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国際海洋情報(2022年10月20日号)
1.スイスアルプスの氷河が過去最大の6.2%減少
小氷期が終了した1850年以来、スイスアルプスの氷河の総量は減少を続けてきたが、特に減少量が多いときでも、全体の2%程度だったが、今年の夏の減少量は6.2%と突出した減少となった。昨年の冬季はアルプスにおける降雪量が少なかったうえに、春に、サハラダストが飛来して、アルプス山脈を多い、雪の表面のダストが多くの熱を吸収したため、氷河の表面の降雪が前例のない速さで融解した。続いて、欧州は熱波に襲われ、標高1600mを超えるZermattでも33℃を記録し、7月の時点で、夏の終わりの9月のような風景となり、Zermattでは史上初めて夏スキーができなくなり、永久凍土が溶け出して、継続的にがけ崩れが起こり、Mont Blancの入山が禁止された。オーストリアの氷河も2022年は過去70年以来の多くの氷河が失われた。
原文
The Conversation (10/20)
2.EU:風力・太陽光発電の記録的な増加で110億ユーロ分の天然ガスの輸入を削減
E3GとEmberの新たな報告書によれば、ウクライナ紛争が始まって以来(今年の3月から9月の期間)、風力・太陽光発電量が対前年同期比39TWh増の345TWhを発電した結果、EU内の発電量の24%がこれらの再生可能エネルギーで発電され、結果として110億ユーロ(約1.6兆円)分の天然ガスの輸入が節約できた。スペイン(対前年比35%増)、イタリア(同20%)、ポーランド(同17%)を含む 19のEU加盟国でこれまで最高の風力・太陽光発電量を記録した。しかしながら、当該期間中、EU全体として、820億ユーロ(約12兆円)分、シェアにして総発電量の20%を依然として化石燃料に依存しており、これが現在欧州で進行している記録的なインフレの主たる要因となっている。
原文
Ember (10/20)
3.DNV:Hygrogen Forecast to 2050
標記報告書の概要は以下のとおり。①水素を生産するためには、大量の貴重な再生可能エネルギーを消費し、または大規模な炭素回収貯留(CCS)を実施しなくてはいけないことから、水素の使用は、鉄鋼業などエネルギーをすべて電化できないエネルギー多消費型の産業に優先的に充て、その他の用途については、効率性・経済性の観点からも、水素ではなく、電力を直接使用すべき。②肥料産業や石油精製所で、製品製造の原料として使用されている化石燃料を原料とした水素については、直ちに再生可能水素またはCCUSを用いた水素に置き換えるべき。③水素については安全性、アンモニアについては有毒性が主たるリスクで、水素の普及を図っていくためには、社会的理解に関するリスクや資金調達リスクに配慮することも重要。④水素普及のレベルと速度は低位にあり、現在の予測を上回る規模で拡大し、炭素中立目標実現のために理想的な役割を果たすためには、先行する水素製造事業者に確信を与えるための需要面の裏付け・より高い炭素排出価格などについて、もっと強い政策的なコミットメントが必要。
原文
DNV (10/20)
4.Global Maritime Forum:欧州議会に積極的な海運脱炭素化を求める
欧州議会本会議におけるFuelEU MaritimeとEU排出権取引制度に関する最終投票を控えて、Global Maritime Forumが意見書を発表したところその概要は以下のとおり。①バイオ燃料以外の再生可能燃料(RFNBOs)を含む大規模な供給が可能なゼロエミ燃料(SZEF)と化石燃料の間の基本的な価格差を埋めることにより、SZEFの生産・供給・利用を促進することができるが、このためにFuelEU Maritimeと海運への排出権取引制度(ETS)の適用拡大が果たす役割は大きい。②FuelEU Maritimeは欧州議会の運輸観光委員会が提案しているように、sub-targetとmultiplierをさらに導入することによって、SZEFの導入を動機づけることが可能。③海運にEU ETSを適用することによって得られる収入については、再生可能エネルギーに関するETSの収入は一般税収としないという原則(zero-rating principle)と同様に、一般税収とせず、海運脱炭素化の促進のために使用されるべきである。④当該収入の使い道として、欧州委員会と加盟国は、洋上風力発電施設建設促進に用いられている差額補填契約(Contracts for Deference:CfD)の導入を検討すべきである。海運から得られる収入の約15-20%をCfDの財源とすれば、2030年までにSZEFのシェアを5%に引き上げることが可能と、Getting to Zero Coalitionが試算している。
原文
Global Maritime Forum (10/20)