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国際海洋情報(2022年10月25日号)

1.欧州委員会:独政府にCOSCOによるハンブルグ港への投資を認めないよう要請

COSCOは2021年、独最大の港湾であるハンブルグ港にある3つのコンテナターミナルのうちの一つのターミナルの持ち分の35%を取得する意向を示したが、昨年の春に、欧州委員会は、ビジネスに関する機密情報が中国政府にわたる恐れがあるとして、独政府に対して、投資申請の許可をしないように要請していたことが判明した。独の連立政権の中では、緑の党が大臣を握る経済省は投資の許可に反対で、社会民主党が大臣を握る財務省は投資の承認に前向きとされている。中国政府は、本件を政治問題化しないように独政府に要請する一方、ハンブルグ港湾当局は、この申請が不承認になることによる経済的な打撃に懸念を示している。独首相府は、本件の今後の取り進めぶりについて、関係省庁と未だ調整中であるとコメントしている。

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Reuters (10/25)


2.COP27:EUが先進国から途上国に対する「補償」について協議することを容認へ

発展途上国はこれまで地球温暖化の原因にほとんど関与してこなかったにもかかわらず、干ばつや洪水など地球温暖化に伴う異常気象の影響については、温暖化の原因を作ってきた先進国と比較して、不均衡に被害を受けているとして、11月7日からエジプトで開催されるCOP27において、Climate Compensation Fundを創設して、地球温暖化によってもたらされた洪水・海面の上昇などにより、発展途上国において発生したloss and damageを法的に先進国が補償する制度の構築を求めている。これに対して、世界第2位と第3位のGHG排出国である米国とEUは、気候変動による被害について、法的な補償義務を負うような議論をすること自体にこれまでは反対してきた。しかし、10月24日に開催されるEUの気候変動対策担当大臣会議に提出される予定のCOP27に対するEUの対処方針案では、この問題について議論することについて反対しないことが提案されている

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Reuters (10/25)


3.OECD:Global Plastics Outlook/ Policy Scenarios to 2060

標記報告書において、現状のままで行く(business as usual)と2060年にどうなるか予測しているところその概要は以下のとおり。①経済成長と人口の増加により、世界全体でプラスチックの使用量は約3倍になる。OECD諸国においては2倍程度だが、サブサハラ諸国とアジアが最も大きな伸びとなる。②同時にプラスチックごみの量も3倍になるが、その半分は埋め立てられ、1/5以下しかリサイクルされない。③プラスチックの原料としては、新しいprimary plasticsが引き続き大部分を占める一方で、再生されたプラスチックの使用量も増えるものの、原料に占める比率は12%にとどまる。④自然環境へのプラスチックの漏出は2倍の年間4400万トンとなる中で、海洋への流出は3倍以上になって、環境や人間の健康に対する影響が悪化する。⑤プラスチックの製造過程も含めたプラスチックのライフサイクルのGHG排出量は2倍以上となる。

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OECD (10/25)


4.ABS:Global Shipping Corridors/ Leveraging Synergies

標記報告書の概要は以下のとおり。①米国務省は、Green Shipping Corridors (GSC)に関するハイレベルのガイダンスを既に提供しているが、米国政府は、いくつかの気候変動対策に関する法律を公布し、海運業界が今後10年間、脱炭素化を進めるのを支援するための規制や政策を発表している。②GSCの形成は、技術面・政策面・経済性からの包括的な専門性を必要とする。事業可能性に関する事前調査をもとに、コンソーシアムを結成し、value chainの部門ごとにトップダウンで分析を実施することによって、きちんとした量的な裏付けに基づいた意思決定が可能となる。③代替燃料については、脱炭素化の程度と技術的な面からは、LNG・アンモニア・水素・メタノールが当面先行するが、短距離の運航については、バッテリー動力や燃料電池で動く船舶も実用化される。船上CCUSは、既存燃料継続使用のための暫定的対策として有効で、原子力船も可能性はあるが、技術的には安全性が確立されたとしても、社会的に受け入れられない可能性もある。④ABSの予測では、代替燃料は2030年以降普及を始めるので、2-3年以内には、代替燃料を燃料とできる船舶の建造を始めなくてはならないが、2050年の時点でも、まだ多くの船舶が既存化石燃料で運航しているものと考えられる。⑤代替燃料で運航する船舶にとっては、当面はGSCが活動の拠点となる。

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ABS (10/25)