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国際海洋情報(2022年11月3日号)
1.IISD:Navigating Energy Transitions/ Mapping the Road to 1.5℃
International Institute for Sustainable Development(IISD)が標記報告書を発表したところその概要は以下のとおり。① 複数の気候・エネルギーのモデル分析の一致した結果として、石油ガス田の開発を新たに進めることは、地球の気温上昇を1.5度以内に抑制するという目的に反する。この目標達成のためには、2050年までに世界の石油ガス生産を少なくとも65%削減する必要がある。②各国政府は、新たな石油ガス開発に関する公的・民間の投資を、太陽光発電や風力発電への投資に向かうように誘導すべきである。目的達成のためには、2030年までに4.5億ドルの投資をする必要があるが、同期間に毎年最大5.7億ドルが新規石油ガス田の開発に投資される予定。③また、同目標を達成するためには、欧州内に新たに化石燃料を輸入するためのインフラの整備を図る余地はない。既存のガス輸入インフラで中長期的に十分対応可能。2022年・2023年にエネルギー供給危機に見舞われるかもしれないが、新たに石油ガス輸入インフラを整備しても間に合わない。
原文
IISD (11/3)
2.Wood Mackenzie:How will oil and gas companies get to Scope 3 net zero ?
標記報告書の概要は以下のとおり。①脱炭素化は石油ガス業界にとっては、必須の戦略となる一方、投資家は企業の脱炭素化の進捗状況を厳しく精査するようになっている。②企業の直接的な活動に基づく排出(Scope 1)と消費する電力の発電に伴う排出(Scope 2)に関して脱炭素化を宣言している企業の割合は約65%に達し、業界の標準となっている。③しかし、サプライチェーン全体に関する排出(Scope 3)について脱炭素宣言をしている石油ガス企業は、調査対象となった企業の中で10社に過ぎないが、Scope 3の排出量は、各社の排出量の80-95%を占めており、この分野の脱炭素化を進めるためには、大胆な構造改革が必要となるだけではなく、石油ガス生産量の大幅な減少も伴うこととなる。④石油ガスの生産は2050年までに60%から70%縮減する見込みであり、欧州の石油メジャーはこの分を埋め合わせるために、再生可能エネルギー・低炭素燃料・電気自動車の充電インフラへの投資を進めている。⑤さらに、石油ガスの延命のために炭素回収貯留(CCS)技術開発を進めるとともに、大気中から直接炭素を回収する(DAC)技術や植林等のカーボンオフセット分野への投資も進めている。
原文
Wood Mackenzie (11/3)
3.2021年のG20諸国の化石燃料に対する政府支援の額は2014年以来最大に
11月1日、Bloomberg NEFが発表したClimate Policy Factbookは、G20の加盟国における、化石燃料に対する政府支援の撤廃、carbon-pricing、気候変動リスクに関する情報開示の義務付けの3点について、それぞれの国の進捗状況を調査し、G20首脳会合とCOP27の前に、気候変動政策に関する透明性を向上させ、政策の優先順位を明らかにするために作成されたが、その概要は以下のとおり。①G20諸国のうち19か国が2021年中に石炭・石油・天然ガス・化石燃料発電所などの化石燃料事業に対して実施した政府支援の額は6930億ドル(約102兆円)となって、対前年比16%増加して、2014年以来最大の額となり、COP 26において各国政府が掲げた目標の達成を阻害し、気候変動による悪影響を回避することを難しくした。②各国政府の化石燃料に対する支援のうち、石炭の占めるシェアは2016年の4.1%から2021年の2.9%まで微減したが、昨年のG20やCOP 26で各国が石炭に対する政府支援の撤廃を約束したにもかかわらず、政府支援の総額は2021年に依然として200億ドル(約2.9兆円)に達している。③政府の化石燃料に対する支援額を国別で比較すると、2020年に最大であったのが中国で全体の26%となったが、人口一人当たりの支援額でみると、サウジアラビアが1433ドルと最大で、アルゼンチン(734ドル)、カナダ(512ドル)といった国々が上位を占めている。
原文
Bloomberg NEF (11/3)
4.GFANZ:Financial Institution Net-Zero Transition Plan を発表
The Glasgow Finance Alliance for Net-Zero (GFANZ)は、昨年のCOP26の前に結成された世界最大の金融機関の脱炭素連携組織で、合計資金運用額150兆ドル(約22200兆円)の資金を運用しているが、参加金融機関から、如何にして科学的な手法に基づいて金融機関自体のfinanced emissions(金融機関の融資先企業のCO₂発生量を金融機関の持ち分によって案分したCO₂排出量)を減少させられるかという問い合わせを多数受けていた。この要請にこたえる形で、COP27を前にして、標記計画と融資先企業が脱炭素化計画に従って行動しているか評価するためのガイダンスを作成し、11月1日発表した。さらに、GFANZはG20諸国に対し、各国が表明している排出削減目標を実現するために必要な削減進捗度と、実際に排出が削減された実績の間の乖離を埋めるために必要な財政出動、なかでも新興国と発展途上国における脱炭素化対策促進のために必要な資金の提供を求めた。また、新興国が2050年までに炭素中立を実現するためには、新興国市場における技術開発に対する投資を2030年までに、現在の7倍となる年間1兆ドル(約148兆円)まで拡大する必要があるとしている。
原文
GFANZ (11/3)