国際海洋情報の内容については、有料メールニュースなど営利目的での転載はご遠慮頂くとともに、二次使用の際は国際海洋情報からの転載である旨を明示していただきますよう、お願いいたします。
国際海洋情報(2022年11月11日号)
1.Fit for 55:EU加盟国ごとのCO₂排出削減目標を強化
11月8日、欧州理事会と欧州議会は、effort sharing規定に基づく各国のCO₂削減目標を、陸上輸送・EU域内の海上輸送・建物・農業・廃棄物処理・中小企業など、現在EUの排出権取引制度の対象となっていない分野のCO₂を2005年実績比で40%削減することで合意した。今回の合意では、欧州委員会が各加盟国に割り当てたincreased national targetはそのままとし、各国が目標達成のために利用することができる既存の特例措置の運用方法について見直した。これらのEU ETSが適用されていない分野からEUが排出するGHGの約60%が排出されており、国民の健康に及ぼす影響は大きく、COP27にタイミングを合わせて合意することにより、EUがパリ協定の下で、着実に排出削減を実施することを世界に示した。現時点では予期できないことが発生する場合に備えて、2026年から2030年までの各国への排出枠について、2025年に見直しを実施することも合意された。
原文
欧州理事会 (11/11)
2.小島嶼開発途上国:中国・インドにもLoss and Damageの補償を要求
これまで気候変動に脆弱な国々は、歴史的にGHGを排出してきた米・英・EUなどの先進国に、気候変動によって被ったloss and damageに対する補償を求めてきたが、小島嶼開発途上国協会(AOSIS)の代表として、11月8日、COP27に登壇したAntigua and Barbudaの首相は、世界最大のCO₂排出国である中国と第3位のインドを含むGHGを大量に排出する新興国も、気候変動に伴う自然災害で被災した途上国を再建する気候補償基金に、資金を拠出すべきであると表明した。中国はこれまでloss and damage基金の創設を支持してきたが、自国が資金を拠出するとは表明していない。EUと米国も、中国は世界最大のGHG排出国として資金を負担すべきとしている。インドは国家としては、世界3位のGHG排出国だが、人口一人あたりで見た排出量は世界平均を下回っている。AOSISは今回のCOP27で十分な額の基金が2024年までに設立されることがきちんと合意されることを要求しているが、主催国のエジプトの交渉取りまとめ役は、今回のCOPでloss and damageに関する今後の作業のroad mapを作成することまで出来ればこぎつけたいとしている。
原文
Reuters (11/11)
3.露:砕氷タンカーを利用して北極海航路で原油を中国に輸送
AISの情報によれば、露は特殊な砕氷タンカーを用いて、先月ムルマンスクから北極海北航路を経由し、ベーリング海峡を越えて、17日に中国の日照港に到着する予定で比較的少量の原油を輸送している。このルートの所要航海距離は約5300㎞で、スエズ運河経由の既存ルートに比べると所要時間を約半分にすることができる。現在、露の北極海沿岸で生産される原油は小型のシャトルタンカーで、ムルマンスクの貯蔵用タンカーに運搬され、そこから大型タンカーに積み替えて主として欧州市場に輸送されているが、EUが露からの原油の輸入を12月5日から禁止する。今回の航海に使用された砕氷能力を持つタンカーは8隻しかなく、北極海航路を利用した大規模な輸送は来年の夏まで待つ必要がある。欧州市場に輸出できなくなった原油をスエズ運河経由で東アジア市場に運ぶためには、欧州市場に輸送するのに比べて、所要時間が大幅に伸びるので、多くのタンカーが必要となる。
原文
gCaptain/Bloomberg (11/11)
4.今世紀末までにヒマラヤの氷河の2/3が融解
ヒマラヤ気候水源地図によると、ヒマラヤ山脈には南極と北極に次ぐ、世界第3位の6000k㎥の氷河があり、アフガニスタン・バングラデシュ・ブータン・中国・インド・ミヤンマー・ネパールにまたがり、インダス川や長江などアジアの10の大きな川の水源となっており、世界の総人口の1/5に水を供給している。しかし、気候変動によって、今世紀末までにヒマラヤの氷河の2/3は融解するとされており、Third Pole EnvironmentやInternational Centre for Integrated Mountain Development(ICIMOD)などをプラットフォームとして、関係国の科学者・外交官などが中心となって、政治家により積極的な対策の実施を求めている。Greenpeaceの報告書によれば、中国の青海省や新疆における有名な氷河は最近の数十年間これまでの速度の2倍で氷河が後退しており、また4月に発表された国連の報告書でも、現地の気温の上昇が、氷河の融解を促し、洪水などの深刻な被害をもたらしているとしている。
原文
Bloomberg (11/11)
Webinar 情報
1.COP27 Virtual Ocean Pavilion(11月18日まで)
https://cop27oceanpavilion.vfairs.com/
2.Accelerating the transition (11月18日まで)
McKinsey
3.Energy Security and the Clean Energy Transition (Nov. 18th 9:30ET)
CSIS
4.World Ocean Summit/Asia-Pacific /Opportunities in the post-pandemic maritime sector (Nov.21st 11:00HKT)
Economist
5.Energy Transition Asia Pacific 2022 (Nov.30th -Dec.1st)
Reuters