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国際海洋情報(2022年10月26日号)

1.BP:Energy Outlook 2022

標記報告書の概要は以下のとおり。①過去数年間で各国政府のGHG削減目標は引き上げられたものの、パリ協定に合意した2015年以降、2020年を除き世界のCO₂排出量は増え続けており、排出可能なCarbon Budgetはもうほとんどない。②化石燃料への依存が徐々に減り、再生可能エネルギーの利用とエネルギーの電化の他にも、低炭素水素・近代的なバイオエネルギー・CCUSなど多くの選択肢が現れ、世界のエネルギー市場は根本的に変革される。③天然ガスについては、新興経済国が石炭依存から天然ガス利用に転換することにより、経済発展の過程において引き続き重要な役割を果たす。④風力と太陽光発電については、発電コストの継続的な低減と発電施設の集約によって、新たな発電設備の大部分を占めている。⑤低炭素水素は、エネルギーの電化が難しい製造業や交通分野における導入が進み、当面はブルー水素も併用されるが、長期的には再生可能なグリーン水素が主力となる。

原文

BP (10/26)


2.EU気候変動問題担当大臣:CO₂削減目標を来年引き上げることに合意

EUの気候変動問題担当大臣は、COP27を目前に控えて、10月24日、EUとしての対処方針を承認するとともに、国連に提出するEUとしてのCO₂削減目標(NDC)を来年引き上げることで合意した。大臣会合では、2035年までに化石燃料を使用する新車の販売を禁止する法案やETSの改正法案など気候変動対策に関する多くの関連法案に関する交渉を年内までに完了することを目指すことについても合意した。EUの現在のCO₂削減目標は、2030年までに1990年実績比で55%排出を削減することだが、この目標は2021年7月に合意されたが、その後、ロシアへのエネルギー依存を引き下げるために、再生可能エネルギーの拡大目標やエネルギー節約目標を引き上げることに合意しており、その結果としてCO₂削減目標のさらなる引き上げは可能であると欧州委員会の担当者は考えている。また、会合では、COP27において、発展途上国が強く主張する、途上国において気候温暖化によって発生したloss and damageについて先進国が「補償」する制度を議題とすることを受け入れることについても合意した。

原文

Reuters (10/26)


3.国連:「黒海穀物輸出合意」の遅延解消を働きかける

世界的な食糧危機を回避するために、国連とトルコが仲介にあたり、7月にウクライナ・ロシアも含めて「黒海穀物輸出合意」が合意されたが、ウクライナ政府は、ロシアが合意の完全履行を妨害しているとして、ロシア政府を非難している。穀物や食品の輸送のために、ウクライナの港湾を入出港する船舶は、トルコ国内の錨泊地で、4者から構成される「共同調整センター」の検査を受けなくてはならないが、現在イスタンブールの周辺には150隻を超す貨物船が検査待ちで滞船しており、国連の広報担当官によれば、この滞船によって、食料供給チェーンと港湾の運用に混乱を及ぼす恐れがあると指摘している。現在の合意は11月19日までの期限だが、こうした状況を解消するために、4者間で協定期間の延長や協定範囲の拡大について協議が行われている。この合意によって、ロシアの侵攻以降停止されていたウクライナの3港湾からの穀物輸出が再開され、ロシアも同国産の穀物と肥料の輸出が安全に実施できるようになっている。

原文

Reuters (10/26)


4.英:自律沿岸環境観測National Centre for Coastal Autonomyを発足

Marine Research Plymouthやプリマス大学などが出資・協力して、10月21日、National Centre for Coastal Autonomyがアン王女の臨席の下で発足した。同センターは、最新の自律運航技術を用いて、自律観測艇・半水没型沿岸観測プラットフォーム・高度な科学観測を実施できるブイなどを、高速の海洋通信ネットワークで連結して、炭素中立で先端的な海洋観測・監視を行う英国で初めての自律観測型の沿岸統合海洋環境観測センターとなる。このネットワークによって提供される高解像度の情報は、沿岸環境の理解と政策立案に寄与し、官民共同で次世代の科学者・技術者を訓練・育成するプラットフォームとなることも目的としている。

原文

プリマス大学 (10/26)