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国際海洋情報(2022年11月14日号)

1.仏政府:海運の脱炭素化のために3億ユーロを支援

フランス政府の海事担当大臣は、2030年までに国費を3億ユーロ(約440億円)投入して、海運の脱炭素化を進めるFrance-Mer 2030を11月8日発表した。この3億ユーロとは別に、「海事投資基金」を創設し、補助・出資・債務保証の形で支援を実施する。仏の海事関係企業57社の団体であるThe Armateurs de Franceは政府の施策を支持すると表明した。1980年には仏で運航される船舶の8割は、仏の造船所で建造されていたが、現在では12%にすぎず、ゼロエミ船を梃にして同国で建造される船舶の比率の向上も目指す。さらに、同国内で養成される船舶職員数も2027年までに倍増することを目標としている。政府の発表に合わせて、CMA CGMは、2億ユーロ(約290億円)を仏海洋基金に拠出することを表明し、脱炭素事業を進めるためのプラットフォームを2023年1月に立ち上げると表明した。仏の船主協会は既に15億ユーロ(約2200億円)を拠出し、海運の脱炭素化を進めるエネルギー基金を創設することを表明しているが、今回のCMA CGMの発表はこの一部。

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Radio France International (11/14)


2.米国:Energy Transition AcceleratorをCOPで提案

11月9日、米国のケリー気候変動問題大統領特使は、途上国における化石燃料依存からの脱却を促進するためのcarbon offsetの新たな仕組みであるEnergy Transition Accelerator (ETA)を提案した。米国政府はBezos Earth Fundとロックフェラー財団と連携して、2030年または2035年までETAを運用する。現時点でチリとナイジェリアが既にETAに関心を表明している。具体的には、途上国におけるCCUSを持たない石炭火力発電所の運転を停止し、再生可能エネルギーに投資することによって、良質のcarbon creditを生産する。しかし、今回提案されたような自主的なcarbon offsetの仕組みについては、環境団体等から広範な批判を受け、国連事務総長も8日、企業や政府は、脱炭素化計画の実効性を損なわないようにcarbon creditの利用は抑制的にすべきとコメントしている。

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Reuters (11/14)


3.世界の天然ガス需要の増加が1.5℃目標の達成を危険に

11月10日、Climate Action Trackerが発表した報告によれば、ロシアのウクライナ侵攻とそれに対するロシア制裁に伴って、急減したロシアからの天然ガスの輸入を補うために、新たな天然ガス田をカナダで開発し、ドイツやベトナムで新たなLNG輸入施設の建設が進んでいるが、現在計画されている天然ガスに関連する新規の事業によって、1.5℃目標達成のために残されているcarbon budgetの10%が消費される見込みで、目標達成を危うくしている。EUは輸入する天然ガスの40%を例年、ロシア産に依存してきたが、10月までに、ロシア産天然ガスのシェアは7.5%まで低下しており、EUはこの大部分を再生可能エネルギーの拡充で補おうとしているが、欧州だけでなく、アフリカ・北米・アジア・豪で天然ガス関連のインフラ整備が急増している。

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Reuters (11/14)


4.REPowerEU:再生可能エネ事業の承認手続きを簡素化

10月20日に、欧州理事会は、エネルギー危機が継続していることを踏まえ、再生可能エネルギーの整備を促進するため、事業許可手続きを簡素化することを欧州委員会に求めたが、これに応えて、欧州委員会は11月9日、現在協議中の再生可能エネルギー指令が採択され適用されるまでの1年間、暫定的緊急に適用される規則を理事会規則の形で提案した。具体的には、再生可能エネルギー施設の建設を「優先されるべき公共の利益(overriding public interest)」として位置づけ、環境法規上必要とされる影響評価の簡素化や、EUの野鳥生息域指令上の特例を認めている。さらに、太陽光発電については、低コストで迅速な整備が可能で、住民に直接利益を与えることから、建物などの屋上に整備される太陽光パネルの設置許可を1か月以内に出すこととし、環境影響調査の実施も免除している。また、既存の再エネ発電施設の増強・建て替えは、迅速に再生可能発電量を増大することができるので、環境影響評価も含めて、審査期間を最大で6か月に短縮した。

原文

欧州委員会(11/14)


Webinar 情報

1.COP27 Virtual Ocean Pavilion(11月18日まで)
https://cop27oceanpavilion.vfairs.com/

2.Accelerating the transition (11月18日まで)
McKinsey

3.Energy Security and the Clean Energy Transition (Nov. 18th 9:30ET)
CSIS

4.World Ocean Summit/Asia-Pacific /Opportunities in the post-pandemic maritime sector (Nov.21st 11:00HKT)
Economist

5.Energy Transition Asia Pacific 2022 (Nov.30th -Dec.1st)
Reuters