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国際海洋情報(2022年10月28日号)
1.1.5℃目標に沿った脱炭素を進めているのは世界の大企業のわずかに半分
FTSE/DOW/DAXなどの世界の株式市場に上場している大企業の気候変動対策の実行実績を調査したThe Twelfth Corporate Climate Reporting Performance Reportが発表されたところその概要は以下のとおり。①COP26が開催された2021年に、Scope 1&2で1.5℃目標に沿った削減を実施したFTSE 100の企業の割合は72%だったが、今年はこの割合が48%に急減した。②長期的なCO₂削減目標については、FTSE 100企業の中で、Scope 1&2について長期目標を持っている企業の割合は97%に達するが、Scope 3を含んだvalue chain全体について長期目標を立てている企業の割合は4%だけだった。③炭素中立を新たに宣言した企業数については、2021年は対前年比21%増だったが、今年は対前年比11%増にとどまった。炭素中立を宣言している企業の割合は75%となっている。④IPCCによれば、1.5℃目標を達成するためには、世界のCO₂の排出量を2025年までにピークアウトさせ、2030年までに43%削減する必要があるが、このシナリオを実現するためには、大企業がさらにCO₂削減のペースを速める必要がある。
原文
edie (10/28)
2.UNFCCC:現在のNDCsのままでは今世紀末に気温は2.5℃上昇
10月26日、国連気候変動枠組み条約(UNFCCC)事務局は、各国のNDCsと長期戦略をまとめた報告書を発表したが、その概要は以下のとおり。①同条約加盟の193国の現在の自主的CO₂削減目標(NDCs)に従えば、世界のGHG排出量は2030年までに対2010年実績比で10.6%増加し、今世紀末には産業革命以前と比べて地球の気温は2.5℃上昇する見込み。②IPCCの最新の報告書では、気温の上昇を1.5℃以内に抑制するためには、2019年実績比で、GHGの排出量を2030年までに43%削減する必要がある。③COP 26では、各国がNDCsを再検討しCOP 27に再提出することに合意したが、9月23日現在、24か国だけがNDCsを見直し、国連に再提出している。④世界のGDPの83%を占める62か国は、長期的削減戦略も発表しているが、すべての戦略が適切なタイミングで完全に実施された場合、2019年実績比で2050年までにGHG排出を最大で68%削減できる可能性がある。
原文
UNFCCC (10/28)
3.WMO:2021年におけるCO₂・メタン・N₂Oの排出量が全て過去最大に
10月26日、世界気象機関が2021年のGHGの状況を分析したGreen House Gas Bulletinを発表したところその概要は以下のとおり。①40年前に観測が始まって以来、メタンの量が対前年比最大の伸びを示した。原因は明確ではないが、生態的な要因と人為的な要因がともに作用している。②CO₂の対前年比増加率は、2021年の増加率は過去10年間の平均増加率より高く、2022年もこの傾向が続く見通し。③1990年から2021年の間、長期間大気中に残存するGHGによる放射強制力(radiative forcing)と呼ばれる気候温暖化効果は約50%上昇したが、その要因の80%がCO₂の増加だった。④2021年における大気中のCO₂・メタン・N₂Oの量は、産業革命以前と比べると、それぞれ149%/262%/124%増加した。⑤化石燃料から発生するメタンの削減については、コスト効率の良い解決策があるので、直ちに対策を講ずるべきで、メタンの大気中に残存する期間は10年以内であることからも、適切な対策を取ればメタンによる地球温暖化効果を削減するのは比較的容易。⑥気候変動の主たる原因で、大気中の残存期間も長いCO₂の迅速な削減が必要である。
原文
WMO (10/28)
4.European Green Deal:欧州委員会が大気汚染・水質・下水処理基準を強化
10月26日、欧州委員会は、大気・水(地下水も含む)・都市下水処理に関する規制を強化するために、Ambient Air Quality Directives等の改正案を発表した。大気汚染により、毎年約30万人が欧州で早死(premature death)し、心臓病・肺病・ガンを患っているが、大気汚染の主たる原因であるPM2.5の基準を10年以内に、WHOのガイドラインより75%厳しい基準とすることにより、早死する人数を減少させる。欧州委員会は汚染物質の許容基準を引き上げるだけでなく、汚染減少目標が現実的に達成されるよう規制の適用についても改善を図る。今回の提案は、2050年までに有害汚染物質による汚染をゼロにするというEuropean Green Dealの中のzero pollution ambitionを実現するための基本施策となる。同改正案に従い、欧州委員会はWHOのガイドラインに準拠し、PM2.5を半分以下に削減する2030年までの中間目標を今後設定する予定。
原文
欧州委員会 (10/28)