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国際海洋情報(2022年11月18日号)

1.2022年の化石燃料からのCO₂の排出量が史上最大に

Global Carbon Projectが発表した報告書によれば、2022年に化石燃料から排出されるCO₂の量は対前年比1%増の366億トンと史上最大になる見込みで、地球の気温上昇を1.5℃以内に抑制するために、2030年までに、CO₂の排出量を半分に削減しなくてはいけない目標と真逆の結果となる。一方で、世界の森林の量はゆっくりと増加しているため、化石燃料からの排出量の増加をほぼ相殺し、大気中へのCO₂排出量は2015年以降ほぼ平準化してきている。しかし、CO₂の排出量自体が減少に転じない限り、大気中のCO₂の総量は増え続けることとなる。2022年に化石燃料からのCO₂排出量が史上最大になる主たる原因は、パンデミック回復後に国際航空輸送の増加が続いているため。2050年に炭素中立を達成するためには、コロナの影響で排出量が急減した2020年と同じペースでCO₂排出量の削減を継続する必要がある。石炭からのCO₂排出量も2004年以来の最大となるが、主たる原因は中国ではなくて、インドとEU域内の排出量が増加するため。天然ガスから排出されるCO₂排出量は過去最大となった2021年から横ばいとなる。世界最大のCO₂排出国である中国からの排出量は、ゼロコロナ政策と建設業界の不況の影響で、2022年は対前年比1%の減少となる見込み。

原文

The Guardian (11/18)


2.COP27におけるGreen Shipping Corridorsなど海運脱炭素化関連の主要な動き

標記の概要以下のとおり。①米・英・蘭・ノルウェーが4か国の間でGreen Shipping Corridors(GSC)を形成することに合意。②英・米は両国の専門家によるGSC Task Forceを立ち上げ、重要な研究開発や回廊実現を早急に実現するための重要な事業を実施。③英国はZero Emission Shipping Missionとともに、GSCを開設するために必要なclean energy port/ zero-emission vessels/ green energyを進展するための既存の障害を排除するための行動計画を発表。④豪はシンガポールとGreen Economy Agreementを締結し、GSCの開設と、海上や港湾における船舶からCO₂排出の削減・代替燃料供給インフラの基準などの海運脱炭素化技術開発について連携することを合意。⑤米国とノルウェーが主導してGlobal Shipping Challengeを結成し、マースクがスペイン政府と合意した大規模なgreen fuelを生産する事業・DP Worldが今後5年間5億ドル(約700億円)をかけて同社の事業から発生するCO₂排気量を70万トン削減する事業・LA/LB港とシンガポール港との間にgreen & digital shipping corridorを開設する事業など合計で40事業を実施。

原文

Hellenic Shipping News (11/18)


3.EUが途上国も化石燃料の使用削減に取り組むことを条件に妥協案を提出

気候変動による洪水や干ばつなどの自然災害の矢面に立たされて途上国に対してどのように補償を行うかについて、COP27の交渉は膠着状態に陥っているが、この状況を打破するために、EUは17日の深夜、途上国も石油・天然ガス・石炭の使用の段階的停止を実施することを条件に、loss and damageの制度創設について協議するという妥協案を提出した。一方、18日の早朝に議長国が提案した最終公式合意案では、EUが条件としている化石燃料依存からの段階的な撤退についての書きぶりが弱く、EUの提案が取り入れられてはいない。18日は交渉の最終日だが、交渉は週末まで延長される見込みで、昨年のCOP26で合意されたCCUS処理されていない石炭の使用の段階的停止をベースとして、妥協の道が探られる見込み。最終合意案には、ロシアのウクライナ侵攻による前例のない規模のエネルギー危機についても、初めて言及されている。

原文

Bloomberg (11/18)


4.IRENA:Accelerating Hydrogen Deployment in G7

11月16日、国際再生可能エネルギー機関(IRENA)が発表した標記報告書の概要は以下のとおり。①G7諸国が2050年炭素中立を目指す結果として、同年までに水素の消費量が、現在の4倍から7倍に拡大することが可能。②化学・製鉄・長距離航空/海運など完全電化が難しい分野における水素の需要は増え、再生可能エネルギーの発電コストが継続的に減少していくことから、グリーン水素の価格競争力も強まる。③G7諸国は、現在世界のエネルギー需要量の約30%を占めており、2020年における水素需要の合計は2420万トンと、世界の需要量の約28%を占めているが、その多くが化石燃料から生産されている。④2010年から2020年の間に、全世界で登録された水素関連の特許は6.5万件に上るが、その半分がG7諸国から登録されたもので、その中でも日本から出願された特許数が2/3を占める。⑤2021年末の時点で、世界の電解槽製造事業者の約半数が欧州の企業となっている。

原文

IRENA (11/18)


Webinar 情報

1.COP27 Virtual Ocean Pavilion(11月18日まで)
https://cop27oceanpavilion.vfairs.com/

2.Accelerating the transition (11月18日まで)
McKinsey

3.Energy Security and the Clean Energy Transition (Nov. 18th 9:30ET)
CSIS

4.World Ocean Summit/Asia-Pacific /Opportunities in the post-pandemic maritime sector (Nov.21st 11:00HKT)
Economist

5.Energy Transition Asia Pacific 2022 (Nov.30th -Dec.1st)
Reuters