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国際海洋情報(2022年11月7日号)
1.WHO:気候変動問題は人間の健康にも大きな影響
COP27を前に、世界保健機関(WHO)が見解を発表したところその概要は以下のとおり。①2030年から2050年の間に、気候変動によって引き起こされる栄養不足・マラリア・下痢・高温によるストレスで、約25万人が死亡すると推定される。②こうした健康被害による直接的な損害額は2030年まで年間20億ドルから40億ドルかかるものと予測される。③WHOは加盟国に対し速やかな化石燃料の撤廃と、化石燃料不拡散条約の締結を求める。④健康問題に焦点を当てた気候変動対策を実施することにより、大気汚染が減少し、より多くの安全な食糧と水を供給し、より効率的で公正な健康・社会保護制度を実現し、人々がより健康な生活を送ることができる。⑤クリーンなエネルギーに投資することによって、2倍の価値のある健康増進効果が得られる。例えば、自動車の排気基準を引き上げれば、大気汚染を減少させるだけでなく、2050年までに地球の気温上昇を0.5℃抑制することによって、年間240万人が死亡することを予防することができる。
原文
WHO (11/7)
2.英国:上限価格を超えるロシア産原油を輸送する船舶に対する保険販売を禁止
本年9月に、G7財務大臣会合は、第3国への石油供給を確保しつつも、高騰を続ける石油価格を背景に、ロシア政府がウクライナ侵略のための戦費を調達するのを阻害するため、ロシア産石油価格の上限を定めることに合意し、さらに英国とその同盟国はロシア産石油の輸入を停止した。英国政府は、この合意の履行を支援するため、11月3日、新たに規則を発表し、12月5日から、G7と豪政府によるPrice Cap Coalitionが設定する石油上限価格を超える価格のロシア産原油を輸送するタンカーに対して、英国企業による保険・ブローカー業務等の船舶運航支援業務の提供を禁止する。保険業務のうちでも、原油を輸送するタンカーによる油濁事故に伴う第3者賠償責任を補償するP&I保険については、英国の保険会社が世界の60%のシェアを持っている。さらに2023年2月5日からは、同様の禁止措置が、石油精製品の輸送にも適用される。
原文
英国政府 (11/7)
3.DNV:The SAFE Maritime Autonomous Technology (SAFEMATE)研究事業
標記事業の概要は以下のとおり。①船橋の自動化が進む中で、SAFEMATEは船舶に設置されたカメラ・センサー・レーダー・AISから得られたイメージと情報をもとに、障害物を発見し、衝突を回避するための周辺状況認知能力の強化を図るのが目的。②試作品はKongsberg Maritimeによって開発され、比較的船舶の運航が輻輳しているノルウェーのオスロフィヨルドで、決まった二地点間を運航するフェリーを用いて、ノルウェー工科大学(NTNU)と連携して、3年間の試験運航がされている。③システムは、船舶周辺の障害物の検知・航海システム運用者に対し衝突回避のためのアドバイスの提供・船員に対し視覚的に船舶の周辺状況と推奨航路を提供することの3つの要素から構成され、完全自動化船を目指すというよりは、船舶の自律運航技術のいくつかのポイントに絞って、システムの信頼性を検証することを目的としている。
本文
DNV (11/7)
4.COP27:Loss and Damageが初めて正式議題として合意
エジプトでCOP27が始まったが、地球温暖化によって発生した損害について、先進国がどのような形で経済支援を行うかが主要議題となる。途上国はCOPが開始された1990年代初めから、気候変動による損害の補償について話し合うことを希望してきたが、先進国は途上国から多額の損害補償請求をされることを恐れて、繰り返し、正式な議題として取り上げることを拒否してきた。しかし、パキスタンにおける洪水被害など最近の異常気象に伴う自然災害を受けて、今回のCOPにおいては、「賠償責任と補償」についてではなく、「連携と問題の解決」に的を絞って議論を行うという妥協が成立し、Loss and Damageが初めて正式な議題として認められることとなった。11月6日に世界気象機関(WMO)が発表した報告書によれば、地球の気温は産業革命以前と比較して既に1.15℃上昇しており、世紀末までの気温上昇を1.5℃以内に抑制するという目標達成の軌道から逸脱している。今後各国は、loss and damageをどのように認定し、先進国がいくらこれらの損害に対して支援を行うかが交渉の焦点となる。
原文
Bloomberg (11/7)
Webinar 情報
1.COP27 Virtual Ocean Pavilion(11月18日まで)
https://cop27oceanpavilion.vfairs.com/
2.Accelerating the transition (11月18日まで)
McKinsey
3.From Egypt to the World:Financing the Net-Zero Transition (Nov.9th 9:00GMT)
Financial Times Live
4.World Ocean Summit/Asia-Pacific /Opportunities in the post-pandemic maritime sector (Nov.21st 11:00HKT)
Economist