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国際海洋情報(2022年12月15日号)

1.EU:炭素国境調整課税制度の導入を最終決定

EU議会とEU理事会は12月13日、徹夜の交渉の結果、鉄鋼やセメントなどのエネルギー多消費型製品を対象に、EUよりCO₂排出規制が緩い国で製造された製品がEUに輸入される際に、CO₂排出規制のコストを負担しているEU域内の企業の同様な製品が競争上不利にならないように、CO₂排出削減コストに匹敵する炭素国境調整課税を導入することで正式合意した。対象製品は欧州委員会が提案した鉄鋼・セメント・肥料・アルミニウム・電力に加えて、欧州議会の要請で水素が追加された。EUの対象業界は、現在国際競争力を維持するため、EU ETSの下で、一定の無料CO₂排出枠が与えられているが、炭素国境調整課税制度が実施されると、WTOの規則を遵守するため、無料排出枠は段階的に廃止しなくてはいけないので、同制度をいつから適用するかは、ETSの見直し案の合意と併せて今週後半に合意される予定。

原文

Reuters (12/15)


2.G7:エネルギー転換のための国際的なClimate Clubを創設

12月12日、G7は国際的なClimate Clubを結成して、野心的な気候変動対策を追及する諸国の参加を求めることに合意したと議長国の独が発表した。G7はOECDとIEAに共同でClimate Clubの事務局を務めることを要請した。同クラブの結成によって、炭素中立で生産されたグリーンの鉄鋼などの環境対策推進の上で重要な素材が世界的に市場で到達できることを加速することなどを目標とする。また、同クラブは、エネルギー転換のための支援が必要な諸国と協力協定を締結し、これらの諸国を支援することも目的とする。

原文

Reuters (12/15)


3.液体有機水素キャリアの輸出入でスコットランドとロッテルダム港が連携

EUは2030年までに約10GWの水素を輸入することを目指している一方、スコットランド政府は同年までに5GWの水素を生産することを目標としており、現在欧州のエネルギー輸入の13%を取り扱い、欧州の水素ハブとなることを目指しているロッテルダム港は、スコットランドの再生可能エネルギーで生産された脱・低炭素の水素の液体有機水素キャリア(LOHC)を利用して、ロッテルダム港に輸入するためのコンソーシアム(日本の千代田化工も参加)を結成したと12月14日発表した。コ ンソーシアムの正式名称はLOHC for Hydrogen Transport from Scotland (LHyTS)で、LOHCとしては具体的には大規模輸送に適したメチルシクロヘキサン(MCH)を使用する。

原文

ロッテルダム港(12/15)


4.HSBC銀行が石油・天然ガスの新たな開発への投資中止を表明

欧州で最大の民間金融機関であるHSBC銀行は、2020年に、新たな投融資によって新たなCO₂の排出を生まないとする炭素中立宣言を行い、併せて1兆ドル(約137兆円)をクリーンエネルギーに投資すると表明したが、実際には、2021年中に新たな石油・天然ガス開発に87億ドル(約1.2兆円)の投資を行ったため、今年に入ってから、同行は強い非難を受けていた。この結果、同行が科学的に世界を代表する機関とエネルギー政策を検討したところ、2050年の炭素中立を実現するという国家戦略の下では、現在生産中の石油ガス田で必要な需要量を供給できることが予測されたので、今後新たな石油ガス田の開発には投資しないと12月15日発表した。一方で、既存の石油ガス田については、特に天然ガスは脱炭素への転換期に果たすべき役割があるとして投融資を続けることも表明した。英国政府は北海における新たな石油ガス田開発の競争入札を実施すると9月に発表したばかりで、他の金融機関がHSBC銀行の決定に追従するかどうかは不透明。

原文

BBC (12/15)