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国際海洋情報(2023年1月8日号)

1.独とノルウェーの間に水素供給パイプラインを建設へ

独は2030年までにすべての火力発電所を廃止し、発電部門を脱炭素化する計画を持ち、さらに同国はロシアに代わるエネルギーの供給先が必要だが、独の発電事業者のRWEとノルウェーの国営エネルギー企業のEquinorは、1月5日、今後数年内に独国内に水素を燃料とする発電所建設し、水素供給のために両国間にパイプラインを建設する計画を発表した。発電所はRWEとEquinorが共同で保有し、建設当初は、ノルウェー産の天然ガスを燃料として使用し、その後、天然ガスを原料としたうえでCCUSによってCO₂を除去したノルウェー産のブルー水素を使用する予定。CCUSによって、水素生産時に発生するCO₂の95%を除去し、そのCO₂は海底に貯留される予定。Equinorは2030年までに2GWのブルー水素の生産を計画している。

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CNN (1/8)


2.プラスチックの生産・焼却処理から排出されるCO₂は2050年までに25億トンに

OECDによればプラスチックの生産・焼却によって、2019年には、全CO₂排出量の3.4%に当たる18億トンのCO₂が排出されたが、この量は航空輸送から排出されるCO₂や全世界のコメの生産によって排出されるCO₂の量を上回っている。プラスチックによるCO₂排出量は今後も増え続け、現在の生産増加ペースで行くと、2050年までに25億トン以上のCO₂を排出するようになる。プラスチック生産のエネルギーとして石炭を多く使用するインド・中国・インドネシアにプラスチックの生産拠点が移転したため、世界のプラスチック製造業から排出されるCO₂の総量は、1995年以来これまでに倍増した。米国でもプラスチック生産の原料となる天然ガスを生産するために、2010年から2018年の間に、約2000億ドル(約2.6兆円)が投資され、現在全米でプラスチック生産のための工場が201あり、36事業が準備中である。新たな事業が全て稼働すると、9400万トンのCO₂が追加排出されることとなる。

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Bloomberg (1/8)


3.英議会:潮汐・海洋発電の拡充を求める

1月5日、英国議会の環境監査委員会(Environmental Audit Committee:EAC)は「化石燃料からの転換の加速と代替エネルギーの確保」と題する報告書を発表し、潮汐発電は、予見/信頼可能で年間を通じて電力を発電することが可能で、英国のエネルギー安全保障戦略において、きちんと位置付けられるべきと指摘した。英国政府は、潮汐発電について、他の代替エネと比べてコスト的に割高であるとの理由で政府としての支援を中止しているが、最近発表されたBirmingham大学の研究結果によれば、潮汐発電の発電コストは他の代替エネ発電と価格競争が可能であると結論付けている。英国政府は原子力発電の促進のために1.2億ポンド(約192億円)の基金を設立しているが、EACは政府に対して、同規模の基金を潮汐発電の開発のために設置し、開発のためのロードマップを作成し、迅速に13GW規模の潮汐発電の実現を目指すべきと勧告している。

原文

renews.biz(1/8)


4.グレンコア:投資家から燃料炭生産と2050年炭素中立目標の整合性を問われる

2021年に6770万トンの燃料炭を取引し、約1億トンの石炭を生産した世界最大の鉱山開発会社であるグレンコア社は、長期間にわたり、GHG排出削減に熱心でないと非難されてきたのを受け、石炭の生産量を2019年の生産水準より増やさないと約束し、2050年に炭素中立を達成することを宣言し、昨年12月には、豪で計画されていた最大級の石炭鉱山の開発を実施しないと発表した。しかし、燃料価格の高騰を受けて、2022年上半期には、189億ドルの利益(うち95億ドルは石炭関連)を上げ、高い石炭の収益性と気候変動対策の整合性が取れていないとして、世界で2兆ドル以上を運用するHSBCなどの投資家から両者の整合性について説明を求める決議案が提案された。同社は3月に2020年に発表した気候変動対策の進捗状況に関する報告書を発表するとしているが、この決議案は5月に開催される年次総会で投票に付され、75%以上の賛成が得られた場合には、同社は、整合性について詳細な説明を行う必要がある。

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swissinfo.ch (1/8)