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国際海洋情報(2022年10月21日号)
1.欧州議会:GHG Intensity削減比率を引き上げ、e燃料の使用義務を新設
10月19日、欧州議会は本会議で、FuelEU Maritime法を承認したが、欧州委員会の提案と異なる点は以下のとおり。①舶用燃料のGHG intensity削減比率については、欧州委員会の提案が2035年までに13%、2050年までに75%の削減だったのを、欧州議会の承認しあたんでは、2025年までに2%、2035年までに20%、2050年までに80%の削減に目標を引き上げた。②グリーン水素から生産されるe燃料について、2030年までに使用比率を2%以上に引き上げることを新たに義務付けた。③EU域外国との外航航路については、使用燃料の半分について、今回の規制が適用される。④適用の対象となる船舶の大きさを引き下げる議論があったが、原案とおり5000GT以上の船舶を適用対象とした。
原文
Euractiv (10/21)
2.スクラバー排水と船底防汚塗料によりバルト海が金属・PAHによって汚染
スウェーデンの研究者がMarine Pollution Bulletinに発表した研究結果の概要は以下のとおり。①バルト海は他の海洋に比べて汚染が進んでおり、HELCOMによれば、すべてのバルト海沿岸は、EUの海事戦略枠組み指令(MSFD)に定められた「良好な環境基準」を満たしていない。②バルト海に流れ込む銅の汚染量の1/3は、海運とプレジャーボートに起因し、さらにそのうちの98%は、船底に生物が付着するのを防ぐための船底防汚塗料が原因となっており、銅を使わない或いは殺虫剤を使わない船底塗料を使用すれば問題を解決できる。③バルト海は、硫黄酸化物排出規制海域(SECA)に指定されており、同海域を運航する船舶の83%がハイブリッド型または閉鎖型のスクラバーを搭載しているが、閉鎖型のスクラバーからもPAHや金属を大量に含んだ少量の排水が海洋に排出されていることから、バルト海に流れ込む多環芳香族炭化水素(PAH)のアントラセンの8.5%はスクラバーの排水によってもたらされている。
原文
Maritime Pollution Bulletin (10/21)
3.Arctic LNG 2:西側企業が抜けた穴をUAEで埋める
露の天然ガス製造事業者のNovatekが北極海で開発を進めているArctic LNG 2事業については、同国のウクライナ侵攻に伴い、当初技術協力をする予定であった西側の企業が、制裁措置の一環で撤退したため、同社は同事業を完成するために必要な西側技術を提供してくれる提携先を探していたが、このほどUAEのGreen Energy Solutions社が技術協力することが決定した。同社は、EUの制裁を実行する義務はないので、同事業の完成に必要な機器を購入・供給することが可能となる。Arctic LNG 2事業は、3つのLNG製造ラインを建設する予定だが、西側の制裁措置のおかげで、2022年末に操業を開始する予定であった最初の生産ラインの生産開始も最低で1年以上遅れて、早くても2023年末にずれ込む見込みで、残りの2つの製造ラインの建設も危ぶまれている。
原文
High North News (10/21)
4.欧州首脳会合:天然ガスの上限価格制度の導入について継続協議
10月20日から、欧州首脳会合が始まり、初日は懸案となっていた天然ガス価格に上限を設けることについて日付変更線を跨いで議論されたが、合意に至ることができず継続協議となった。一方で、欧州委員会の提案に従って、LNGについて代替的な価格指標を導入することと、自主的に天然ガスを共同購入することについては合意されたが、この2つの事項を実施するための法整備について、今後さらなる交渉が必要となる。首脳は担当閣僚と欧州委員会事務局に対して、天然ガスの高騰を抑え、発電用の天然ガスの上限価格制を導入するための「天然ガスの売買に関するtemporary dynamic price corridor」の設定について、費用対効果分析を実施し、上限価格制の導入によって、英国などの非EU加盟国に天然ガスや電力が流れることがないかを検討したうえで、完全な提案をするように指示した。検討のための期限は示されなかったが、EUのエネルギー担当大臣は25日に会合を開催して、本件について協議する予定。
原文
Reuters (10/21)