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週刊国際海洋情報(2023年1月10日号)

1.独:エネルギー転換に必要な希少原材料を確保するための戦略を刷新へ

今後エネルギー転換を進めるにあたって不可欠となる希少原材料については、需要が急増することが予測される中、1月3日、独政府は、諸外国への希少原材料への依存を減らし、供給不足を回避するために、独政府の原材料戦略を刷新すると発表した。リチウム・レアアース・黒鉛などの希少原材料に対する需要は、今後急増することが予想され、例えばIEAによれば、バッテリー生産に不可欠なリチウムの需要は、2040年までに現在の42倍に跳ね上がることが予想されるが、独を含む欧州諸国は、これらの気象原料の輸入を非民主主義的な国家に依存している。ドイツは、希少な原料とみなされる27の素材中、21の素材については、100%輸入に依存しているが、現在、独では希少原料を使用した製品の約13.4%しかリサイクルしておらず、欧州委員会は希少原料のリサイクル率を2倍に引き上げることを提案している。

原文

Euractiv (1/6)


2.AFS条約改正:1/1からシブトリンの防汚塗料としての使用を禁止

船体の防汚塗料としてシブトリンを使用することを禁じる船舶の有害な防汚方法の管理に関する条約(AFS条約)の改正が1月1日から発効した。シブトリンについては、環境や生態系に与えるについて既に多くの研究が公表され、場合によっては既に使用が禁止されているトリブチルスズ(TBT)より有毒性が高く、海底に堆積して長期間にわたって生態系に悪影響を与えることが判明している。新造船については1月1日から直ちに、既存船については、1月1日以降到来する最初の定期防汚方法更新審査の際に、シブトリンを含む防汚塗料を取り除くか、その上から、シブトリンを含む防汚塗料の上からコーティングする塗料を塗布する必要がある。

原文

ABS (1/6)


3.英国:2022年に再生可能エネと原子力発電の発電量が化石燃料を上回る

英国の送電・天然ガス供給事業者のNational Gridの発表によれば、2022年においては、再生可能エネと原子力をあわせた脱炭素エネによる発電量が全体の48.5%を占め」、天然ガスと石炭をあわせた化石燃料による発電量のシェア40%を上回った。太陽光や風力による発電コストは、他のエネルギーによる発電コストを大幅に下回り、長期的に電気料金を引き下げる要因となっている。発電量をエネルギー源単体で見ると、天然ガスが依然として38.5%と最大のシェアを維持し、風力発電が26.8%、原子力が15.5%のシェアで続いた。最もCO₂排出量の多い、石炭火力発電は、2012年には43%のシェアを持っていたが、2022年には1.5%にまで減少している。しかし、2015年から実施された陸上風力発電施設新設の禁止によって、風力発電拡大のペースが抑制されている。

原文

BBC (1/7)


4.DNV:2022年における代替燃料船の発注状況

2022年中に、世界で275隻の代替燃料を使用できる船舶が発注されたが、全体の82%に当たる222隻がLNG燃料船で、そのうち74%をコンテナ船・自動車輸送船が占めている。2021年におけるLNG燃料船の発注数は240隻であったので、2022年は予想に反して、発注数が減少したが、2022年中に運航を開始した104隻のLNG燃料新造船を加えて、運航中と発注されたLNG燃料船の総数は876隻となった。LNGに続くのがメタノールで、大型のコンテナ船を中心に2022年中に35隻発注され、運航中のメタノール燃料船と併せると、メタノール燃料船の総数は82隻となった。また、水素で運航できる船舶も2022年中に18隻発注され、洋上風力発電施設に要員を運ぶ小型船から、船上で使用する電力の一部を発電するために水素を燃料とする燃料電池を搭載した大型クルーズ船まで多様な用途にわたっている。2023年も代替燃料船として発注される船舶の大多数はLNG Dual燃料船となるが、天然ガス価格の高騰によって、LNG燃料船の本格的な採用は先送りになるものの、現在発注されているLNG燃料船が就航するタイミングでは、天然ガスやLNGの世界的価格も落ち着きを取り戻していることが予測される。

原文

gCaptain (1/7)


5.独とノルウェーの間に水素供給パイプラインを建設へ

独は2030年までにすべての火力発電所を廃止し、発電部門を脱炭素化する計画を持ち、さらに同国はロシアに代わるエネルギーの供給先が必要だが、独の発電事業者のRWEとノルウェーの国営エネルギー企業のEquinorは、1月5日、今後数年内に独国内に水素を燃料とする発電所建設し、水素供給のために両国間にパイプラインを建設する計画を発表した。発電所はRWEとEquinorが共同で保有し、建設当初は、ノルウェー産の天然ガスを燃料として使用し、その後、天然ガスを原料としたうえでCCUSによってCO₂を除去したノルウェー産のブルー水素を使用する予定。CCUSによって、水素生産時に発生するCO₂の95%を除去し、そのCO₂は海底に貯留される予定。Equinorは2030年までに2GWのブルー水素の生産を計画している。

