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国際海洋情報(2022年11月23日号)

1.WSC:EU ETSが適用されるCO₂排出量の算定にwell-to wake方式の採用を要求

世界海運評議会(WSC)・デンマーク/オランダ/スウェーデン船主協会などは、現在、EU排出権取引制度(ETS)の最終改正案を3者協議中の欧州理事会・議会・委員会あてに標記公開書簡を、11月21日送付したところその概要は以下のとおり。①Renewable Fuels of Non-Biological Origins(RFNBOs)については、再生可能電力から生産されたeメタノールを燃料とするエンジンは既に実在し、再生可能電力から生産されたeアンモニアを燃料とするエンジンも試験段階にあるが、これらの燃料の生産と供給体制を大幅に拡充するための投資が必要であり、この投資を促進するためにも政策当事者が、ETSの適用にあたっては、燃料の生産・輸送・燃焼といったすべての段階から排出されるGHGの排出量を総体的に把握するライフサイクルアプローチをとることを明確にする必要がある。②EU ETSを海運分野に拡大する現在の案では、船上で燃料が燃焼するときのGHG排出量のみ算定されることになっているが、この結果、燃料生産時には多量のGHGを排出するが、船上では排出量が少ない燃料の使用を促進してしまうことになる。

原文

WSC (11/23)


2.中国:CO₂の排出量が減少するものの削減目標達成には遠く

中国は世界の年間CO₂排出量の約1/3を排出しており、中国がCO₂排出削減に成功できるかが、世界的気候変動抑制の重要なカギとなっており、再成可能エネルギーの開発や電気自動車の導入などでは目覚ましい成果を上げているものの、石炭火力発電・製鉄業などの分野で、必要とされるCO₂削減目標の軌道を外れているほか、重工業主導型の経済成長によって、エネルギー消費量も依然として急速に増加している。中国は、2030年までにCO₂の排出量をピークアウトするという目標を達成することが期待されるものの、依然として新たな石炭火力発電所やエネルギー多消費型のインフラの建設を継続しており、CO₂の排出量の大幅増加が続くため、ピーク時の排出量がこれまでの予想より高いものとなる結果、2060年炭素中立目標の達成が困難になることが懸念されている。一方で、Global Carbon Projectは、中国の2022年のCO₂排出量は対前年比0.9%減少すると予測しており、再生可能エネルギーなどの拡大によって、エネルギー需要の拡大分を吸収し、同国のCO₂排出量が既にピークアウトしている可能性もある。

原文

Reuters (11/23)


3.MEPC 79:炭素回収貯留(CCS)の取り扱いについて議論へ

12月12日から開催されるMEPC 79に、韓国政府は船上に炭素回収貯留(CCS)装置が設置される場合、EEDI/EEXI/CIIに関する既存の計算方法を変更することを求めることを提案した。韓国政府はゼロエミ船技術が経済的に利用可能になるまで、GHGを大幅に削減する持続可能な技術的手法を認めるべきで、CCSはコスト的に見ても既存の化石燃料を使用しながらGHG排出量を削減する効率的な手段であるとしている。中国・リベリア・ICSも共同で、CCS技術の導入を認めるべきと提案している。Waltsillaによれば、初期投資と運用コストを含めCO₂1トン当たり50-70ユーロ(約7300-10200円)で回収できる船上のCCS装置の導入は可能としている。但し、船上で回収されたCO₂を貯留するスペースが必要となるため、CCSの利用は長距離の航海に導入するには限界がある。

原文

Ship & Bunker (11/23)


4.欧州委員会:大気中からのCO₂の回収を認証する関連規則を提案へ

EUが2050年炭素中立を目指すにあたって、農業や鉄鋼・セメントなどCO₂排気量をゼロにできない分野から排出されるCO₂をオフセットするために、炭素を回収する量を増やす必要がある。現在、森林・土壌・海洋といった自然現象によって大気中のCO₂は回収されており、植林やcarbon farmingを実施することでCO₂回収量を増加させることができるが、大気中から人工的にCO₂を回収するDAC技術が開発中で、さらに回収したCO₂を固体または液体で貯蔵する技術開発も必要となる。欧州委員会は、11月30日に、大気中から回収したCO₂のクレジットを認証する規則の案を提案する予定だが、大気中からのCO₂の回収を促進する前提として、回収が真正(genuine)・長期間保存(long-lasting)可能・信頼できる透明性の確保できる方法で監視でき、環境に対して悪影響を与えないことが保証される必要があるとしている。欧州委員会の規則案では、技術の成熟度・経済効率・監視コストの観点から、大気中からのCO₂の回収を①恒久的な除去②生産物の中にCO₂を保存③carbon farmingの3類型に分けて規制する予定。

原文

Euractiv (11/23)


国内情報

1.jera:燃料アンモニアの輸送に向けた日本郵船および商船三井との協業について
原文

11月21日、jera


Webinar 情報

1.持続可能なアジア太平洋に関する国際フォーラム(ISAP2022)(Nov.28-Dec.5)
ISAP

2.Energy Transition Asia Pacific 2022 (Nov.30th -Dec.1st)
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