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国際海洋情報(2022年12月9日号)
1.英国:数十年ぶりに新たな炭鉱開発を認可
英国政府は数十年ぶりに、12月7日、新たな石炭鉱山の開発を認可した。新たな鉱山で生産されるのは製鉄業に必要な原料炭で、発電に用いられる燃料炭ではなく、約500人の新規雇用を生むとされている。この事業は、2014年に計画が発表されたのち、英国政府自身の独立した気候変動員会や野党だけでなくGreenpeaceなどの環境団体から強い反対を受けていた。石炭は炭素中立となる方法で生産され、生産量の80%は欧州市場に輸出される予定。石炭を燃焼させたときに発生するCO₂は、気候温暖化の最大原因で、地球の温暖化抑制目標を達成するためには、各国に石炭の利用をやめさせる必要がある。今回許可された鉱山は、生産開始までに2年間かかり、50年間の操業を予定している。英国には最盛時には約3000の炭鉱があり、120万人の鉱夫が働いていたが、最後の炭鉱は2015年に閉山されていた。
原文
Reuters (12/9)
2.COP15:企業活動が生物多様性に与える影響を評価し開示することが重要
COP15の政府間交渉が12月7日に始まったが、各国はどの目標を優先的に扱うか、企業にどのように環境リスクについて情報開示を求め、企業の活動を規制するかなどについてコンセンサスができていない。国連環境計画(UNEP)によれば、生物多様性の保全のためには2025年まで毎年3840億ドル(約53兆円)の投資が必要とされるが、再生可能エネルギーなどへの投資と比べて、生物多様性の保全を目的とした事業への投資は依然として限られており、投資を拡大するためには、目指すべき目標とそれに応じて企業が取るべき行動の明確化が必要である。多くの企業がパリ協定に従い、排出するCO₂の量を削減する目標を立てている一方で、半分以下の企業しか生物多様性保全に関する目標を立てていないばかりか、各企業の活動によって生物多様性に与えている影響についても認識していない。従って、大企業に対して、企業活動によって生物多様性に与えている影響を評価し開示させること義務付け、企業活動による生物多様性に与える影響に関する情報を収集することが、生物多様性を保全するための重要な一歩となると投資家は考えている。
原文
Reuters (12/9)
3.欧州議会:航空へのEU ETSの適用範囲を引き続きEEA域内のものに限定
12月7日、欧州議会は、航空分野へのEU ETSの適用範囲を引き続き、EEA域内の飛行に限定し、EU域外の飛行については、ICAOによるCORSIAに委ねるが、欧州委員会は2026年7月までにCORSIAによって航空分野のCO₂排出削減が有効にできているか検証することとなり、またCORSIAに加盟していない国との間の飛行については、2027年からETSの適用対象とすることで合意した。さらに、EEA域内でも、ある国の本土と離れた領土(例えばマドリッドとスペイン領カナリア諸島のテネリフェ)を結ぶ飛行については新たにETSの適用対象から除外することにも合意した。ETSの対象とならない長距離路線の飛行数は全体の約6%に過ぎないが、CO₂とNOxに排出量では、全体の約半分を占めている。2012年にもEEA域外路線にETSを拡大適用することが検討されたが、中国と米国がエアバス機の発注を取り消すなどの報復措置をちらつかせたため、断念に追い込まれた経緯がある。
原文
Euractiv (12/9)
4.Maersk Mc-Kinney Moller Center :Maritime Decarbonization Strategy 2022
Maersk Mc-Kinney Moller Centerが12月8日、標記報告書を発表したところその概要は以下のとおり。①世界の外航・内航海運合計で年間約3億トンの化石燃料を用いて、12.6EJのエネルギーを消費しているが、地球の気温上昇を1.5℃以内に抑制するためには、2030年までに化石燃料によるエネルギー消費を約6EJ以内に抑制する必要がある。②船舶のエネルギー効率を8%、或いは2030年まで1%ずつ改善すれば、2400万トンの燃料油と0.1GtのCO₂と1EJのエネルギーを節約することができる。③エネルギー転換のためには、世界共通の目標・基準・規制が必要で、IMOはwell-to-wakeベースの野心的で完全なGHG削減目標に合意する必要がある。④海運の脱炭素化が不可避であることを認識して、海運会社は先回りして将来の戦略を立てる必要がある。⑤海運脱炭素化に必要な代替燃料の生産・供給施設に対する投資を促進するため、国や地方自治体は明確な整備計画を作成すべき。⑥先駆者たちは、世界的な基準や規制ができる前に、脱炭素化を進めなくてはならないので、そのコスト・便益・リスクを分散するための公民連携が必要。
原文
Maersk Mc-Kinney Moller Center (12/9)