊な磁石の原料となる。LKABによれば、この発見によって、欧州で生産される電気自動車の磁石の原料の大部分を賄うことができる。しかし、採掘許可が迅速に出されても、実際の生産開始までには、10年から15年かかると同社は予測している。

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Euronews (1/15)


3.ブルガリア議会:政府に脱炭素化計画の後退を圧倒的多数で求める

ブルガリアは、南欧における主要な電力の輸出国で、国営の電力会社が電力の輸出によって獲得した収益を利用して、産業界や国民をエネルギー価格の高騰から保護している。一方、2022年4月に同国政府は、欧州委員会との交渉の末、2025年までに対2019年実績比でCO₂の排出を40%削減することを約束しており、この結果、操業中の石炭火力発電所を寿命より早く閉鎖することが必要となるが、同国南部のMaritsa Eastにあり、1万人以上の労働者を雇用する褐炭鉱山と石炭火力発電所の1500人以上の労働者たちが、同国の国会議事堂前で石炭産業の維持のため抗議行動を実施した。ウクライナ戦争によるエネルギー価格の高騰と、次期総選挙を控えて、議員の多くは労働者たちの怒りをなだめるために、政府に対してEUからの助成が削減されようとも、昨年4月に合意したCO₂削減計画について、欧州委員会と再交渉するよう求める決議を議会で圧倒的多数で可決した。

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Euronews (1/15)


4.キプロス:露産原油上限価格制支持の見返りにトン数標準税制の自動更新を要求

ウクライナ戦争遂行のための露の資金調達力を抑制する一方で、世界の原油取引市場の安定性を維持するため、G7・豪・EU加盟国は、12月5日に、海上輸送される露産原油に対して、60ドル(約7700円)の上限価格制度を導入したが、この際に欧州委員会は、ギリシャ・マルタ・キプロスなどのEUの海運国に対して、これらの国の海運産業が制裁措置に参加することによって被る損害に対する何らかの見返りを2月5日までに決定することを約束している。この約束を受けて、キプロスはEUの中で3番目の海運国だが、商船隊に占めるタンカーの割合は約10%と多くないものの、上限価格制度の導入について協議が行われた昨年の10月から12月の間において、管理するタンカー船隊の20%を既に喪失しており、同国は今週(1月9日の週)欧州委員会による見返りの案としていくつかの案を同委員会に提出した。トン数標準税制は、EU域内の加盟国の競争条件の均衡化の観点から、10年ごとに欧州委員会から延長の承認を受ける必要があり、キプロスについては、2019年に10年間の延長を認められているが、2029年の次回延長審査の際に、欧州委員会が自動的に10年間の延長を認めることが提案の一つとして盛り込まれた。

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Reuters (1/15)