国際海洋情報の内容については、有料メールニュースなど営利目的での転載はご遠慮頂くとともに、二次使用の際は国際海洋情報からの転載である旨を明示していただきますよう、お願いいたします。

国際海洋情報(2022年12月19日号)

1.IEA:2022年の全世界の石炭の消費量が過去最高に

IEAが石炭に関する年次報告書Coal 2022を12月16日発表したところその概要は以下のとおり。①2022年の世界の石炭消費量は、対前年比1.2%増加して、初めて80億トンを超え、2013年の記録を抜いて過去最高を記録した。②今後の見通しとしては、先進国における消費量の減少をアジアの新興国における消費増が相殺して、2025年までこの高い水準の消費量が続く見込み。③2022年には、世界的なエネルギー危機の中で、天然ガス価格が高騰した分、石炭の需要を増やす一方で、世界経済が減速してエネルギー需要量が減少したことや再生可能エネルギーによる発電量が記録を更新したため、石炭消費量は微増にとどまった。④世界最大の石炭消費国である中国では厳格なコロナ対策によって、エネルギー需要が減少したものの、夏季の干ばつによって水力発電が減ったのを補うために、石炭火力発電量が増加した。⑤燃料炭の需要量が過去最高に達したため、2022年の国際石炭市場は需要が供給を上回る状況が続き、天然ガス価格の高騰と主要石炭輸出国の豪が悪天候だったため、石炭価格は、3月と6月に最高値を記録した。
 

原文

IEA (12/19)


2.Poseidon Principles:金融機関の海運事業者に対する投融資の透明性が拡大

Poseidon PrinciplesはGlobal Maritime Forum(GMF)の支援の下、金融機関の海運業界への投融資がCO₂削減目標に従って実施されているか、分析し公表するために、Citi/Societe Generale/DNBなど11社によって2019年に創設され、現在では世界の海運金融の70%以上をカバーする30の金融機関がメンバーとなっているが、12月15日、2021年における融資先海運会社のCO₂削減実績をまとめたPoseidon Principles Annual Disclosure Report 2022が、UMASの支援を受けて、GMFによって発表されたところその概要は以下のとおり。①本年は28の金融機関(昨年は23)から報告書が提出され、そのうち7の金融機関が、2050年までに海運から排出されるCO₂を50%削減するというIMOの目標に適合していた。②昨年度までは、各金融機関の全体の実績しか開示されてこなかったが、今年は、14の加盟金融機関から、旅客船と貨物船に分けた個別の貸し出し実績が公表された。③本年9月には、加盟金融機関はIMOの目標ではなく、パリ協定に従い今世紀末までの地球の気温上昇を産業革命以前と比較して1.5℃以内に抑制するという新たな目標に従って、海運金融を実施することに合意したが、新目標達成のための具体的な道筋について合意されていないため、今年の報告書では、新目標と各金融機関の投融資実績の比較は実施されていない。

原文

Poseidon Principles (12/19)


3.アントワープ港:欧州委員会がCO₂の液化・輸出ハブとして支援

欧州委員会は、アントワープ周辺の工業地域からCCSによって回収されたCO₂を回収・液化・一時貯蔵し、船舶に積載して、他国の海底貯蔵施設に輸出する公共プラットフォームを建設するのを支援するために、Connecting Europe Facility for Energy基金から、アントワープ・ブルージュ港湾庁等に対し、1.45億ユーロ(約210億円)を支援することを決定したと発表した。事業は具体的には、CO₂の液化技術を持つAir Liquide社とターミナル建設・運営の経験を持つFluxy社がジョイントベンチャーを立ち上げ、アントワープ港湾庁が、港湾地域内に必要な敷地を確保し、液化CO₂輸送船が着岸する新たな岸壁を建設する。同港は、2030年までに同港の港湾区域から発生するCO₂の量を半減する目標を立てており、この液化CO₂輸出事業はその目標達成の重要な手段で、初年度年間250万トンから始め、2030年には1000万トンの輸出を目標としている。

原文

アントワープ港 (12/19)


4.IMO:2025年5月から地中海が硫黄酸化物排出規制海域(SECA)に

2025年から地中海に硫黄酸化物排出規制海域(SECA)を設置することについては、2021年12月にバルセロナ条約のCOP22で合意され、6月のIMO/MEPC78でも承認されていたが、MEPC79において、2025年5月から地中海SECAを設定することが正式に決定された。これによって、地中海を航行する船舶の使用する燃料に含まれる硫黄分が、現在の0.5%以下から、0.1%以下に引き下げられることとなる。バルト海・北海・北米沿岸には2015年から同様のSECAが設置されている。SECAが実行されれば、燃料に含まれる硫黄分が0.1%以下の舶用ガスオイルを使用するか、スクラバーを使用するか、硫黄分ゼロのLNGを燃料として使用することになるが、多くの船舶が既にスクラバーを装備していることから、2015年に初めてSECAが導入されたときと比較して、影響は相対的に大きくないものと見込まれる。

原文

Ship & Bunker (12/19)