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国際海洋情報(2023年1月4日号)

1.P&I Clubs:1月1日からロシア・ベラルーシ・ウクライナ海域の戦争保険を停止

ウクライナ戦争の影響で、多くのP&I Clubが、1月1日からロシア・ベラルーシ・ウクライナ海域における戦争保険について、リスク回避のための再保険を得られないので、引き受けを停止している。この結果、用船社には、戦争保険料金の高騰や、保険なしで船舶を運航するという影響を受けている。このような状況の中で、エネルギー需要が高まる冬季に、ロシア極東のサハリン2事業によって生産される天然ガスの輸入を維持するために、日本の保険会社は、今後最低3か月間はLNG輸送船に対して、ロシア海域における沈没や徴用といった戦争リスクに対する保険の提供を継続することを決定した。

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Safety4Sea (1/4)


2.2022年に世界で発生した最大の自然災害はHurricane Ianで1000億ドルの損害

Christian Aidが発表した報告書によれば、2022年に発生した世界の10大災害による損害額は、それぞれ30億ドル(約3900億円)を超えることがわかった。もっとも損害額が大きかったのは、米国とキューバ9月に襲ったHurricane Ianで、損害額が1000億ドル(約13兆円)、死者130人、被災によって移住を余儀なくされた人が4万人以上発生した。人的損失が最大だったのは、パキスタンで発生した洪水で、1739人が亡くなり、700万人が移住を余儀なくされ、損害保険賠償額は56億ドル、保険の対象とならない損害額を含めると合計で300億ドル(約4兆円)の損害が発生した。10大災害以外でも、英国とアイルランドを2月に襲ったStorm Euniceは、16人の死者と43億ドル(約5600億円)の損害をもたらした。欧州で昨夏に発生した干ばつでは、穀物の収穫を直撃し、穀物価格を上昇させ、冷却水不足で原子力発電所の操業に影響を与え、大河川の水位の低下で舟運に大きな影響を与え、200億ドル(約2.6兆円)の損害を発生した。中国の干ばつも84億ドル、ブラジルの干ばつも40億ドルの損害が発生した。

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The Guardian (1/4)


3.北米の寒波と欧州の記録的な暖冬が1月も継続

昨年12月23日から続く「爆弾サイクローン」と名付けられた北米の吹雪と異常低温は、3000km以上の幅で南は米国のテキサス州やカナダのケベック州やオンタリオ州まで襲来し、少なくとも60人以上が死亡し、何百万人の家庭で停電が発生した。例えば、NY州のBuffaloでは72時間で120cmの降雪があり、Montanaでは氷点下39℃を記録した。北極圏は地球上の他の地域と比べて数倍のペースで温暖化が進んでおり、この結果、北極圏とその周りの地域との温度差が縮小し、北極上空を流れるジェットストリームを不安定化させ、北極圏に温かい空気が流れ込む一方で、極渦(polar vortex)が押し出されて南下したことによってこの異常気象が発生したと考えられる。一方、欧州のベラルーシ・チェコ・デンマーク・ラトビア・リトアニア・オランダ・ポーランドでは、1月1日としては史上最高の気温を記録し、例えばポーランドの1月の平均気温は1度だが、1月1日に19℃を記録し、チェコでも平均気温は3℃だが、19.6℃を記録した。2022年の年間気温で見ても、英国では史上最高を記録し、欧州大陸では夏場に史上最高気温を記録した。

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New Scientist (1/4)


4.独:再生可能エネルギー拡大にもかかわらずCO₂排出削減は足踏み

1月4日、気候変動問題に関する独のシンクタンクのAgora Energiewendeが発表した2022年中に独国内で排出されたCO₂総量に関する分析の概要は以下のとおり。①エネルギー価格の高騰、温暖な気候、露による天然ガス供給停止に対応した政府による国民への省エネの呼びかけによって、2022年における独国内のエネルギー消費量は、対前年比4.7%の減少と東西ドイツ統合以来最低の量となった。②独国内のエネルギーミクスにおいて、再生可能エネルギーの比率が過去最大の46%に拡大したにもかかわらず、CO₂排出量は目標とであった7.56億トンを超える7.61億トンとなり、1990年排出実績比40%減という2020年の目標量よりも多かった。③独は2045年までに炭素中立を達成するために2030年までに1990年実績比でCO₂排出量を65%削減することを目標としているが、ロシアによるウクライナ侵攻によって、エネルギー安全保障の観点から、石炭・石油の使用量が増えたために、2022年は削減目標に達しなかった。④個別にみると、エネルギー部門と産業部門は削減目標を達成したが、交通部門と建物部門が削減目標を達成できなかった。

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Reuters (1/4)