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国際海洋情報(2023年1月10日号)

1.英国:2022年に風力発電の発電シェアが26.8%と過去最大に

英国の送電・ガス供給事業者のNational Gridの電力運営会社ESOによれば、2022年において、風力発電が全体の発電量に占める割合は、前年の21.9%から上昇して、26.8%と過去最大になった。特に昨年1月には、風力発電のシェアが64%となり過去最大となった。また、発電量で見ると、12月30日に過去最大の21GWを記録した。一方で、ウクライナ戦争の関係で価格が高騰したにもかかわらず、天然ガス発電量も、個別発電源としては最大のシェアである38.5%を記録した。National Gridは再生可能エネルギー発電量の増加に対応して送電網の改良と、再生可能エネルギーによっては鵜殿された電力を蓄電するためのバッテリー蓄電施設も増強している。

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The Guardian (1/10)


2.インド政府:国家グリーン水素戦略を承認

インド政府は、1月4日、閣議で、総額1974億ルピー(約3160億円)の国家グリーン水素missionを承認し、2030年までに以下の目標の達成を目指す。①インド国内で電解装置を生産し、再生可能エネルギーの発電能力を125GWまで整備して、年間最低500万トンのグリーン水素を生産できる施設を整備する。②このため80億ルピー(約128億円)を投資し、60万人の新規雇用を創出する。③この結果、累計で10億トンの化石燃料の輸入を削減し、GHG排出量を年間約5000万トン削減する。④グリーン水素とそれから製造するアンモニアなどの派生物質の輸出も促進する。⑤グリーン水素移行のための戦略的介入(SIGHT)プログラムの下、グリーン水素を大量生産・利用できる地域をグリーン水素ハブとして指定する。⑥研究開発のための戦略的水素革新パートナーシップ(SHIP)のもと、官民連携を進め、国際的に競争力のある技術開発を推進する。

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インド政府 (1/10)


3.IEA/EPO:水素に関する特許は欧州と日本が先行

IEAと欧州特許庁(EPO)は、Hydrogen patents for a clean energy futureと題する報告書を発表したところその概要は以下のとおり。①世界的な水素に関する特許は2010年代に米国の地位(20%)が後退し、EU(28%)と日本(24%)が主導している。韓国(12%)と中国(15%)は国際的にはまだスタートしたばかりの状況にある。②化学産業や石油精製部門に関する既存の水素関連技術は、欧州の化学産業が支配しているが、電解槽や燃料電池などの新たな分野の特許については、自動車産業や化学産業が先導している。③現状では水素の大部分は化石燃料から生産されているものの、特許の面からみると、既にCO₂の排出が少ない代替的な手段に移行しており、電解槽の分野では欧州勢が先行している。④これまでの水素関連の特許としては、水素の貯蔵に関する既存の技術や、アンモニアやメタノールの生産に関するものが2001年から2020年まで堅実に伸びてきたが、それ以外の航空燃料としての合成ケロシンや合成メタンなどに関する水素派生物質の技術開発は、過去10年間で勢いを失った。⑤最終製品に関する水素関連の特許については、自動車の部門で引き続き活発に行われている。

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EPO (1/10)


4.UNEP:オゾン層が40年以内にオゾンホールができる前の状態に回復

オゾン層破壊物質に関するモントリオール議定書の実施状況を4年ごとに見直す国連の科学評価報告書が1月9日発表されたところその概要は以下のとおり。①議定書で使用が禁止された物質の99%が大気中からなくなったため、成層圏上層部のオゾン層が顕著に回復し、人体に有害な太陽からの紫外線が地上に届く量も減っている。②議定書に従い、現在の禁止措置が継続されれば、南極では2066年までに、北極では2045年までに、オゾン層が、オゾンホールが発見される1980年より以前の状態に回復する。③2016年に採択された同議定書に対するKigali改正によって、禁止物質として追加されたHFCsは直接オゾン層を破壊しないものの、強力なGHGで、HFCsの禁止だけで、今世紀末までに、地球の気温上昇を0.3℃から0.5℃引き下げる効果がある。④科学評価パネルは初めて、太陽光の反射率を上げるために成層圏にエアロゾルを人工的に注入するSAIなどの地球工学的地球温暖化対策が、オゾン層に与える影響について検討したが、SAIによって成層圏の温度に影響を与え、オゾンお循環や製造に意図せぬ影響を与える可能性が高いとして警告した。

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UNEP (1/10)