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国際海洋情報(2022年10月31日号)

1.IEA:World Energy Outlook 2022

標記報告書の概要は以下のとおり。①炭素中立目標達成のために、米国はInflation Reduction Act、EUはFit for 55/ REPowerEU、日本はGX戦略など、構造的変化を促進する戦略を立てている。②公表された政策シナリオ(SPS)によれば、以上の各国の政策により、世界のclean energyに対する投資は、2030年までに年間2兆ドル(約292兆円)となり、現在と比べて50%の増加となる。③現在の危機に対応した石炭の使用は数年内に減少に転じ、天然ガスも2030年までに成長が高位安定し、電気自動車の普及で2030年代半ばに石油需要も減少に転ずる一方で、再生可能エネルギーと原子力が拡大するため、2025年に世界のCO₂排出量はピークを迎える。④化石燃料の使用量は、18世紀の産業革命以来、世界のGDPの成長とともに拡大を続けてきたが、SPSに従えば、化石燃料が世界のエネルギー全体に占めるシェアは、現在の約80%から、2050年には約60%に減少する。⑤これに伴い世界のCO₂排出量も現在の370億トンから2050年には320億トンに減少するが、これでは今世紀末までに地球の気温が2.5℃上昇してしまい、1.5℃目標達成と大きな乖離が生じる。

原文

IEA (10/31)


2.UNEP:Emissions Gap Report 2022:The Closing Window

10月27日発表された標記報告書の概要は以下のとおり。①COP26で各国が2030年に向けたNDCsを強化することを約束したにもかかわらず、それ以降今までに追加約束されたCO₂の削減量は全体の1%以下の0.5GTにすぎない。②現在の政策を強化せずにこのまま継続した場合、産業革命以前と比べ、今世紀末には気温が2.8℃上昇し、すべてのNDCsが実施されれば2.4℃上昇し 、これに加えて、炭素中立を宣言した国が目標実現に取り組めば気温上昇を1.8℃に抑制することができる。③気温上昇を2℃以内に抑制するためには、現在の政策を単純継続する際の排出量より30%多く、1.5℃以内に抑制するためには、同45%多く排出量を削減する必要がある。④世界全体で低炭素経済に移行するためには、最低年間4-6兆ドル(約592-888兆円)の投資が必要となる。⑤金融部門は、taxonomiesの導入などによる効率化、炭素税や排出権取引などcarbon pricingの導入などによって、変革を図る必要がある。

原文

UNEP (10/31)


3.欧州委員会:2023年にCCUS戦略を作成

10月27日、欧州委員会のエネルギー担当のシムソン委員は、オスロで開催されたCCUS Forumで、炭素回収利用貯留(CCUS)に関する規制を明確にし、投資を促進するために、欧州委員会は2023年にCCUSに関するstrategic visionを提案すると発表した。欧州委員会の試算によれば、完全な電化が難しいエネルギー多消費型の産業や農業分野から2050年まで継続的にCO₂が排出されるため、EUが炭素中立を達成するためには、毎年3億から6.4億トンのCO₂を回収して、利用・貯留する必要がある。石油・ガス産業は化石燃料の延命のためにCCSの活用に積極的で、EUとして、2050年までに年間最低0.5から1ギガトンの回収したCO₂を貯留するためのスペースの確保を求めている。数週間以内に、欧州委員会は、EU のInnovation Fundから30億ユーロ(約4400億円)を支出して、CCUSに関する技術に対する補助金の公募を始める。EUの加盟国レベルでも、ベルギー・スウェーデン・クロアチアなどはCCUSに関する投資を既に各国の復興計画に盛り込んでいるし、デンマークとオランダもCCUS技術の開発に力を入れている。

原文

Euractiv (10/31)


4.WWFとOrstedが洋上風力発電施設の建設による生物多様性の減少防止で連携

2030年までに、世界の洋上風力発電施設は現在に比べて7倍に拡大すると見込まれているが、COP27を目前に控え、世界の首脳は、地球気温の上昇を1.5℃以内に抑制する目標を達成するのに必要なCO₂の削減量の最大20%を、価格競争力のある洋上風力発電によって成し遂げようとしている。しかし、このような洋上風力発電施設の大規模な建設を適切な方法で実施しないと、生態系の保全に悪影響を及ぼす恐れがあるので、WWFと再生可能エネルギー大手のOrstedは、洋上風力発電の建設によって、生態系の保全に好影響を与えることによって、気候変動対策と生物多様性の保全を両立させることを目指して、5年間連携することに10月26日合意した。Orstedは15年前から、化石燃料を基盤としたエネルギー会社から、再生可能エネルギーの比率を高めてきており、Scope 1と2については、2025年までに、Scope 3も含めて、2040年までにサプライチェーン全体の炭素中立を目指す目標を立て、Science Based Targets Initiativeから認証を受けている。

原文

Orsted (10/31)