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国際海洋情報(2022年10月18日号)

1.米英独が環境問題を重視するよう世界銀行に改革を要求

世界銀行は今週(10月10日の週)年次総会を開催しているが、独政府に続き、10月13日、米国の財務長官は、世銀総裁に対して、世銀が気候変動問題に対して、より重点的に取り組むよう求めたが、COP26の議長を務めた英国のSharma大臣も、世銀に対して10月14日、同様の改革を強く求めた。現在の世銀総裁は、トランプ前大統領時代の2019年に任命され、気候変動対策について後ろ向きの考えを明確に表明してきており、辞任を求める声が強まっている。発展途上国は、先進国による資金支援の過半数が、民間資金も得ることができる新興国に流れ、最貧国には、借款という形でしか供与されないため、さらに債務が増えるという仕組みに益々不満を抱いている。モルジブの環境大臣は、同国が海面上昇の影響など、地球温暖化の最前線にいるにもかかわらず、いかなる国際的な開発銀行からも支援を受けられないとしている。米英独の政府は公式には総裁の辞任を求めていないが、水面下では総裁の辞任を求める動きが続いている。

原文

The Guardian (10/18)


2.サハリン1:西欧の制裁で原油の出荷積み出しがほぼ停止

対ロシア制裁の結果、西側の保険会社は露の国営会社であるSovcomflotの石油タンカーに対して付保することを拒否したため、同社は同国の保険会社の保険で代替しようとしたが、サハリン1の開発事業者であるエクソンはこれを拒否したため、同事業からの原油の積み出しが停止している。同事業の共同事業者である露最大の国営石油業者のロスネフチは、エクソンのせいで5月半ばから原油の積み出しがほぼ止まっていると同社を非難している。サハリン1の原油生産量はウクライナ侵攻以前の一日あたり22万バレルから、現在は1万バレルに激減しているため、露大統領は10月に入って、同事業の運営会社をロスネフチの子会社に変える大統領令に署名し、外国の出資事業者に対しては1か月以内に、引き続き新しい運営会社に出資するかしないか決断することを求めている。サハリン1事業はエクソンが30%、日本のサハリン石油ガス開発が30%、ロスネフチが20%、インドの国営会社が20%ずつ出資しているが、エクソンは同事業から撤退し、持ち分を譲渡すると表明している。

原文

Reuters (10/18)


3.毎年大量の漁具が海洋に流出

豪のタスマニア大学の研究者などが、米国・モロッコ・インドネシア・ベリーズ・アイスランド・NZの世界7か国で商業漁業に従事する451人の漁師にインタビューした結果をもとに、Science Advance誌に、10月12日に発表した最新の研究成果によれば、全世界で1年間に2500万個の筌・わな、140億個のfishing hooksが海洋で失われ、海洋生物の生存を危険にさらしている。スコットランド全体を覆うことが可能な量の漁網や地球18周分の釣り糸も毎年喪失・投棄されている。これらの失われた漁具は、もともと魚類を捕獲するために設計されているので、失われたのちも、海中を漂い、海底に沈み、海岸に打ち上げられても、引き続き無意味に魚をとらえ、海鳥・ウミガメ・クジラ・サメ・イルカ・ジュゴンなどに危害を及ぼしている。失われた漁網は、海洋性プラスチックごみの増加にもつながっている。こうした状況を改善するためには、投棄される可能性が高い漁具を地域政府が買い上げ、漁港に無料で古い漁具を処分できる施設を整備することなどが考えられる。

原文

The Guardian (10/18)


4.COSCOによるハンブルグ港のコンテナターミナル投資の可否

ロシアによるウクライナ侵攻の結果、独断的・権威主義的な国家に依存することに対する国民的な懸念が広まり、独の最大貿易相手国である中国に対する依存をどのように減らすか、独国内では大きな論争になっている。独国内では独の「緑の党」が大臣を務める経済省は、ハンブルグ港における3つのコンテナターミナルのうちのひとつに対するCOSCOによる投資提案に対し、拒否権を行使する見通しだが、社会民主党が大臣を務める財務省はCOSCOの投資を支持する意向を示している。中国政府は独政府に対し、両国の経済的な関係を政治化しないこと、国家安全保障の名目で保護主義に走らないように警告している。独政府の情報機関のBNDの長官は、議会における証言で、本件に対する具体的なコメントを避けつつ、ハンブルグ港は同国にとってとても重要なインフラなので、極めて慎重に検討する必要があり、ロシアは嵐のような影響を与えるが、中国の影響は認知が難しい地球温暖化のようなものだと語った。

原文

Reuters (10/18)