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国際海洋情報(2022年12月3日号)

1.UNEP:自然を基盤とした解決策に対する投資を2025年までに倍増する必要

12月5日から、モントリオールで開催される国連生物多様性会議(COP15)においては、2030年までに生物多様性の減少を止めて回復に転ずるためにPost-2020 Global Biodiversity Frameworkに合意する予定だが、この枠組みの実現のためには自然を基盤とした解決策(Nature-based solutions:NbS)に対する投資を、現在の年間1540億ドルから、2025年までに年間3840億ドル、2030年までに同4840億ドルまで引き上げる必要がある。現状では、NbSに対する資金の83%は公的資金で賄われているが、公的資金供与が大幅に増えることは期待薄であり、現在年間260億円規模の民間投資を、今後毎年17%拡充し、炭素中立に対する投資と自然に対して有益な投資を統合する必要がある。一方で政府は、NbSに対する投資の3倍から7倍の規模で、エネルギー分野では年間3400から5300億ドル、農業分野では年間5000億ドルの自然に有害な政府支援を続けている。

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UNEP (12/3)


2.米仏両大統領がIRA法によってEU諸国が不利益を受けないことを確認

米国を公式訪問中の仏大統領は、米国のInflation Reduction Act (IRA)による米国製品優先政策によって、computer chipsや再生可能エネルギー発電施設の部品の分野において、米国製品が優遇される結果、欧州製品が不利益を被ることについて、強く改善を申し入れた。米国大統領は12月1日実施された共同記者会見において、欧州諸国が不利益を被らないような微調整を実施することが可能であると表明した。中間選挙で下院は共和党が支配していることから、IRA自体の改正は困難だが、大統領令によって、EU諸国が不利益を受けない方法を手当てする見込み。両国はIRAによって発生したセミコンダクター・バッテリー・水素などの再生エネルギー関連分野における貿易紛争を処理するための、共同タスクフォースを米国とEUで立ち上げることに合意した。

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Reuters (12/3)


3.IEA:世界エネルギー危機によってヒートポンプの普及が拡大

11月30日、IEAは「ヒートポンプの将来」と題する特別報告書を発表したところその概要は以下のとおり。①ヒートポンプは、エネルギー効率が極めて高く、地球温暖化対策にも有効だけではなく、家庭の光熱費負担を減らし、各国の輸入化石燃料への依存度を引き下げる解決策であり、近年、生産コストが下がり、促進策も強化されてきたために、ここ数年市場が急激に拡大している。②2021年には、世界のヒートポンプの売上高は15%も拡大し、過去10年間の平均販売額の2倍の水準となり、特に欧州のいくつかの国では、2022年上半期に、対前年同期比2倍以上と大きく販売量が拡大している。③EU域内における2021年の年間売上高は200万ユーロ(約2.8億円)だったが、各国がCO₂を計画通り削減し、エネルギー自給率を高めることに成功すれば、2030年には700万ユーロ(約9.9億円)に拡大する見込み。④EU域内で使用される天然ガスの1/3は現在暖房用に使用されているが、2025年までにヒートポンプの普及によって、70億bcmの使用を節約できる見込みで、2030年までにCO₂排出量を55%削減するというEUの目標が達成されれば、ヒートポンプによる天然ガス節約量は、最低で210億bcmに拡大する見込み。

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IEA (12/3)


4.IEA:2022年はエネルギー価格高騰の影響でエネルギー効率が上昇

12月2日、国際エネルギー機関(IEA)が発表した2022年エネルギー効率年次報告書の概要は以下のとおり。①建物断熱改修・公共交通機関や電気自動車の充電インフラなどエネルギー効率向上のための投資は、2022年に世界で対前年比16%増の5600億ドル(約75兆円)となった。②エネルギー効率で見ると、2022年は2021年より2%改善し、過去5年間の平均改善率の約2倍となった。③2020年からの建物の断熱化などのエネルギー効率改善行動によって、IEA加盟国における電気料金の総計は、エネルギー効率化をしなかった場合と比べて、6800億ドル(約91兆円)の節約となった。④具体的なエネルギー効率事例としては、世界で販売される新車の1/8が電気自動車となり、欧州だけでも2022年に300万台のヒートポンプが販売された。⑤各国の政策で見れば、米国のインフレ削減法(IRA)、EUのREPowerEU、日本のGX戦略などによって、今後、建物・自動車・製造業のエネルギー効率の向上が進められる見込み。

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IEA (12/3)