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国際海洋情報(2023年1月2日号)

1.EUにおける海運脱炭素化に関するこれまでの合意内容と今後の展望

標記概要は以下のとおり。①EU ETS MaritimeはEU域内の航海についてCO₂排出量の100%、EU域外との航海については、CO₂排出量の50%に適用される。②メタンや窒素酸化物などの他のGHGに対しても、2026年からETSの対象となる。③FuelEU Maritimeは、海運事業者が重油燃料に代わる代替燃料を使用することを促進するものだが、航空分野の同様な燃料規制であるReFuel Aviationと異なり、使用すべき燃料油を指定せず、輸送単位当たりに排出されるCO₂の量を段階的に削減し、CO₂排出のための手段については、海運事業者の自由な選択にゆだねるという「技術中立」の立場を採用する結果、LNGの使用を許容するとして環境派は反対している。④年明けに合意されることが予定される案をもとに、2回目の欧州議会と欧州理事会の交渉が12月8日に開催された。

原文

Euractiv (1/2)


2.EUにおける航空脱炭素化に関するこれまでの合意内容と今後の展望

標記概要は以下のとおり。①航空機の代替燃料に関する規則であるReFuel EUについては、今年中に交渉が決着せず、合意が来年に持ち越された。②規則案によれば、EUの空港から離陸する全ての航空機は、先進的なバイオ燃料と合成燃料から作成されたグリーン水素から構成される「持続可能な航空燃料(SAFs)」を一定割合以上含んだ燃料の給油を義務付けられ、この割合は今後段階的に引き上げられる。③欧州理事会は欧州委員会の提案とおり、SAFの含有率を2050年までに63%に引き上げることを主張する一方で、欧州議会は同年までに85%まで引き上げることを主張している。④また、両者は、SAFの原料として認められる範囲についても意見が対立しており、特に原子力によって発電された電力を使用して製造された合成燃料をSAFとして認めることについては、欧州議会の社会主義的な政党や環境問題に関心のある政党からは強い拒否反応がある。⑤ETSの航空への適用範囲を従来とおり欧州域内に限定し、国際線については、ETSと比較してコストがはるかに少ないICAOのCORSIAに引き続き委ねるとする決定は、国際線を運航する航空会社から歓迎される一方で、環境活動家や格安航空会社はこの決定に強く反発している。

原文

Euractiv (1/2)


3.EU:エネルギー効率の向上に関する基準引き上げ交渉の現状

欧州委員会は、一次エネルギー消費と最終エネルギー消費について2030年までにピークアウトさせることを含むエネルギー節約目標引き上げのため、2021年にエネルギー効率指令の改正案を提案し、2022年5月には、エネルギー危機によりエネルギー節約の必要性が高まったことを受けて、法的拘束力を持った包括的なエネルギー節約目標を再提案している。しかし、2022年の理事会議長国であるチェコがエネルギー効率の引き上げに消極的だったために、本件交渉は遅々として進まなかったものの、本年最後の12月14日のEU3者協議(議会・理事会・委員会)において、人口4.5万人以上の地方公共団体において、冷暖房に関するエネルギー効率化計画を2050年炭素中立計画に合わせて策定することに合意し、また、エネルギー効率向上の対象となる事業については、交通関係事業については、事業費1.75億ユーロ(約247億円)以上の事業、その他の事業については、1億ユーロ(約141億円)以上の事業を対象とすることで合意した。

原文

Euractiv (1/2)


4.EU:比人船員の訓練方法の問題点に対応する措置を3月末までに決定

独紙の報道によれば、比国内における船員訓練の方法が、長年にわたって、IMOのSTCW条約に定める要件を満たしていないため、EUは、EU籍船における比人船員の雇用の禁止を検討しており、実際にこの禁止が実現すれば、世界最大の船員供給国で、世界全体の船員数の約1/4に当たる38万人から40万人の船員を供給している比に対しては大きな打撃となる。欧州海上安全庁(EMSA)は2006年から、比人船員の訓練方法の問題点を比政府に対し指摘し、比政府は指摘された問題点を改善することを約束しているが、比政府は船員の訓練を民間訓練機関に任せる一方で、民間船員訓練機関がEMSAの指摘に従って船員訓練を改善するために十分な政府支援を与えていないと指摘されているが、比大統領は、欧州委員会の担当者に対し、EMSAに指摘された改善点に対応して、船員の訓練の仕方を改善し、EMSAの規制を遵守すると約束した。比政府は、EMSAによる監査で指摘された問題点に関し、既に詳細な回答を欧州委員会に提出済みで、委員会の専門家がこの回答を精査中で、2023年第1四半期末までに、欧州委員会としての最終対応を決定する予定。

原文

The Maritime Executive (1/2)


国内ニュース

1.商船三井:関西電力とCCSバリューチェーン構築に向けた海上輸送等の検討
原文

12月23日、商船三井