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国際海洋情報(2022年11月8日号)

1.バイオ燃料業界が先進バイオ燃料のSAFとしての使用義務付けを求める

現在EUで最終協議中の航空機のグリーン燃料に関するReFuelEU規則においては、EU域内の空港から離陸するすべての航空機は、一定割合の持続可能な航空燃料(SAF)を含む燃料の使用を義務付けられ、SAFの含有割合は5年ごとに引き上げられることとなっている。欧州委員会は、穀物や食料油の廃油から製造された伝統的なバイオ燃料に比べて、農業・林業廃棄物を原料とする先進バイオ燃料の方が割高なことから、ReFuelEU規則の中に、先進バイオ燃料の一定割合についてSAFの一部として使用を義務付けることについて慎重な姿勢を取ってきたが、バイオ燃料業界は、欧州委員会の気候・交通・エネルギー・農業等担当の複数の委員に対して、10月26日、書簡を共同で発出し、ReFuelEU規則の中に先進バイオ燃料に関する強制力を持った導入目標を盛り込むように求めた。強制的な目標が盛り込まれれば、長期的な投資が可能となり、先進バイオ燃料の生産が拡大し、既存の航空燃料であるケロシンへの依存度を削減できるとしている。

原文

Euractiv (11/8)


2.米・加・豪・英は本来負担すべきClimate Financeのシェアを未達成

Carbon Briefが11月7日発表した報告書によれば、先進国は発展途上国に対し、年間1000億ドルのClimate Financeを実施することを2009年に約束しており、この総額を各先進国の歴史的なCO₂排出量で案分すると、米国の負担すべき金額(公正なシェア:FS)は年間約400億ドルとなるが、2020年に実際に米国が支払ったのは、FSの19%にあたる推定76億ドルに過ぎないことがわかった。英・加・豪も実際に支払った額のFSに対する割合をみると、加が37%、豪が38%、英が76%となり、FSを達成していない。独・仏・日はFSを超える支援を行ったが、そのほとんどが無償資金ではなく、有償貸付だった。国連気候変動条約に基づき法的にClimate Financeを実施する義務を負う先進工業国は、OECD諸国を中心として付属書IIに記載されているため、西欧諸国・米・加・豪・NZ・日が含まれるが、中国は含まれておらず、2020年の時点で、世界のCO₂排出量の40%を排出している。

原文

Carbon Brief (11/8)


3.IMF専務理事:2030年までにCO₂1トン当たり75ドルの炭素課税が必要

COP27出席中のIMF専務理事は、気候変動目標を達成するためには、2030年までに、CO₂排出1トン当たり、世界全体で平均して、最低75ドル(約1.1万円)のCarbon Pricingを実施しなければ、企業や消費者はCO₂排出を削減する動機づけができないと11月7日語った。IMFが11月4日に発表した報告書によれば、現在の世界各国のNDCsの実施だけでは、2050年までにCO₂の排出量はわずかに11%しか減少しないことがわかった。EUはCO₂排出1トン当たり76ユーロ(約1.1万円)と上記必要レベルのCarbon Pricingを既に貸しているが、米国のカリフォルニア州ではトン当たり30ドル(約4400円)」にすぎないし、Carbon Pricingが全く実施されていない国もあり、途上国だけでなく、先進国においても、最近の物価上昇の中で、Carbon Pricingを受け入れるのは簡単なことではなく、例えば、米国の政治情勢を見れば、炭素税や排出権取引制度の導入は困難である。IMFは電力会社が排出するGHGに対して、世界共通のcarbon priceを課すことによって、排出権取引価格を安定させるCarbon Price Floorを提案している。

原文

Reuters (11/08)


4.英首相:ロシアのウクライナ侵攻を再生可能エネ促進の契機に

11月7日、COP27における英国首相の演説の概要は以下のとおり。①ロシアのウクライナ侵攻によって、エネルギー価格が上昇しているが、これによって脱炭素化のペースを鈍化させるのではなく、エネルギー自給率の向上の観点から、再生可能エネルギーへの投資を加速すべきである。②発展途上国の経済発展を促進しつつ、世界の各国は公的・民間の資金を地球温暖化対策に投資し、新たな雇用を創出すべきである。③先進国が途上国に対してClimate Finance を供与するのは倫理的に正しいだけではなく、経済的にも合理的な選択である。④発展途上国に対して、先進国が過去に排出したGHGの責任を負わせることなく、また、先進国が(化石燃料を活用しながら)成長した同じ過程をたどることなく、再生可能エネルギーを活用したクリーンな成長を発展途上国は目指すべきである。⑤英国は、発展途上国における適応対策の支援額を2025年までに3倍の15億ポンド(約2500億円)とするとともに、ケニアとエジプトにおける再生可能エネルギー事業に6500万ポンド(約110億円)投資する。

原文

The Hill (11/8)


Webinar 情報

1.COP27 Virtual Ocean Pavilion(11月18日まで)
https://cop27oceanpavilion.vfairs.com/

2.Accelerating the transition (11月18日まで)
McKinsey

3.From Egypt to the World:Financing the Net-Zero Transition (Nov.9th 9:00GMT)
Financial Times Live

4.World Ocean Summit/Asia-Pacific /Opportunities in the post-pandemic maritime sector (Nov.21st 11:00HKT)
Economist