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国際海洋情報(2022年12月8日号)

1.IEA:エネルギー危機で再生可能エネルギーの整備が加速

12月6日に国際エネルギー機関(IEA)は、再生可能エネルギーに関する2022年の年次報告書を発表したところその概要は以下のとおり。①世界で2022年から2027年の間に、整備されることが予想される再生可能エネルギー発電能力は、現在世界第1位の再エネ発電国である中国の全再エネ発電量に匹敵する2400GWとなり、1年前の予測と比較して、エネルギー危機の影響で、増加のペースが30%も加速された。②今後5年間に新設される発電施設の90%以上は再生可能エネルギーとなり、2025年初頭までに、石炭を抜いて、発電源として最大となり、過去20年間に建造された再生可能エネルギー発電施設と同じ量が、今後5年間に建設される見込み。③欧州に限定すれば、ウクライナ戦争の影響で、今後5年間に新設される再生可能発電施設の量は、過去5年間に増設された量の2倍となる見込み。④中国政府の最新の14次5年計画によれば、2022年から2027年の間に世界で新設される再生可能エネルギー施設の約半分が中国国内で建設される見込み。⑤発電事業としての太陽光発電と陸上風力の発電コストは、世界のほとんどの国で、化石燃料発電等の他の発電方法と比較して、最も安い選択肢となり、2022年から2027年の間に、太陽光発電量は3倍となり、石炭を抜いて世界で最大の発電源となる。

原文

IEA (12/8)


2.米国西岸で初めての浮体式洋上風力発電のための開発権入札が実施される

米国は欧州諸国に比べて洋上風力発電の開発に立ち遅れているが、バイデン政権は、米国のあらゆる海域で、洋上風力発電の開発を強力に推進し、特に浮体式洋上風力発電の分野で世界の先頭に立つために、12月6日から7日にかけて、米国西岸で初めて実施された洋上風力発電の開発権に関する入札は、落札価格合計で7.6億ドル(約1000億円)に達した。これまで、米国で実施された洋上風力発電の関連の入札は、着床式の洋上風力発電施設の建設が可能な米国東岸の水深が浅い海域で実施され、本年も海洋エネルギー管理局(BOEM)はNew YorkとNew Jersey沖で2回競争入札を実施し、欧州のエネルギー企業が中心となって落札し、2回のうちの1回はこれまでの落札額合計では最高額の44億ドル(約600億円)を記録している。今回入札が実施されたカリフォルニア州は2045年までに発電部門を脱炭素化することを目標としており、今回入札が実施された5海域(約15万ha)に建設される浮体式洋上発電施設によって、最終的には150万戸分の家庭に電力を供給できる見込み。

原文

Reuters (12/8)


3.仏政府:鉄道で2時間半以内に到達できる地点への国内短距離航空便を禁止へ

仏政府は鉄道で2時間半以内に到達できる短距離国内航空路線8ルートの運航を禁止することについて、欧州委員会に申請していたが、欧州委員会は代替鉄道ルートがあることと、短距離国内航空便の禁止によって、航空会社間の競争を阻害しないことを条件として仏政府の政策を12月2日に認可した。この条件に従い、実際に廃止されることが予想されるのはパリのオルリー空港とリヨン・ナンテ・ボルドーを結ぶ3路線となる見込み。認可期間は3年とされ、2年後に仏政府が政策の有効性を再検討する予定。今回の措置によって、CO₂排出削減を進めるだけでなく、鉄道事業者のサービス改善意欲を促進することも期待されている。環境団体は鉄道で移動可能な時間が2時間半では短すぎ、対象を広げるべきとしつつも、EUが仏政府のイニシアティブを認め、他の諸国でも同様な動きが広がることを歓迎している。

原文

Euractiv (12/8)


4.米英政府:Energy Security and Affordability Partnershipを結成

上記パートナーシップの主たる目的は以下のとおり。①過去5年間の平均と比べて、この冬の英国内における天然ガスの最終消費需要を8%減少させるために、エネルギー効率の向上について両国が協力する。②英国政府はエネルギー効率化タスクフォースを立ち上げ、建物と産業におけるエネルギー消費量を2021年実績比で、2030年までに15%削減する。英国政府は低所得層の家庭のエネルギー効率を改善するために、15億ポンド(約2500億円)をかけてHelp to Heat事業を実施し、さらに追加的なエネルギー効率化対策について、2028年までに60億ポンド(約1兆円)を支出する。米国政府も低所得者層が住む地域のエネルギー効率化と再生可能エネルギーの導入のため300億ドル(約4兆円)を支出する。③短期的なエネルギー安全保障に果たす天然ガスの役割を踏まえ、米国から英国と欧州市場へのLNGの供給を強化する。④安全で信頼性のおけるエネルギー源としての民生用原子力の利用を促進し、エネルギー源の安定確保を図る。⑤G7やG20において、またCOP28に向けて、両国は新興国市場や途上国における化石燃料への将来的な依存度を削減し、既存の気候変動対策が後退するのを阻止し、エネルギー部門における炭素中立化目標の強化と早期達成を図る。

原文

The White House (12/8)