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国際海洋情報(2022年11月6日号)
1.解説COP27:Climate Financeをめぐる論点
Climate Financeとは、GHG削減や気候変動適応対策のために使用される資金で、COPにおける交渉の場では、先進国から途上国における気候変動対策のために支援される資金を意味するが、10年以上前に先進国は、途上国における気候変動対策の支援のために、2020年までに毎年1000億ドルの支援を行うと約束したが、約束は完全に実行されなかったが、パリ協定に従えば、2025年までに加盟国は新たな支援の目標を定める必要がある。化石燃料依存を段階的に廃止し、途上国における住民を激化する自然災害から守るためには、年間何兆ドルレベルの支援が必要だが、現在の支援レベルを兆ドルレベルに引き上げるのは先進国にとって簡単ではなく、米国などは公費だけではなく民間投資を活用して支援することを検討し、バルバドスをはじめとする小島嶼国(SIDs)などは、気候変動対策に必要な資金を効率的に供給するためには、Bretton Woods協定の下での世銀・IMFといった既存の金融体制そのものを見直すべきであると主張している。詳しい解説は原文参照。
原文
Carbon Brief (11/06)
2.COP27:欧州諸国を除き主要G20諸国首脳は欠席
11月7日から8日までエジプトで開催されるCOP27首脳会合には、100か国以上の国家元首が参加し、国際的な気候変動対策について各国が連携していくことが期待されていたが、10月31日の時点で主要CO₂排出国である中国の習近平主席やインドのモディ首相は出席せず、米国のバイデン大統領も、11月8日が投票日である米国中間選挙と日程が重なり、首脳会合ではなく11日にCOP27に出席する予定。G20諸国の中では、豪・加・アルゼンチン・日・韓・墨・土・露も首脳出席を見送る見込み。一方、欧州諸国は、独・仏・伊・英の首脳が参加を表明しているほか、アフリカ諸国も33か国から首脳が出席する予定。今回のCOPでは、首脳の演説だけでなく、議長国のエジプトは、首脳が参加する6つの円卓会議を設定し、just transition(エネルギー転換に伴い、衰退する産業・失職する労働者対策)・食料安全保障・気候変動対策と開発に対するinnovative finance・グリーン水素・水資源の確保・気候変動と気候変動に対して脆弱な共同体の持続可能性について首脳レベルの協議を実施する予定。
原文
Climate Change News (11/6)
3.MSC試算:EU ETS適用に伴う追加コストは最大で500ユーロ/feuに
EU ETSの具体的な実施規則はまだ決定されていないが、世界最大のコンテナ会社であるMSCによれば、ETS適用によって、運航コストが上昇し、コスト上昇分を運賃に転嫁せざるを得ないと発表した。増加コストがいくらになるかは、無料排出枠を超えた排出分に適用されるEU Allowances (EUAs)の価格次第だが、仮にこの価格を排出CO₂1トン当たり、90ユーロ(約1.3万円)とし、航海の100%が適用対象となるとすると、高いところで、北部欧州と南部のギリシャ・トルコの間の航路では、リーファーコンテナ1feuあたり500ユーロ(約7.3万円)、安いところでは、米・加と欧州間の航路で、コンテナ1teuあたり32ユーロ(4600円)と試算された。EU ETSは海運に対し、2023年から段階的に適用されるか、同年1月から全面適用されるかは決定されていない。EU域内の輸送には100%、EU と域外国との間の輸送には50%、ETSが適用される。
原文
Seatrade Maritime News (11/6)
4.独首相:2045年脱炭素化目標堅持を表明
独の気候変動専門家理事会は、同国は2020年から2021年の間に、CO₂排出量を27%削減したが、2045年炭素中立を実現するためには、2030年までに1990年実績比で65%排出量を削減する必要があり、今後の経済成長も勘案すると、現状のままでは2030年までの中期目標の達成は難しいとの報告書を発表した。これに対し、11月6日、独首相は、ロシアによる天然ガス供給の遮断の結果、現状では石炭と石油への依存度を上げざるを得ないが、2045年までに炭素中立を実現するという目標を堅持するために脱炭素投資を進めると、COP27開催を前にして、社会民主党主催の会議で表明した。欧州では季節外れの暖かな気温が続いており、同国の天然ガス備蓄率は99.3%を維持しているため、露からの天然ガス供給停止にもかかわらず、この冬を乗り切る見通しが立っている。
原文
Bloomberg (11/6)