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国際海洋情報(2022年12月6日号)

1.欧州委員会委員長:米IRA法に対抗して国家助成規則を簡素化へ

米国のInflation Reduction Act (IRA)においては、米国の消費者が電気自動車の新車・中古車を購入し、ヒートポンプに暖房を切り替え、調理器具を電化する際に、圃場金を受けることができるとされているが、いくつかのEU加盟国は、IRAによる投資優遇措置が、特にエネルギーや自動車産業において、EU企業の投資を欧州から米国シフトさせ、欧州の企業に不利益となり、米国=欧州間の貿易紛争を起こすのではないかと懸念しているが、欧州委員会委員長は、EUも米国に対応して、国家助成に関するEUの規則を改正して、エネルギー転換のために公的資金をつぎ込み易くすべきであり、欧州委員会は米国とIRAの中の懸念される点について、協議を行い解決しなくてはいけないと語った。

原文

BBC (12/6)


2.G7/EU/豪による露産原油に対する上限価格制限が発動

EU・米・加・日・英は既に露から自国への原油の輸入を禁止しているが、それに加えて、露から第三国への1バレル60ドルを超える原油の輸送については、G7とEUのタンカー・保険・金融の供与を禁止することによって、露産原油の取引価格に上限価格を設ける制度の運用を5日から開始した。世界の海運会社や海上保険会社の多くがG7とEUにあることから、上限価格を超える露産原油の海上輸送は困難となる。この制裁措置に対して、世界第2位の石油輸出国である露は、上限価格制度の受け入れを拒否し、たとえ減産しても、制裁参加国には原油を販売しないと発表し、現在、同国の会社・商社に対して、上限価格参加国の企業との取引を禁じる大統領令が準備されている。12月2日の露産原油の市場取引価格は1バレル67ドルで、上限価格と大きな乖離は無く、上限価格で取引を続けても、ロシアには依然メリットがあるものとEUとG7は見ている。

原文

Reuters (12/6)


3.英国の内航海運の炭素中立化に930億ポンドが必要

UMASとロイズ船級協会は、英国の内航海運が脱炭素化を達成するために930億ポンド(約15.4兆円)が必要とする報告書を発表したところその概要は以下のとおり。①930億ポンドの約半分は低・ゼロ炭素の船舶への更新に必要となる投資資金で、残りの半分が、港湾における代替燃料供給施設や陸上給電施設などのインフラの整備に必要となる。②フェリーとRoRo船は隻数ベースでは、内航船全体の10%に過ぎないが、CO₂排出量で見ると全体の50%を排出しており、優先的に脱炭素化を進める分野となる。③洋上リグと同様今後拡大が見込まれる洋上風力発電施設関連の船舶も優先的に脱炭素化を進める対象となる。④資金供給先としては、既存の投資家からではなく機関投資家からの投融資が必要で、投資促進のため、政府は論理的で整合的な戦略を立て統合的な政策を実施する必要がある。

原文

The Maritime Executive (12/6)


4.蘭:北海の洋上風力で生産するグリーン水素供給のネットワークを構築

北海における洋上風力発電の開発とその電力によって製造されるグリーン水素は、関係国のエネルギー転換とエネルギー自給率の向上のため、重要な役割を果たすことが期待されているが、沿岸国であるオランダ・ベルギー・デンマーク・ドイツは3月18日にEsbjerg宣言を採択し、4か国合計で北海において、2030年までに65GW以上、2050年までに150GWの洋上風力発電施設を建設し、この電力を利用して、グリーン水素を20GW生産する目標を立て、北海を欧州のグリーン発電所として、多数の洋上風力発電事業を連結して、電力とグリーン水素供給のための大規模なネットワークを創設することに合意した。これを受けて、オランダは2040年までに50GW、2050年までに70GWの洋上風力発電施設を建設することを目標とし、併せて、蘭と独で大規模な天然ガス供給パイプラインを運営するGasunieに、既存の天然ガス供給のインフラを活かすことも含め、北海の洋上水素のネットワークを構築することを委託すると、担当大臣が12月2日議会で表明した。

原文

Offshore Energy (12/6)