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国際海洋情報(2022年11月9日号)

1.国連事務総長:Climate Solidarity Pactの採択と石油企業への課税を求める

11月7日、COP27における国連事務総長のスピーチの概要は以下のとおり。①今回の会合で提案されているClimate Solidarity Pactは、全ての国連加盟国がGHG排出削減のため追加の努力をし、先進国と国際金融機関が発展途上国に金融支援し、化石燃料への依存と石炭火力発電所の新規建設を停止し、すべての人々に持続可能なエネルギーを提供し、人類のために各国が戦略と能力を統合することを求めるもの。②米国と中国の2大経済大国はこの合意の実現のため協力すべき。③ウクライナ紛争は深刻なものだが、だからと言って、緊急な対応が必要な気候変動問題から目をそらすことはできず、ウクライナ紛争によって、気候変動問題を後退させ、greenwashすることはできないし、むしろこの危機を乗り越えるために、迅速で強力な地球温暖化対策が必要。④パンデミックによって巨万の利益を上げた化石燃料企業から徴税して、その資金で食料・エネルギー価格上昇に苦しむ人々を救い、気候変動によってloss and damageを被った発展途上国を支援すべきである。

原文

国連 (11/9)


2.2021年にメタン排出量が史上最高の増加

COP26において、EUと米国は、2030年までにメタンの排出量を30%削減することを目標に、120か国以上の賛同を得て、Global Methane Pledgeを発出したが、COP27において、このうちの約40か国が具体的なメタン削減方策を発表する予定。また、米国・EU・日本は11月17日に、石油ガスの生産と輸送に伴うメタンの排出を抑制する合意を発表する予定。また、米国環境保護庁は、石油ガス事業から発生するメタンの排出規制の概要を昨年発表したが、最新の進捗状況を発表する予定。中国は上記Pledgeには参加していないが、メタン削減戦略について発表する予定。国連環境計画(UNEP)もGlobal Methane Assessment報告書を発表し、CO₂の排出削減だけではなく、今後10年間にメタンの排出量を削減できれば、世界の気温上昇抑制に大きく貢献するとしている。しかしながら、実際には、2021年には、40年前にメタン排出量の観測が始まって以来、最大のメタン排出量の増加が記録されている。

原文

Bloomberg (11/9)


3.G7/V20が気候変動リスクをカバーするためのGlobal Shieldの創設に合意

気候変動によって、大規模な洪水や干ばつといった異常気象の発生頻度が増加しているため、貧しく脆弱な国とその国民は、これらの異常気象リスクを担保する措置が必要となっている。G7諸国は議長国である独が中心となって、気候変動のリスクに特にさらされているV20諸国のこうした要請に応えて、気候変動リスクを担保するためのGlobal Shield(GS)をCOP27で11月14日に正式に発足させることに合意した。GSはV20諸国と連携しながら気候変動リスクに関する金融・保険に関する活動と、予防的な活動を一体的に統括し、気候変動による損害が発生した時に、発展途上国の緊急計画 と連動して、直ちに被災者を保護できるように工夫される。独首相はCOP27で、同国としてGSに対し、1.7億ユーロ(約250億円)を拠出することを表明し、そのうち8400万ユーロ(約123億円)は、GSの中心的な金融機能に充てられる。

原文

独経済協力開発省 (11/09)


4.発展途上国の気候変動対策に2030年まで毎年2兆ドルの資金が必要

英国とエジプト政府が共同で委嘱し、COP27で発表された最新の報告書によれば、途上国において化石燃料依存から脱却し、再生可能エネルギーとその他の低炭素技術に投資し、異常気象に適応していくためには、2030年まで毎年2兆ドルの投資が必要なことがわかった。この必要資金の半分は、世界銀行をはじめとする国際開発金融機関などの外部資金で賄われる必要がある。貧困国の低炭素経済成長に投資することにより、多くの人を貧困から救い出し、新たな仕事を創出し、GHGの排出を削減することができる。さらに、防潮堤の整備や早期警戒システムの整備など、気候変動の影響に適応するための確固としたインフラの整備にも資金が必要となり、結果として、大規模な洪水・干ばつ・台風・熱波などこれからさらに悪化することが見込まれる異常気象に適応できなかった場合に発生するloss and damageに対しても、被災者を救済し、重要なインフラを復旧し、医療保険や教育といった社会的基本機能の復旧にも資金が必要となる。

原文

The Guardian (11/9)


Webinar 情報

1.COP27 Virtual Ocean Pavilion(11月18日まで)
https://cop27oceanpavilion.vfairs.com/

2.Accelerating the transition (11月18日まで)
McKinsey

3.From Egypt to the World:Financing the Net-Zero Transition (Nov.9th 9:00GMT)
Financial Times Live

4.Energy Security and the Clean Energy Transition (Nov. 18th 9:30ET)
CSIS

5.World Ocean Summit/Asia-Pacific /Opportunities in the post-pandemic maritime sector (Nov.21st 11:00HKT)
Economist