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国際海洋情報(2022年12月10日号)

1.仏:再生可能エネルギー整備の遅れによって年間60-90億ユーロの損失

持続可能な開発と国際関係研究所(IDDRI)など複数の研究所が共同で12月8日に発表した報告書の概要は以下のとおり。①仏政府は、EUの再生エネルギー指令に基づき2020年までに最終エネルギー消費量の23%を再生可能エネルギーにすることに合意しているが、現在はまだ19%にとどまっている。②この再生可能エネルギーが足りない分(約70TWh)を埋め合わせするために、年間60億から90億ユーロに相当する天然ガスを輸入している。③2030年までに再生可能エネルギーの比率を54%まで引き上げる目標を達成するためには、年間70億から110億ユーロを毎年投資する必要がある。④さらに、仏は自国の目標達成のために、イタリアなどの他のEU諸国が余分に発電した再生可能電力をstatistical megawattsとして購入する資金としてさらに5億ユーロが必要となる。⑤また、再生可能エネルギー比率の目標は法的拘束力を持つので、目標を達成できなかった場合、欧州委員会から制裁措置を受ける可能性もあり、制裁金の額は上記statistical megawattsと同程度になる可能性がある。

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Euractiv (12/10)


2.COP15:加首相が先住民主導の生態系保存事業に8億カナダドルを支出表明

12月7日、中国とCOP15を共同主催する加首相は、今後7年間にカナダ国内のほぼエジプトと同じ面積の地域で、先住民が主導で実施する生態系保存活動に8億カナダドル(約800億円)の支援を行うと発表し、中国・ロシア・ブラジル・米国を名指しして、COP15の成功のためにはこれらの巨大な面積と海岸線を持つ国々が保護区域を拡充することが重要で、最終合意文の交渉に当たっては、カナダと同じ高いレベルの支持が必要と発言した。5日に新たな合意文書の案文が提示されたが、22以上の目標と4つのゴールについて討議が行われている。G20において習主席が加首相を公の場で非難し、2019年に実施されたカナダの連邦選挙に中国が干渉したというような疑いが流れる中で、共同主催国の中国とカナダの関係は緊張しているが、加首相は中国の人権問題や法治の問題については引き続き問題としていくが、中国と連携して進めなくてはいけない分野もあると語った。

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The Guardian (12/10)


3.McKinsey:海運会社が脱炭素化を進めるためのステップ

標記ステップの概要は以下のとおり。①目標設定:規制上求められる必要最低限のCO₂削減を目指すのか、より野心的な脱炭素化計画を目指すのか決定する。②現状把握:現在運航している船舶がどれだけCO₂を排出するのか把握し、設定された目標を達成するためにどういうペースでCO₂を削減する必要があるか明確化する。③具体的な行動計画:既存船については定期検査のタイミングで設備の改善を図り、新造船の建造に当たっては、導入予定の代替燃料に対応できるようにし、減速運航が必要な場合は用船契約などを見直す。代替燃料については、将来的な安定供給を確保するため、燃料製造事業者と燃料供給事業者と連携し、代替燃料の供給を受けるネットワークを拡充する。④実行と検証:脱炭素化転換のための専門部署を設けて、脱炭素化計画の実行状況と改善の必要性を検証する。

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McKinsey (12/10)


4.米国西岸初の洋上風力発電は欧州勢が独占的に落札

12月6日から7日にかけて実施された、米国の西岸では初めての洋上風力発電の競争入札は、カリフォルニア州北部と中央部の5つの海域(合計約15万ha)について実施されたが、既に米国東岸の洋上風力発電事業で実績のあるノルウェーのEquinorや仏のEngieなど欧州勢が独占的に落札した。1エーカー当たりの落札価格は、2028ドルと、今年、米国東岸のNew YorkとNew Jersey沖の水深が浅い海域で実施された落札価格である9000ドルより大幅に安い価格となったが、水深の深い西岸ではまだ技術的に十分に確立していない浮体式を採用する必要があること、カリフォリニア州は東岸諸州のような電力買い取り保証を提供していないこと、世界経済の減速と資金調達コストの上昇が原因と考えられる。現在世界では、着床式洋上風力発電の合計発電量は50GWに達しているが、浮体式については約100MWの規模しかない。米国政府は2035年までに500万個の家庭に電力が可能な15GWの浮体式洋上風力発電設備を建設することを目指すと発表している。

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Reuters (12/10)