原文

CNN (1/8)


6.英議会:潮汐・海洋発電の拡充を求める

1月5日、英国議会の環境監査委員会(Environmental Audit Committee:EAC)は「化石燃料からの転換の加速と代替エネルギーの確保」と題する報告書を発表し、潮汐発電は、予見/信頼可能で年間を通じて電力を発電することが可能で、英国のエネルギー安全保障戦略において、きちんと位置付けられるべきと指摘した。英国政府は、潮汐発電について、他の代替エネと比べてコスト的に割高であるとの理由で政府としての支援を中止しているが、最近発表されたBirmingham大学の研究結果によれば、潮汐発電の発電コストは他の代替エネ発電と価格競争が可能であると結論付けている。英国政府は原子力発電の促進のために1.2億ポンド(約192億円)の基金を設立しているが、EACは政府に対して、同規模の基金を潮汐発電の開発のために設置し、開発のためのロードマップを作成し、迅速に13GW規模の潮汐発電の実現を目指すべきと勧告している。

原文

renews.biz(1/8)


7.洋上風力発電整備の需要拡大と標準化・大型化の必要性

洋上風力発電開発については、既に入札が行われた海域、今後入札が予定されている海域、各国政府による洋上風力発電整備目標に引き上げ、発電施設建設手続きの合理化などを踏まえると、今後比較的短期間で、前例のない数の洋上風力発電施設が建設されることが予測される。さらに2030年以降は、洋上に大規模なenergy islandsが建設され、大規模なグリーン水素の製造施設が建設されるなど、さらなる規模の拡大も予想される。このような今後の需要拡大に応えるために、洋上風力発電技術の標準化と施設の大型化が求められる。昨年12月には、デンマークでVestas社の15MWの試験機が設置されたが、1基で2万戸分の家庭の電力を供給でき、2024年にデンマークで実用化される予定だが、同国ばかりではなく、既に米・独・スコットランド・ポーランドの洋上風力発電施設で合計発電能力8GW以上分が導入されることが決まっている。Siemens Gamesa社製の最新鋭機も15MWの発電能力があり、2024年に実用化される予定。一方、中国では、さらに大型の16/18MWのタービンの開発が進んでいる。

原文

Offshore Energy (1/9)


8.再生可能エネルギー事業許可促進に関する欧州理事会規則の概要

欧州理事会は、12月22日、再生可能エネルギー事業の許可手続きの暫定的な簡素化に関する理事会規則(2022/2057)を発出したところ、その概要は以下のとおり。①再生可能エネルギー発電・送電・蓄電に関する事業施設の計画・建設・運営を原則として、「(様々な手続きを超越できる)公共的な利益」とみなす。②建物の屋上等に設置される施設も含む太陽光発電・蓄電施設の建設申請は3か月以内に可否を判断する。③古い再生可能エネルギー発電施設を改修して、能力を増強する際には、環境影響調査全体をやり直す必要はなく、特に太陽光パネル発電施設については、既存の施設のスペースを拡張しない場合には、環境影響調査を実施する必要はない。④加盟国は、再生可能エネルギー事業が再生可能エネルギー発電事業のために割り当てられた区域または戦略的環境評価を実施する地域に立地する場合には、環境影響調査の対象から除外することができる。

原文

Osborne Clarke (1/9)


9.インド政府:国家グリーン水素戦略を承認

インド政府は、1月4日、閣議で、総額1974億ルピー(約3160億円)の国家グリーン水素missionを承認し、2030年までに以下の目標の達成を目指す。①インド国内で電解装置を生産し、再生可能エネルギーの発電能力を125GWまで整備して、年間最低500万トンのグリーン水素を生産できる施設を整備する。②このため80億ルピー(約128億円)を投資し、60万人の新規雇用を創出する。③この結果、累計で10億トンの化石燃料の輸入を削減し、GHG排出量を年間約5000万トン削減する。④グリーン水素とそれから製造するアンモニアなどの派生物質の輸出も促進する。⑤グリーン水素移行のための戦略的介入(SIGHT)プログラムの下、グリーン水素を大量生産・利用できる地域をグリーン水素ハブとして指定する。⑥研究開発のための戦略的水素革新パートナーシップ(SHIP)のもと、官民連携を進め、国際的に競争力のある技術開発を推進する。

原文

インド政府 (1/10)


