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国際海洋情報(2022年10月27日号)

1.IEA事務局長:世界は現在本当のエネルギー危機に直面

10月25日、IEA事務局長がSingapore International Energy Weekで行った発言の概要は以下のとおり。①欧州諸国によるLNG輸入量の増加・ウクライナ危機・中国におけるエネルギー需要の増加に加え、2023年に追加される新たなLNGの生産量は200億㎥にすぎないことから、LNGの需給状況はより厳しくなる見込み。②石油については、2021年に200万bpdの需要増があったのにもかかわらず、OPEC+が200万bpdの減産を発表したのはとても危険な決定。③2023年における世界の石油需要は170万bpd増える見込みなので、ロシアによる石油の供給は引き続き必要で、米財務省によれば、ロシア産原油は、EUが設定する上限価格制度の枠外で、現在の80-90%の輸出量が確保される見込み。④エネルギー危機によって、再生可能エネルギーの増産も加速され、2022年中に新たに400GWの発電量が追加され、対前年比20%の増加となる見込み。多くの欧州諸国ではロシア産天然ガス依存から脱するために、新規再生可能エネルギー発電施設の建設に必要な許認可手続きの簡素化を図っている。

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Reuters (10/27)


2.ICS:IMO Maritime Sustainability Fund & Rewardの修正案を提出

国際海運会議所(ICS)がIMO/ISWG GHG(GHG排出に関する中間作業部会)に提出したIMO Maritime Sustainability Fund (IMSF)  & Reward修正提案の概要は以下のとおり。①IMSFの収入は、Eligible Alternative Fuels(EAS)と既存燃料の価格差を埋めるためと、途上国における代替燃料の生産と供給インフラの整備の支援に充てられる。②市場原則に基づく措置による市場の混乱を避けるため、当初5年間は、tank -to-wake ベースで船舶から排出されるCO₂の量に応じて一律の課金を課す簡素なものとするが、5年おきの見直しの一環として、制度が実施されてから3年以内に当初の制度は再検討される。③IMSF&R制度は2024年までの設立を政治的に目指す。④LNGやメタノールなどCO₂排出量が少ない燃料を使用する船舶に対する課金は、通常の重油燃料を使用する船舶より少なくなり、EASを使用する船舶に対しては、削減されたCO₂の排出量に応じて報酬が支払われ、課金はされない。EASの範囲と報酬率の決定はフェーズIIIに先送りする。⑤加盟国の行政的な負担を軽減するため、各船舶が排出するCO₂の量の測定は、既存のIMO Fuel Data Collection System (DCS)の情報を活用する。

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Offshore Energy (10/27)


3.熱波で全世界の多くの人が食料不足・労働時間の喪失など深刻な影響

The 2022 Global Report of the Lancet Countdown報告書の概要は以下のとおり。①2020年に発生した極端な熱波によって、1981年から2010年までの年間平均より、9800万人以上多くの人々が食料不足に陥った。②幼児や65歳以上の老人など、気候変動に対して脆弱なグループの人が、熱波に晒された数(人数X日数)は、1986年から2005年までの平均と比較して、2021年には37億人日、増加した。③熱波の影響で、就業できなかった労働時間の合計は、2021年の1年間で全世界を合計すると400億時間となり、この結果合計6690億ドル(約98兆円)の所得が喪失した。④1951年から1960年の期間と比べて、2012年から2021年の期間で、1か月以上干ばつの被害を受けた地域の面積が世界で29%増加した。⑤山火事が発生する大きなリスクにさらされた日数については、2001年から2004年の間の平均に比べて、2018年から2021年の間の平均日数は61%増加した。

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Lancet (10/27)


4.デンマーク海事庁長官寄稿:海運脱炭素化、行動を起こすための課題

Economist Impactへの標記寄稿の概要は以下のとおり。①海運脱炭素化をやるか否かではなくて、今やどのレベルまで、いかに早く実施するかが課題。②IMOにおいては、2023年に戦略目標が改訂される見通しだが、IMO加盟国は、迅速に行動し、海運業界全体で2050年脱炭素化に向かって取り組んでいることを世間に明確に示す必要。③海運脱炭素化に必要な新技術、特に新たな代替燃料の導入に、各国政府・国際機関・NGOs・企業・研究者たちが分野横断的に連携する必要。④海運業界は厳しい競争にさらされているので、これまで情報の開示は難しかったが、新技術への投資を促進するためにも、事業者は情報や経験を共有し、現実的な解決策があることを広く明らかにすべき。⑤これまでは、政府の規制が新たな技術導入に先行して制定されてきたが、今回の脱炭素化技術の導入については、この手順を踏まない初めてのケースとなり、海事当局は船舶の運航の安全性を確保しつつ、海運脱炭素化の進展の阻害要因となる既存の規制を発見し改正していく作業を、技術革新の先頭に立って実施していく必要があり、このためには海事当局間の連携を直ちに始めなくてはならない。

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Economist (10/27)


国内ニュース

1.商船三井:「女性のエンパワーメント原則(WEPs)」に署名
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10月24日、商船三井