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国際海洋情報(2022年12月1日号)

1.英国政府:低所得者層の住居の断熱性能を高めるために新たな補助制度を導入

英国政府ビジネス・エネルギー・産業戦略(BEIS)省は、エネルギー効率が低い住宅に住む低所得者が、住宅の断熱性を向上させるために、ECO+制度の下、来年春から総額で10億ポンド(約1660億円)の補助制度をスタートさせる。具体的には、屋根裏のロフトや二重壁の間の隙間の断熱性を高めるのに、平均で1戸当たり1500ポンド(約25万円)かかるが、この工事費を支援するとともに、1800万ポンド(約30億円)をかけて、どうしたら快適性を損なわずに、家庭のエネルギー使用量を減らせるか、キャンペーンを実施する。具体的な対策としては①暖房に使用される温水の温度を75℃から60℃に引き下げる。②使っていない部屋のラジエター(温水暖房機)を切る。③窓やドアに隙間風テープを張る。などが奨励されている。Energy Savings Trustによれば、家屋の断熱対策を怠ると、最大で45%の屋内の熱が失われる。標準的な3ベットルームのsemi-detachedの家で、隙間風対策と壁と屋根裏の断熱対策を実施すれば年間で約555ポンド(約9.2万円)の暖房費が節約できる。

原文

BBC (12/01)


2.EU:米国に対抗して再エネ発電機器に対するローカルコンテント導入を検討

WTOによる伝統的な自由貿易の原則では、各国政府が補助金の支給要件として、一定割合以上の国産原料・部品等を使用するlocal-contentを義務付けることは、保護貿易主義を助長するとして禁止しているが、米国が成立させたInflation Reduction Actにおいては、local-contentを条件として、3690億ドル(約51兆円)の補助金・減税が付与されることから、米国内においてEU製品が米国製品に対して不利となることによって、再生可能エネルギー関連の投資が欧州から米国に大きく逃避するのではないかという懸念を仏大統領は表明し、米国に対抗してEUもBuy Europeanの名のもとにlocal-contentを導入することを提案している。これに対して、欧州最大の工業国であり、自由貿易を志向してきた独は対抗措置をとることに慎重だったが、同国の経済大臣は、11月29日、同国も欧州委員会と仏と連携を取って、WTOの規則上、例外が認められる「環境上の配慮」や「国家安全保障上の理由」を援用して、WTO規則と整合性を持たせながら、早急に米国への対抗策を準備していく意向を示した。

原文

Politico (12/1)


3.EU加盟国は排出権販売収入より多額の価値にある無料排出枠を供与

WWFが2013年から2021年までのEU ETSの具体的な使い道を分析した調査報告書を発表したところその概要は以下のとおり。①EU加盟国は当該期間中、885億ユーロ(約12.6兆円)の排出権売却収入を得た。②このうち250億ユーロ(約3.6兆円)は、各国政府の一般歳出に使用され、環境政策に使用されたのは72%に過ぎなかった。③この72%の中でも、124億ユーロ(約1.8兆円)は、排出権購入代金の補償・石炭火力発電の近代化・石炭から天然ガスへの転換・化石燃料による暖房システム・ディーゼル自動車などの地球温暖化対策に役立たない、或いは逆行する施策に使用された。④この結果、ETS収入の58%しか本当の地球温暖化対策に使用されていない。⑤さらに当該期間中に、全体の排出量の53%以上にあたる総計985億ユーロ(約14兆円)分の無料排出枠が、無条件で割り当てられており、この結果、排出権の平均コストがトン当たり14ユーロ(約2000円)だったにもかかわらず。無料排出枠を考慮すると実質のコストはトン当たり6.6ユーロ(約940円)に過ぎなかった。

原文

WWF (12/1)


4.欧州議会:海運に関するEU ETS適用の概要に大筋合意

標記合意の概要は以下のとおり。①海運をEUの排出権取引制度(EU ETS)の適用対象にすることによって、自動車の電動化による排出削減量の2倍に当たる約1.2億トンのCO₂排出が削減される。②EU域内の海運活動の100%、EUとEU域外との間の海運活動の50%に適用される。③排気量全体に対するETSの適用率は、2025年に40%、2026年に70%、2027年に100%と段階的に引き上げられるが、この数字は今後の交渉で変更される可能性がある。④メタンや亜酸化窒素などのCO₂以外のGHGの排出に対しては、2026年から適用される。⑤海運分野からのETS収入のうち、2000万ユーロ(約28億円)は、港湾・海運分野の脱炭素化対策の資金として確保される。⑥適用の対象となる船舶は5000GT以上とするが、脱法行為として4999GTの船舶が増えないかなどを含め、数年後に、適用対象船舶の大きさについては再検討を実施する。

原文

Euractiv (12/1)