10.IEA/EPO:水素に関する特許は欧州と日本が先行

IEAと欧州特許庁(EPO)は、Hydrogen patents for a clean energy futureと題する報告書を発表したところその概要は以下のとおり。①世界的な水素に関する特許は2010年代に米国の地位(20%)が後退し、EU(28%)と日本(24%)が主導している。韓国(12%)と中国(15%)は国際的にはまだスタートしたばかりの状況にある。②化学産業や石油精製部門に関する既存の水素関連技術は、欧州の化学産業が支配しているが、電解槽や燃料電池などの新たな分野の特許については、自動車産業や化学産業が先導している。③現状では水素の大部分は化石燃料から生産されているものの、特許の面からみると、既にCO₂の排出が少ない代替的な手段に移行しており、電解槽の分野では欧州勢が先行している。④これまでの水素関連の特許としては、水素の貯蔵に関する既存の技術や、アンモニアやメタノールの生産に関するものが2001年から2020年まで堅実に伸びてきたが、それ以外の航空燃料としての合成ケロシンや合成メタンなどに関する水素派生物質の技術開発は、過去10年間で勢いを失った。⑤最終製品に関する水素関連の特許については、自動車の部門で引き続き活発に行われている。

原文

EPO (1/10)


その他のニュース

1.再生可能エネルギー
 (ア)洋上風力発電
  ①英国
   2022年に風力発電の発電シェアが26.8%と過去最大に 原文 (1/10)
2.エネルギー転換
 (ア)石炭の取り扱い
  ①グレンコア
   投資家から燃料炭生産と2050年炭素中立目標の整合性を問われる 原文 (1/8)
3.気候変動
 (ア)異常高温
  ①欧州
   欧州:記録的暖冬で多くのスキー場が閉鎖に追い込まれる 原文 (1/6)
  ②英国
   英国:2020年の平均気温は過去最高の10.03℃ 原文 (1/7)
 (イ)氷河・海氷の減少
  ①今後の予測
   気温上昇を1.5℃以内に抑制しても世界の氷河の約69%が消滅 原文 (1/7)
 (ウ)GHG排出量の実績
  ①プラスチック生産と焼却処理
   プラスチックの生産から排出されるCO₂は2050年に25億トン 原文 (1/8)
4.気候変動緩和対策
 (ア)企業に対する義務付け
  ①気候変動訴訟
   全世界的に気候変動訴訟(climate change litigation)が拡大 原文 (1/9)
5.環境問題一般
 (ア)オゾン層の破壊
  ①モントリオール議定書
   オゾン層が40年以内にオゾンホールができる前の状態に回復 原文 (1/10)
6.生物多様性
 (ア)森林の不法伐採
  ①アマゾン
   ブラジル新政権:アマゾンの森林の違法伐採禁止を徹底へ 原文 (1/6)
7.複合一貫輸送
 (ア)英国
  ①物流革新基金
   物流中小企業の効率化・低炭素化のための物流革新基金を設立 原文 (1/9)

1.再生可能エネルギー
 (ア)洋上風力発電
  ①英国
   2022年に風力発電の発電シェアが26.8%と過去最大に 原文 (1/10)
2.エネルギー転換
 (ア)石炭の取り扱い
  ①グレンコア
   投資家から燃料炭生産と2050年炭素中立目標の整合性を問われる 原文 (1/8)
3.気候変動
 (ア)異常高温
  ①欧州
   欧州:記録的暖冬で多くのスキー場が閉鎖に追い込まれる 原文 (1/6)
  ②英国
   英国:2020年の平均気温は過去最高の10.03℃ 原文 (1/7)
 (イ)氷河・海氷の減少
  ①今後の予測
   気温上昇を1.5℃以内に抑制しても世界の氷河の約69%が消滅 原文 (1/7)
 (ウ)GHG排出量の実績
  ①プラスチック生産と焼却処理
   プラスチックの生産から排出されるCO₂は2050年に25億トン 原文 (1/8)
4.気候変動緩和対策
 (ア)企業に対する義務付け
  ①気候変動訴訟
   全世界的に気候変動訴訟(climate change litigation)が拡大 原文 (1/9)
5.環境問題一般
 (ア)オゾン層の破壊
  ①モントリオール議定書
   オゾン層が40年以内にオゾンホールができる前の状態に回復 原文 (1/10)
6.生物多様性
 (ア)森林の不法伐採
  ①アマゾン
   ブラジル新政権:アマゾンの森林の違法伐採禁止を徹底へ 原文 (1/6)
7.複合一貫輸送
 (ア)英国
  ①物流革新基金
   物流中小企業の効率化・低炭素化のための物流革新基金を設立 原文 (1/9)